【万霊節】ブザス【1】
「ねぇあなた、どこにも誰もいない場所を知ってる?」 ふらりと現れた悪魔ブザスはそんなことを問うてきた。彼女の手にはラッパが一つ。どうしてそんなことを聞くのか。そう聞き返した者の言葉に、ブザスは溜息を吐く。僕はラッパがヘタクソだから、練習場所を探しているんだ、と。 |
【万霊節】ブザス【2】
「僕、なんでこんなにヘタクソなんだろう?」 ならばここで吹いてごらんよ。そう続けた者に対し、ブザスは恥ずかしそうに俯いた。僕のラッパ、ホントにヘタクソだからーーそう謙遜するブザスに、それでもいいと食い下がった男はーー彼女が笑顔を浮かべてラッパを一吹きした次の瞬間。耳から血を噴き地に伏した。 |
【万霊節】ブザス【3】
「うう……もっとラッパが上手くなりたいなぁ。練習しなきゃ……」 実は、ブザスの持つラッパは、音色を耳にした者の精神を破壊するという恐るべき魔楽器だったのだ。けれど彼女はそのことを知らない。ただ、自分が致命的にラッパがヘタクソなのだと信じている。惨死した聴衆を前に、ブザスは肩を落とした。 |
【万霊節】ブザス【4】
「僕……いつかは、魔界一番のラッパ吹きになるんだ」 今日もブザスはラッパの練習場所を探してあちらこちらを彷徨い歩く。そして吹いては、聞いた者の心身を破壊し、自分のラッパがヘタな所為だとしょぼくれて、練習あるのみと歩き出す。いつか彼女がラッパの真実に気付く日は来るのか。 |