アルミラージ【1】
「聖なる地は、まだ遠いか」 男は聖地を探して旅をしていた。財産も、人生も、己が持っていたすべてを、男は信じた神へとささげた。友人からは笑われ、両親からは絶縁された。それでも、この道だけが自分の幸せに続いているのだと、男は信じていた。 |
アルミラージ【2】
「お前は魔物か? それとも、人か?」 約束の地に向かう道の半ば、男は通りかかった森で不思議なものを見かけた。額に角の生えた少女が、森の木々に実った果物を採っている。もしも少女が邪悪なものならば、他の信者に危機を知らせねばならない。男は物影から、少女の動向を見張った。 |
アルミラージ【3】
「君たちは、一体……?」 果物を採り終え、帰ろうとする少女を男は尾行した。木陰に隠れつつ追ったつもりだったが、気がつくと、少女と同じ角を持つ者たちに周りを取り囲まれていた。男は死をも覚悟し、神に祈りをささげたが、角を持つ少女たちは男を喜んで迎え、宴まで開いてくれた。男は幸せな夜を過ごした。 |
アルミラージ【4】
「ここもまた聖地、か」 宴の翌朝。男が目を覚ますと、角の生えた少女たちは辺りから一人もいなくなっていた。季節ごとに各地へ移り住む民族なのだと宴の中で少女が話してくれたが、今日が移住の日だったらしい。聖地に着かずとも幸せになれる。それに気づいた男は、故郷に帰ることを決意したのだった。 |