【2015聖夜】ディアボロス【1】
「クリスマスとかいう祭りか、我も新しいものには興味がある」 地上を偵察に来た悪魔は、突如として現れた女の言葉に小さく首を傾げた。クリスマスなど、遥か昔から人間たちによって行われている伝統的な祭りのはずである。新しいなどとは面妖な表現だった。 |
【2015聖夜】ディアボロス【2】
「酔狂と言われるかもしれぬが、今宵はこのような格好をしてみた。どうだ?」 振り向いたそこには、赤と白をふんだんに使った衣装を着た女がいた。悪魔である彼の禍々しい姿を見ても怯える気配はない。鷹揚な微笑みが美しい顔の上に浮かんでいた。 |
【2015聖夜】ディアボロス【3】
「どうした? 我の顔に見覚えでもあるのか?」 ……どうにも思い出せなかった。初めて見るはずなのに、そうではない気がする。彼が産まれた時から、頭のどこかで存在を感じ続けていた存在。目の前の女が「それ」ではないかと思い当たった瞬間、冷や汗が流れ出た。 |
【2015聖夜】ディアボロス【4】
「そう怯えるな、我とお前は深き縁で結ばれてはいない」 悪魔は体を強ばらせつつも頷いた。古より続く悪魔の階級社会、それが出来る前からいたと言われる存在。悪魔の王でさえ、触れる事のない古の存在。彼にとってこの聖夜は、ただ畏怖の念だけを与えられる、悪夢のような夜だった。 |