【人狼】ヴリコラカス【1】
「いやっ! どうしてあたしがこんな姿に……っ!?」 少女は、人狼の一族として生を受けた。この山に住まう人狼は、幼い頃は普通の人間同然だが、成長するにつれ少しずつ狼の特質が現れていく。特に、思春期を迎える頃は心身の制御ができず、狼としての外見が隠しきれなくなることがあるという。 |
【人狼】ヴリコラカス【2】
「違う、あたしは人間だよ!」 自分の体の変化に悩む少女は、森の中を歩く途中で響き渡った銃声に驚き、不意に狼の特徴を持った姿へと変化してしまった。そして運悪く銃の持ち主である、ふもとの村の猟師と出くわしてしまう。猟師は、問答無用でヴリコラカスに銃口を向けた。 |
【人狼】ヴリコラカス【3】
「いや……痛い……死にたくない……!」 傷を負い錯乱しながらも、最後の力を振り絞り、ヴリコラカスは猟師の喉笛にかみついた。悲鳴をあげた猟師は少女を乱暴に引き剥がし、地面に叩きつける。暗い森の中で、少女は未練に泣きつつ息絶える。まだ恋もしていない。大好きな里の人々へ、お礼もお別れもできない。 |
【人狼】ヴリコラカス【4】
「……これは一体……? この味は……あたしは……」 少女の口内にじわりと猟師の血の味が広がる。その味を、不思議とおいしく感じている自分に気づく。やがて少女は起き上がり、逃げ惑う猟師の首筋に再びかみついていた。その行動は果たして、自分を殺した相手への復讐のためだったのか、それとも……。 |