幻想のミネルバナイツ Wiki*

バーバ・ヤガー【１】

「坊や、知らないわけじゃないでしょう。この山には子供を食らう、魔女がいるのよ。」
山の中で出会った女性に叱られ、少年はうなずいた。この山にはﾊﾞｰﾊﾞ･ﾔｶﾞｰという恐ろしい魔女がいて、山に迷い込んだものを殺し、料理や、薬の材料にしてしまう。地元の子供なら、誰でも言い聞かされる話だ。

「とっととお帰えりなさい、ﾊﾞｰﾊﾞ･ﾔｶﾞｰに見つかる前に早く行くのよ。」
女性は虫を追い払うような動作を少年に向けたが、少年は帰ろうとしなかった。ﾊﾞｰﾊﾞ･ﾔｶﾞｰは魔女だ。人間を殺して作った秘薬で、どんな病気もたちどころに治し、何百年も生き続けていると、長老に聞かされていたからだ。

「ﾊﾞｰﾊﾞ･ﾔｶﾞｰの小屋から秘薬を盗み出そうっていうの!? なんて悪い子でしょう! まったく、親の顔を見たいわ!」
少年には、病気の母がいた。日に日にやせ細り、医者に見せてももう長くはないだろうと言われている。少年はどうしても母を救いたかった。例え、魔女に食われてしまう危険を冒しても。

「これ持ってお帰えりなさい! もう、ここへ来ちゃだめよ~。」
女性は、不思議な色の薬ﾋﾞﾝを少年に渡してくれた。あの女性がﾊﾞｰﾊﾞ･ﾔｶﾞｰだったのだろうか? とても魔女とは思えない、美しい顔をしていたが……。元気になった母親の背中を眺めながら、少年は思い返すのだった。