アドラメレク【1】
「太陽が明るいなんて、誰が決めたのかしら。ねぇ?」 その悪魔魔術士の頭上には太陽が輝いていた。その太陽は黒い色をしており、黒い光を放っていた。それに照らされたものは全て黒く染まり、そして、朽ち果てる。黒々とした光球は、まるで空間に穴が開いたようなーー不気味な色を、湛えていた。 |
アドラメレク【2】
「私、太陽は眩しすぎると思うの。だから黒い方が絶対いいと思うの」 黒太陽使い、アドラメレク。彼女は歪んだ、そして独善的な思想を持っていた。己の黒い太陽こそ、今の太陽になりかわるべき優しい存在なのだと。それを肯定する者はいなかった。けれど、否定を選んだ者は例外なく黒太陽に焼かれて消えた。 |
アドラメレク【3】
「夜は、暗すぎると思うの。月は、光が弱すぎると思うの。だから、太陽は黒いほうがいいわ」 アドラメレクは世界を優しくする為に己の魔術を極めた。この世界は、優しくない。だから、誰にでも優しくなるべきなんだ。その為の、黒い太陽。黒を見上げる悪魔の表情は、恍惚と微笑んでいた。 |
アドラメレク【4】
「想像してごらんなさい。眩くない昼、暗すぎない夜。それはきっと、理想郷ではなくて?」 どうして誰も自分の考えの素晴らしさを理解しないのか。それがアドラメレクには不思議でたまらない。ならば教えてあげればいいのだ。黒い太陽の素晴らしさを、優しさを。大きさを増す黒い光。悪魔はただ、善意のために。 |