ジズ【1】
「天をも覆う我が翼、とくと見よ」 ジズがそう言って翼を羽ばたかせると、周囲の景色は彼方へと吹き飛んだ。彼女に空を飛ばれては、星そのものを飛ばされかねない。神々はジズを囲み、その翼を褒め称え、ジズが空を飛ぶ機会を失くそうと必死になっている。 |
ジズ【2】
「我が翼は世界で最も美しいのだ、そちらの御仁も見えようか」 遠く離れた孤島に向けてジズは羽を大きく広げた。厄介なことに彼女は目も耳も良く、声も凄まじく大きいのだ。その声の衝撃で孤島に住む御仁は吹き飛ばされて海へ落ちてしまうが、翼の美しさにそこまで驚いたのかと勘違いするジズであった。 |
ジズ【3】
「さぁ今こそ、我が飛翔で世界を覆い尽くそう」 神々の賛美に聞き飽きたのか、ジズは突然大きく羽ばたき始めた。美しい羽根が散ってしまうわ、羽根の艶が荒れてしまうわ、と神々が口を揃えて言うが、もはやジズを止めることはできない。今、世界は震えている…… |
ジズ【4】
「星よ、讃えよ!自負せよ!そなたが生みし我はいずれそなたを越えようぞ!」 ジズは母なる大地へ自分の成長の様を見せつけた。ジズが羽ばたくたびに海は荒れ、大地は嘆き蠢いたが……、しかし空は緩やかに。太陽は微動だにせずジズの背中を照らし続けた。まだまだ自分は小さいと思うジズであった。 |