鵺[祭]【1】
「いよいよお祭りですねぇ、わくわくですぅ」 人間たちがお祭りの準備をしている様子を、物かげからこっそり見ている少女がいた。彼女の名は鵺、魔物の一族のこどもである。 |
鵺[祭]【2】
「すごいのです、夜なのに人がたくさんいるのですぅ」 鵺は興奮した。普段は昼間しか人通りがない道を、月明かりに照らされながら、人々がたくさん歩いていることに。鵺には、提灯の明かりさえも、おとぎの国の星々がきらめいているかのように見えた。 |
鵺[祭]【3】
「みんな、がんばっているのです! 重そうなのですぅ!」 若い衆たちの威勢の良い掛け声が近づいてくる。この村自慢のみこしが通るのだ。月夜にきらめくみこしと、それを担ぐ人間たちの姿に鵺は目を奪われた。 |
鵺[祭]【4】
「どれも、おいしそうなのですぅ!」 屋台には、普段は食べないような不思議な食べ物が並んでいる。わたあめに、焼きとうもろこし、あげ餅……。鵺はそれらを次々と味見していく。金魚すくいの金魚まで食べようとしたときには屋台の男に慌てて止められもしたが、鵺には楽しいお祭りの一夜なのだった。 |