デモゴルゴン【1】
「うるさい、殴んぞ」 その名を禁忌として恐れられる悪魔がいる。それがデモゴルゴンだ。彼女は高度な魔法や特別な能力などを一切使わない。けれどなぜ、彼女は恐れられているのか。それは途方もなく『力が強い』から。彼女の拳を受けた者は、人間だろうが要塞だろうが、木っ端微塵に弾け飛ぶ。 |
デモゴルゴン【2】
「あー、はいはい、殴んぞ」 デモゴルゴンは他者から恐れられるということが少々気に食わない。自分を見て、怯えて恐れてガタガタ震える存在は非常に鬱陶しいし、面倒臭いし、死ぬほどどうでもいい。大体そういう反応しかされないので他者というものはつまらないものだ。デモゴルゴンはそう思っている。 |
デモゴルゴン【3】
「おー。いいじゃん、じゃあお前、今から思いっきり殴んぞ」 他者とは大体ビビって震えてクソつまんねぇもの。そう思っているからこそ、デモゴルゴンは己に恐れない者にとても興味を持つ。彼女の目の前には、悪名高き悪魔を討たんとする騎士兵団。勇猛な瞳に、悪魔は口角を吊り上げ、拳を振り上げた。 |
デモゴルゴン
「なんだ、呆気ねぇ。お前ゼリーかなんかかよ、殴んぞ」 呆気なかった。やっぱりそうか。デモゴルゴンは露骨に溜息を吐く。やはり他者というものはどれもこれも同じだ。赤く汚れた拳。殴ってしまえば、全部同じ。赤いペーストに変わるだけ。はぁ、やはり、他者というものはつまらない。禁忌の悪魔は肩を竦めた。 |