玉藻前【1】
「美しい花を眺めていれば、酒もすすむというものよ」 舞い散る桜の花びらが玉藻前の持つ盃に落ちる。風流なその様子を見て、玉藻前は微笑んだ。この花見をするまでにした苦労など忘れてしまったかのように。 |
玉藻前【2】
「美しいものは求められるもの。それがどんなものであってもね」 桜の名所で知られるこの庭園は、その美しさ故に権力者たちの奪い合いの対象となってきた。そして、今はこの庭園の主は玉藻前だ。 |
玉藻前【3】
「この桜を見ているだけで、不思議と心が穏やかになるわ」 手練手管や権謀術数を使い、玉藻前はようやく桜に庭を手に入れた。その動機は、彼女の中に芽生えた純粋な花への愛情だった。 |
玉藻前【4】
「この桜が散るころには、もうここを発たなければね」 人の心を惑わすほど美しい桜の庭を、狙う者は多い。この地を巡って再び騙し合い、あるいは血みどろの戦いが始まるのは明らかだ。そんな面倒事が始まるまでは、穏やかな花見を続けようと決めている玉藻前だった。 |