魔属性/LLR/ゲブラー

Last-modified: 2018-03-12 (月) 20:06:10

ゲブラー【１】

「……うむ」
職人の朝は早い。魔界の武器職人ｹﾞﾌﾞﾗｰの工房では、もう鎚の音が響き始めていた。工房内に所狭しと置かれている武器の数々は全て彼女が作り上げた逸品である。だがそれらは売り物ではない。自らが認めた者にしか、この頑固な職人は武器を譲らないのだ。

「……うむ。良い出来だ、試し切りをせねば」
ｹﾞﾌﾞﾗｰが作り上げる武器はどれも素晴らしい。けれど世間には滅多に出回らず、いっそうその価値を跳ね上げる。であるからこそ、彼女の武器を狙う者は後を絶えない。現れた盗賊団を前に、表情一つ変えぬｹﾞﾌﾞﾗｰはできたての武器を手に取るのであった。

「……うむ。お前になら、この武器をくれてやってもいい。好きに使え」
最後まで立っていたのは盗賊団の若頭。やるじゃないか、ｹﾞﾌﾞﾗｰはふと攻撃を止めると、手にしていた武器をそのまま彼に投げ寄越した。腕が立つ者ならば、悪人善人の区別なく武器を授ける。それがｹﾞﾌﾞﾗｰの悪魔らしいこだわりであった。

「……うむ。私の武器がもっと欲しいのなら、それに見合うだけ強くなれ」
そう言い残し、ｹﾞﾌﾞﾗｰは作業に戻ってしまった。強い武器は、それにつり合う強さを持った者こそ持つべきだ。武器より弱い者など必要ない。ｹﾞﾌﾞﾗｰは武器を作り続ける。強き者を、武器と共に待ちながら。