【新春】リリス【1】
「お久しぶりでございます……美とは儚いものですわね」 かつてリリスに対し、自らの方が美しいと言って譲らなかったエルフがいた。リリスは今、あわれむような目でその女を見降ろしている。たった千年。リリスにとっては一瞬に過ぎない時間で、エルフはこうも醜く老いさらばえるのか、と。 |
【新春】リリス【2】
「私は、あの時の私のままですわ、私の美は絶対にして永遠ですもの」 透き通るような美しい肌を老エルフに見せつける。千年前には彼女も玉のような肌を持っていた。だが、今は皺とシミだらけの肌だ。今はもう、決してリリスに抗うことなど出来はしないだろう。 |
【新春】リリス【3】
「ねえ、娘たち? 私とこのかた、美しいのはどちらかしら?」 答えなどわかりきっているはずなのに、リリスはリリムたちに問いかけた。リリスは悪魔たちの母である。リリムーー淫魔たちも皆、リリスが産みだしたものだ。どれだけ子を産めども、リリスの美貌は衰える事がない。 |
【新春】リリス【4】
「千年前の勝負の負けを認めて下さるかしら? そうしたら帰っていただいても結構よ」 他人からすればどうでもいい勝負ごとに決着をつけるため、リリスは子である悪魔たちにワガママを言い続け、このエルフを探し出させて自分の前に連れてこさせたのだ。高慢なる女帝の、美とワガママは永遠に続く。 |