烏天狗【1】
「あやかしにとってこの闇は住みよい寝床。人間の恐怖は甘く美味しい馳走じゃ」 不吉を象徴するカラスの羽を羽ばたかせ、烏天狗が舞い降りる。彼女に見つかってしまったら、もう魔の山から逃げることはできないだろう。 |
烏天狗【2】
「のぅ、人間よ。わしと勝負をせんか?」 暗く深い魔の山で、烏天狗は微笑みながら言う。断れば、この闇の中から二度と出られなくなることは明白だ。しかし、烏天狗の提案を受け入れたとしても、結果はそう変わらないだろう。 |
烏天狗【3】
「難しくはない。ただの児戯じゃよ」 烏天狗が提案してきたのは鬼ごっこだった。鬼の烏天狗から、朝日が昇るまで逃げるだけの簡単な遊戯。ただし、もしも逃げ切れなければ、迷宮のような森の中を、力尽きるまで彷徨いつづけなければならない。 |
烏天狗【4】
「逃げきれたと思うたか?残念じゃったのぅ」 森に朝日が差し込む。これで恐ろしい遊戯も終わりに思われた。しかし、それは残酷な罠だった。朝日に見えたのは烏天狗の手の上で光る火球だったのだ。こうして、烏天狗はまた新たな絶望という名の好物を手に入れたのだ。 |