サクリフィキウム【1】
「だめねぇ、こんなんじゃあ全然足りないわぁ」 領主が六十人いた奴隷の全てを捧げた後、サクリフィキウムから帰ってきた返事がこれだった。多くの生贄を捧げれば、その量に従った魔力をやる、そう取引をしたのだ。 領主の家に、もう奴隷はいなかった。 |
サクリフィキウム【2】
「殺される時の恨み、それが生贄の力なのよぉ」 領主は奴隷たちに御馳走を与え、そこに入れた睡眠薬で眠らせてから騒がれないように殺した。それがサクリフィキウムには、気に入らなかったらしい。 反逆者である領主の討伐に、国王の軍は刻々と迫ってくる。領主の顔は青ざめた。 |
サクリフィキウム【3】
「諦めちゃぁダメよぉ、貴方には家族がいるじゃなぁい」 領主は家族を守りたい一心だった。 焦る領主を心配してか、ドアの影から、妻と娘が様子を覗きにきている。それに気づいたサクリフィキウムは妖しい笑みを浮かべ、そう言ったのだ。 |
サクリフィキウム【4】
「奥さんと娘さん、どっちを先に殺せばより恨んでもらえるのかしらねぇ?」 彼女の要求に、領主は戦慄した。どちらかを生贄に差し出さねば、領地と己の命は守れない……。 悩みに耐えきれず、己の命を絶った領主の骸を、サクリフィキウムはただ不満げに見つめるのだった。 |