ミノタウロス【1】
「この迷宮から出る方法かい? そんなの簡単さ」 盗賊は地下迷宮の中で巡り合った女に尋ねた。迷宮に盗掘に来たあげく、迷って出られなくなったのだ。だが、女は方法を知っているという。まだ自分には運があるようだ。盗賊は、ほくそ笑みつつ、盗み出した宝の使い道に思いをはせていた。 |
ミノタウロス【2】
「こうするのさ!」 女の頭に二本の角が生えている事に、盗賊は気が付かなかったかもしれない。それほど、この迷宮は暗く、深いのだ。己の頭が巨大な斧に割られた事にも、盗賊は最期まで気付かなかっただろう。それほどまでに速く重い一撃だった。 |
ミノタウロス【3】
「おひとりさま、地獄にごあんない~ってね」 女の名はミノタウロス、この地下迷宮の番人だ。時折、迷宮に迷い込んでくる愚か者たちを出口に連れていくのが彼女の役割だった。ただし、彼女が連れていく出口は地上の世界につながってはいない。行き先は必ず、天国か地獄のどちらかだ。 |
ミノタウロス【4】
「今度のお客は聖職者サマかい、なら天国にご案内だね」 ミノタウロスは善人、悪人の区別をしない。迷宮に来た理由は尋ねるが、どんな答えをしようが結論は変わらない。入り込んだものを巨大な斧でたたき殺す、その役目を遂行するだけなのだ。彼女の斧を避けたければ迷宮に近づかぬことだ。他に選択肢は、ない。 |