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魔属性/LLR/【夢魔】エンプーサ

Last-modified: 2018-03-25 (日) 22:53:00

【夢魔】エンプーサ【１】

「……なるほど、それで私に依頼がきたということか」
男の元に舞い込んできた悪魔退治の依頼は、遠く西方の街からもたらされものだった。名だたる悪魔払い師たちを、ことごとく葬りつづけている悪魔がいるのだという。

「眠るだけの仕事だ、さほど肩肘を張る必要はあるまい」
まだ若く、経験も浅いはずの男のもとに討伐依頼が来た理由は簡単だった。相手が夢魔だからだ。眠った人間にみだらな夢を見せ、気を吸い尽くしてしまう女悪魔。ゆえに、女や老人を遣わせても夢魔が姿をあらわす可能性は低いのだ。

「夢魔よ、おまえの力は私に通じぬ!」
夢の中で出会った女悪魔の姿はこの上なく美しく、欲情をあおるものだった。だがこの男にそれは通じない。幼き日より長きに渡り、煩悩をはらうための修行を積んでいるのだ。ゆえに、生半可な誘惑は彼には通用しない。実際に、彼は数々の夢魔を葬ってきたのだ。

「夢魔よ、おまえの愛で私を溶かしてくれ」
ｴﾝﾌﾟｰｻと名乗るその夢魔は、これまで男が倒してきた夢魔とは違っていた。愛されたいという人としての本能を包み込むように、男を抱きしめたのだ。そのぬくもりは甘く、男の冷静さをも打ちのめす。ｴﾝﾌﾟｰｻは退治されることなく、今も人の夢に住み続けている。