ウコバク【1】
「この丘から眺める地獄の風景が一番素敵だと思わない?」 死者のうめき声が響き渡る地獄の底で、ウコバクは嬉しそうに言う。亡者の列があてのない行進を続け、いくつもの責め苦が点在する地の底の魔園は、ウコバクにとってどの場所よりも心躍る楽園なのだ。 |
ウコバク【2】
「地獄の美しさには、地上も天界も魔界でさえも到底及ばないわ」 燃え盛る地獄の炎は、罪人の魂を焼き尽くす。そんな火を噴く山を見上げウコバクは微笑む。そんな彼女の足元では、地獄を揺るがす大事件が始まろうとしていた。 |
ウコバク【3】
「実に面白いわ。まさか亡者どもが地獄の獄卒に刃向うなんて」 亡者の大群が反旗を翻した。いくつもの砦が亡者によって攻め落とされ、巨人の獄卒たちが次々と倒されていく。そんな様子をウコバクは恍惚の表情で眺めていた。 |
ウコバク【4】
「反逆も地獄に咲く美しい花。だけど、どんな美しい花でも最後には散らなくちゃだめなの」 亡者の大群の前に立ちふさがったのはウコバクだった。彼女が腕を一振りするだけで、亡者たちは木屑のように吹き飛んだ。それまでの勢いが嘘のように、亡者たちは次々と打ちのめされていく。 「また、地獄の日常を……苦痛の絶望の美しい日々に戻りましょう」 |