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【月光】アスモデウス【１】

「あは……あたしは魔界の健全枠よぉ? ﾎﾝﾄにﾎﾝﾄよぉ」
七つの大罪が一、色欲のｱｽﾓﾃﾞｳｽ。彼女はその名に恥じぬ放蕩人であるが、なぜか自らを「健全」だと言って憚らない。いやそれは違うだろうと誰かが言っても、ｱｽﾓﾃﾞｳｽは劣情をそそる笑みを浮かべて繰り返すのだ。

「自分に正直なのって、いかにも健全って感じじゃなぁい? だからあたしは健全なのよぉ、わかるかしらぁ?」
色欲を体現したかのような悪魔は尚ものたまう。色香を遺憾なく放ちながら、唇の端を釣り上げて、平然と。その含み笑いはからかっているだけか、それとも……。

「愛し合うことって健全よぉ。あなたが今ここにいるのだって、男と女が愛し合ったから……そうでしょぉ?」
生き物は欲望なくして生きられぬ。ｱｽﾓﾃﾞｳｽは艶っぽい声でそう語る。そして色欲は、命を繋ぐ上で非常に大切で、そして尊い行為だ。決していやらしいものなどではない、受け入れるべきものなのだと。

「どういうことが健全なのかって? ……ふふ、ﾅﾆかしらねぇ。教えてあげましょうか」
色欲は罪ではない。七つの大罪の悪魔はそう言ってのけた。健全な行為だ。己こそが健全だｰｰ寄せられる顔、甘い吐息。色欲<あたし>を嫌がらないでｰｰ言葉とともに回される腕。その魅惑に、およそ耐えられる者はいない。