魔属性/LLR/レギオン

Last-modified: 2018-03-28 (水) 23:05:27

レギオン【１】

「ここよ、ここが我らの故郷」
眼前に広がる緑の大地を眺め、ﾚｷﾞｵﾝは恍惚と呟いた。彼女の頬には確かに涙が伝っていた。……だが次の瞬間、その目に不満と疑問の色が浮かぶ。「ここが……?」「いいや、我らの故郷ではない」うつろう人格が垣間見えた。彼女の体には数万とも数十万ともいわれる魂が宿っているのだ。

「……海だ。我らが向かうべきは、海」
ﾚｷﾞｵﾝの持つ魂たちは、その共同体内で長い協議を行い、やがて海へと向かう事を決した。彼らが求めるのは、全ての魂が安らげる絶対的な安息の地である。

「海。全てものにとって母なる場所。今は抗う者たちも、いずれ納得するだろう」
いまだ採決に異を唱える魂をなだめ海へ向かう。だがその足取りは重い。反対する魂が抵抗をしているからだ。数十万の魂が、一つの肉体を共有しなければならないという現実の重さを表しているかのようだった。

「……そうね。しばらくなら、こうして眺めてみると良いかもしれないわ」
反対派の中で最も声の大きかった魂も、静かな波音に耳をすませ、穏やかにそう呟いた。ここが安息の地となるかはわからないが、とりあえずはここに留まろう。海辺の朝焼けには、そう思わせるだけの美しさがあった。