Top > 魔属性 > LLR > 【蛇眼娘】メデューサ

魔属性/LLR/【蛇眼娘】メデューサ

Last-modified: 2018-03-25 (日) 15:26:28

【蛇眼娘】メデューサ【１】

「あなた、きれいね」
とある森の中に不思議な屋敷があった。広い庭には、繊細に形作られた人間の彫刻が無数に並んでいる。その彫刻の美しさにひかれた少年がひとり、屋敷の庭に忍び込んだ。庭を眺めていると背後から突如として声をかけられ、少年の心臓は縮みあがる。

「私の方がきれい? そう、ありがとう」
忍び込んだ後ろめたさから、少年はとっさにお世辞を口にした。だが、礼を返す館の主の美貌は本物であった。ほんの一瞬、視線を合わせただけで甘いしびれが走り、全身が固まるような錯覚に陥ったほどだった。

「あなたの美しさも惜しいわ、これがもうすぐ消えてしまうだなんて」
今少年が持っているなだらかな体のﾗｲﾝも、陶磁器を思わせる肌も、やがてｺﾞﾂｺﾞﾂとした男のものになってしまう。少女はそれが惜しいのだと言った。それまで自分の美貌にさほど執着のなかった少年だったが、急に成長が怖くなった。

「私を見つめて。あなたの今を永遠にしてあげる」
少女の瞳を見つめた瞬間、ようやく少年はすべてを悟る。少女の言う永遠の意味、この屋敷の持ち主の正体、そして庭に並んでいる数々の彫刻が、元は何者だったのかを。少年の思考は固まり、この庭で彫刻たちとともに永遠を過ごすこととなった。