Top > 魔属性 > LLR > デルピュネー

魔属性/LLR/デルピュネー

Last-modified: 2018-03-25 (日) 12:25:08

デルピュネー【１】

「これより唄い語るは、魔物の王に連なる悲しき娘の物語」
ある街角で、女詩人はﾊｰﾌﾟを奏でながら唄いはじめた。観客は少年ひとり、だが女詩人は迷うことなく唄を続ける。

「魔物の王は小包を預けた、竜の翼を持つ娘に預けた」
女詩人の唄は、竜翼を持つ娘･ﾃﾞﾙﾋﾟｭﾈｰが主人公だった。ﾃﾞﾙﾋﾟｭﾈｰは預かりものが、平和を守るための宝だと教えられ、かいがいしくその番をしていた。だが、彼女の前に若き神々が現れる。

「神々は、邪なたくらみにより、疑いを知らぬ娘を巧みにだました」
ﾃﾞﾙﾋﾟｭﾈｰが預かっていたのは、長い戦争の末、和平の証として魔物たちに渡した神々の王の『腱』だった。娘をだまし、和平の証を盗んだ神々は協定を破り、再び戦争をしかけた。神々は卑劣な手で世界を支配したのだと女詩人は唄った。

「今、唄いしは隠された真実の物語。勝者の言葉のみを信じることなかれ」
女詩人は唄を終えた。少年は不思議な思いに包まれた。女詩人の唄は聞き慣れた神話、つまり正しき神々が邪悪で醜い竜女を倒す物語とはまるで違っていた。少年は言った。去ってゆく女詩人の背中には、竜の翼が生えているように見えた、と。