【贖罪の日】アザゼル【1】
「人の子よ、我が言葉を聞きなさい」 その夜、古い教会の跡地に神々しい光が降り注いだ。村中の人々が驚き、光のもとに集う。天から降臨したのは光に包まれた美しい少女だった。 |
【贖罪の日】アザゼル【2】
「人の子よ、あなたたちは神を信じますか」 神々しい少女に問いかけられ、殊勝にうなずく村人たち。この村の人々は信心深いことに定評がある。だが、少女は悲しげな目で首を横に振った。 |
【贖罪の日】アザゼル【3】
「なぜあなた方はこんなにも熱心に神を信じているのに、この村は貧しいままなのでしょう」 村の土は痩せていた。ろくな作物がとれず、年に何人もの子供を人買いに売らねばならない。神の教えに反して生きている人買いたちの方が、よほど良い生活をしているような状態だ。 |
【贖罪の日】アザゼル【4】
「神は、あなたがたを裏切ったのです。許せぬもの、貧しさに耐えられぬものは私についてきなさい」 少女の言葉に突き動かされるように、村人たちは立ち上がった。歩みゆく少女を追う彼らの顔は、救世主を見つけたかのような希望に満ちている。この美しい少女が悪魔だという真実に、気づいたものはいないのだ。 |