魔属性/LLR/ガルム

Last-modified: 2018-03-25 (日) 12:51:00

ガルム【１】

「主の命により、この岩山を守りて幾年月……」
人間には認識しえないほど長い時間を、ｶﾞﾙﾑは、この切り立った岩山で過ごしていた。永久に変わらないかに見える山の形も、ｶﾞﾙﾑが来た頃を思い出せば、ずいぶん変わっている。

「この洞窟に挑戦しようとする者も、数少なくなってきたな」
ｶﾞﾙﾑの守る岩山には洞窟があった。人間たちはこの奥に財宝があると噂し、それを求めて岩山を登ってきた。だが、洞窟に入り込めた者は今までひとりもいない。ｶﾞﾙﾑがすべて追い返してしまったからだ。

「ここには宝などないのだ。彼らはそうは思えぬだろうが、本当に、彼らが入らなくてよかった」
ｶﾞﾙﾑは洞窟の奥にあるものの正体を知っている。人々を乱暴に追い返しもしたが、入ってしまった後の人々のことを考えれば、心を鬼にしてでもそうせざるを得ないのだ。

「ついにお役御免……いや、真の役目はこれからだな」
ある日突然、ｶﾞﾙﾑは岩山の守護任務を解かれた。晴れて自由の身だ。だが、ｶﾞﾙﾑは岩山を離れず、自分が守り通してきた洞窟の奥へと向かう。任が解かれる日、それは神と魔の最後の戦いが始まる日。敵が待ち受ける最奥を目指し、ｶﾞﾙﾑは洞窟を駆け抜けた。