ルー・ガルー【1】
「神よ、なぜ私にこのような罰を……」 ルー・ガルーは、かつて己が信じた神の像に憎悪の目を向けた。あの日から、満月が近づくたびに肉体に異変が起こる。敬けんな聖職者だった自分に、なぜこのようなことが起きるのか、理解し難かった。 |
ルー・ガルー【2】
「また満月が来る、私が私でなくなる」 ルー・ガルーに起こる異変、それは己の身がおぞましい獣と化すことだった。月が大きくなるたび、自分の中から自分が消えていく、それが恐ろしくてたまらない。月が満ちる時、さらに恐ろしいことが起こるのだ。 |
ルー・ガルー【3】
「……私は、また……」 狼になっている間の記憶は、ルー・ガルーにはない。気がついた時には、自分の服に銃で撃たれたような穴が開き、周囲には引き裂かれた人間の肉塊が散乱していた。何が起きたのかは容易に推測できた。しかし、それはあまりに受け入れがたい結論だった。 |
ルー・ガルー【4】
「いつの日か復讐しよう……神聖で全能な神よ……」 己ではない己に命を奪われた人々を手厚く埋葬し、祈りを終え、ルー・ガルーは考える。はたして、自分は誰に祈っているのかーー。かつて信じた神は、もはや憎悪の対象でしかないのだ。 |