【厳冬】ビャッコ【1】
「温泉宿たあ、お前らも気の利いたものを用意したねえ」 ビャッコは機嫌よさげに服を脱ぎ捨てると、大飛沫をあげて温泉へと飛び込んだ。地元の入浴客が、その飛沫をありがたがって受ける。彼女は、この地の人々には神と崇められる存在だった。 |
【厳冬】ビャッコ【2】
「温泉宿たあ、お前らも気の利いたものを用意したねえ」 ビャッコは機嫌よさげに服を脱ぎ捨てると、大飛沫をあげて温泉へと飛び込んだ。地元の入浴客が、その飛沫をありがたがって受ける。彼女は、この地の人々には神と崇められる存在だった。 |
【厳冬】ビャッコ【3】
「お前も随分と大人になったねえ、へへっ、特にこの辺りとか、な」 ビャッコは地元の子供に気さくに話しかけ、大声で笑う。神々しさなど感じさせない態度に、話しかけられた子供は引きつった笑いを浮かべる。ビャッコの強さと気紛れさは、現地では先祖代々の伝承にもあるほど有名な話だという。 |
【厳冬】ビャッコ【4】
「お、雪だ。温泉に雪とはオツだねえ」 風情を理解しているような事を言いながら、雪の降り始めた温泉で泳ぎだしてしまうビャッコ。地元の子供が温泉で泳いだりすれば即つまみ出されるのだが、誰もビャッコに文句は言わない。機嫌を損ねれば、どうなるかはわかりきっていた。 |
【厳冬】ビャッコ
「いい湯だったぜ、また来るからな」 温泉から出ていくビャッコの背中を見ながら、入浴客たちは安堵のため息を吐く。機嫌が良い時は剛力で人々を守ってくれるが、機嫌を損ねると気紛れに人を食い殺す。そういう神だとわかっているからこそ、人々はビャッコを崇め奉り続けるのだろうか。 |