【真夏の嫉妬】般若【1】
「今、どこを見ていたのかしら……?」 会瀬のさなか、隣に座っていると般若がおもむろに頬をつねってきた。目の前を通った別の女の子に一瞬視線が移ったのを、般若は見逃さなかったのだ。 |
【真夏の嫉妬】般若【2】
「ふ~ん、猫を見ていたの? 最近の野良猫は桜色のミニスカートをはくのね」 前を通り過ぎた猫を見ていた、と言い訳をするが、般若の目をごまかすことはできない。本当は、少女のミニスカートが通りざま風に揺れるのを見ていた。般若はそれを知っている。恋人の行動を、一瞬たりとも見逃さない。 |
【真夏の嫉妬】般若【3】
「私に行動を見破られたくないのなら、仮面の上からサングラスでもしておくことをオススメするわ」 そんな捨てぜりふを残して、般若は立ちあがる。慌てて引き止めるも、般若は振り向かず、早足で去っていってしまう。 |
【真夏の嫉妬】般若【4】
「またやっちゃった……あとで謝らなくちゃ」 慌てて追いかけると、赤面してうずくまる般若の姿があった。おそらく、制御できない嫉妬深さに自分でも嫌気が差しているのだろう。思い悩む乙女らしい姿は、どこか微笑ましさを感じさせるものだった。 |