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魔属性/LLR/イグニス・ファトゥウス

Last-modified: 2018-03-25 (日) 15:52:07

イグニス・ファトゥウス【１】

「お兄さんは、このあたりのひと?」
その夜、仕事を終えたきこりは汗を流すべく森の奥にある泉へと向かっていた。薄暗い小道を歩いていると、その途中で見慣れぬ少女と出会った。少女は笑顔を浮かべ、きこりに話しかけてくる。

「水浴びにいくところなんだけど、道がわからないんだ」
少女は、泉まで案内してほしいときこりに頼んできた。普段はよそ者を警戒するきこりだが、ﾗﾝﾀﾝに照らされた少女の無邪気そうな笑顔に誘われ、同行することを許した。もしかしたら一緒に水浴びできるかもしれない、という雑念もあったかもしれない。

「なんだか、喉がかわいちゃった!」
少女は気まぐれだった。きこりがまっすぐ泉へ向かおうとしても、足が疲れたと言っては切り株に座り、喉がかわいたと言っては果物の樹を探し始める。森を知り尽くしているはずのきこりも、こうして翻弄され続けた結果、気が付くと見覚えのない景色の中にいた。

「きゃはは、ｴｯﾁなこと考えてるからだよ! お兄さん!」
きこりは足を滑らせ、泥だらけの沼へと落ちてしまった。水浴びするはずが一転、泥まみれだ。少女は望みどおりの結果を得られたと言わんばかりに満足げに笑うと、青白い炎に身を変え、闇の中へと飛び去っていった。