アルタイル【1】
この世界には美しく輝く星がいくつもある。そんな星の中に一個体の巨大な生物がいると聞いたら、誰かそれを信じるだろうか。 王立天文台が出したとある発表は、多くの学者が失笑した。夏の季節に輝く美しい星の正体がドラゴンなど、誰もが笑い話だと思ったのである。 |
アルタイル【2】
この宇宙には人類の想像の及ばないものがある。星だと思っていたものがドラゴンだったとしても何ら不思議はない。真面目に語る天文学者は数多くの証拠を見せた。初めは侮蔑の表情を見せていた他の学者たちの顔色は、みるみる青くなっていく。どうやら、天空で輝くドラゴンは確かにいるらしい。 |
アルタイル【3】
あらゆる科学的証拠が、ドラゴンの存在を証明した。アルタイルと名付けられたそのドラゴンは、大陸のはるか上空を飛んでいる。だが、その飛行の軌跡を計算すると、ドラゴンの高度が大変な勢いで下がっていることが分かった。 |
アルタイル【4】
まもなくドラゴンが地上に到達する。天文台はこの恐るべき報告を誰にも知らせずに隠ぺいした。そんなことをすれば、ただでさえ混沌に沈む大陸に、さらなる混乱をもたらすと考えたからである。 人間は静かに待つしかない。恐るべきドラゴンが、この地上に降り立つその日を。そして、そのドラゴンが与えるであろう運命を。 |