ナーガ【1】
「ターゲットを捕捉……」 闇の中、ナーガは城の前に立っていた。この辺り一帯の魔物たちを支配する魔王の城。警備は固く、無数のトラップが仕掛けられているであろうことも明白だ。侵入は不可能に思える。だがナーガには、なんの不安もなかった。 |
ナーガ【2】
「契約は結ばれた。あとは遂行のみだ」 ナーガは暗殺者である。依頼料は依頼者本人の魂。どんな財産もかすむ、いわば依頼人の全てを報酬として得ている。それも前払いだ。復讐の色をまとった魂はひときわ美しい。憎悪と苦しみに染まった、ほの暗い赤色の魂をながめ、ナーガは微笑んだ。 |
ナーガ【3】
「不死身? だが、私はお前の殺し方を知っているよ」 たとえ不死身の魔王でも、その不死身のカラクリを暴いてしまえばよいのだ。ナーガの武器はナイフ一つ。このナイフには、ある薬が塗ってある。魔王の「不死身」を相殺する強力な薬を調合しておいたのだ。 |
ナーガ【4】
「これがお前の命か……悪しきものの魂もまた美しい」 魔王をまたたく間に殺したナーガは、その骸から魂を取り出し、ゆっくりとながめる。これがナーガにとってのもうひとつの報酬。美しくかがやく魂を集めるため、今宵もナーガは闇に身を潜める。 |