マレフィクス【1】
「見よ、時とともに増大してゆく負の力を」 女は冷たく、動かしがたい、永久氷壁を思わせる表情でつぶやいた。彼女の名はマレフィスク、この世の成り立ちとともに存在せしものである。 |
マレフィクス【2】
「負の力はやがて正の堤防を崩し、世界にあふれだす」 マレフィスクは星を見た。闇の中に浮かぶあの球形の大地は、誕生した瞬間から、破壊へと向かっている。刻一刻と負のエネルギーを身にたくわえ、それが限界に達した時、砕け散るのだ。 |
マレフィクス【3】
「あふれ出た負の力はほとばしり、あらゆるものを無に帰してゆく」 生物も星と同じだ。生まれた瞬間から老い始め、刻一刻と死へ向かって歩んでいる。子供が成長するのも、もはや取り戻せない生命エネルギーと引き換えにしてのことなのだ。 |
マレフィクス【4】
「いつかすべてが無へと帰るのだ、この私と同じように」 そうつぶやくと、マレフィクスは自らの居場所へと再び姿を消した。彼女の居所は世界の闇の中心たる場所。生物、無生物ーーあらゆるものが生まれ出ずる場所、そして同時に、いつか帰ってゆくべき場所だった。 |