ゲンブ【1】
「世の栄枯盛衰は常、取り立て騒ぐこともなし」 おおらかにつぶやく黒髪のたおやかな美女。彼女は四獣と呼ばれる神の一人、ゲンブである。外見からは妙齢の女性にしか見えないが、その実態は数千年の時を生きる神である。 |
ゲンブ【2】
「今日は大洪水ね、でも三百年前の方がひどかったかしら」 あまりにも長く生きていたため、ゲンブは何事にも動じなくなっている。人が生涯に一度味わうかどうかという事件でも、ゲンブにとっては何度も繰り返されてきたことなのだ。 |
ゲンブ【3】
「革命か、もうこれで何度目かしら」 この地にはいくつもの国ができ、そして滅んでいった。そのほとんどすべてを、ゲンブは見てきている。今ほとばしっている新鮮なエネルギーも、やがてはよどみ、腐敗し、あとから生まれ出る新たなエネルギーに押し流されるのだ。 |
ゲンブ【4】
「歴史はらせん階段、少しずつ天へと進んでいく」 人は同じ過ちを繰り返しているように見える。だが、本当は少しずつ上に進んでいるのだ。それを理解しているからこそ、ゲンブは人の世を飽きもせず、安心して見守り続けている。 |