ティファレト【1】
「ちゅーしましょ。大丈夫、すぐ『終わる』から……」 世にも美しい女が妖艶に微笑みかけた。その美しい笑みに抗える男はほぼいないだろう。回される腕、重なる唇ーー次の瞬間、ミイラとなった男の残骸が崩れ落ちた。ごちそうさまと女は笑う。その美貌を、吸い取った魂でいっそう輝かせながら……。 |
ティファレト【2】
「私、イケメンだぁい好き。だってイケメンの方がお肌に良いんだもの」 他者の魂を吸って若さと美貌を保つ恐るべき悪魔、それがティファレトの真の姿。美しいものは美しいものから生まれる、そんなモットーを持つ彼女の獲物は、いつだって見目麗しい青年だった。 |
ティファレト【3】
「知ってる? 恋をしたら、女の子は綺麗になるのよ」 薔薇が地面から養分を吸い取って美しい花を咲かせるように。ティファレトにとって、他人から魂を吸い取って美しくなることは当たり前だった。だって、女の子は綺麗で可愛くあるべきだ。綺麗で可愛いと皆が喜ぶ。誰も損をしないじゃないか。 |
ティファレト【4】
「ねぇ、そこのあなた……私とちゅーしない?」 もし月が綺麗な夜の道で、この世のものとは思えぬほどの美しい女に出会っても、決して誘惑に乗ってはいけない。さもなくば悪魔に魂を吸い尽くされてしまうだろうーーそんな警告がされていても、ティファレトの犠牲者は後を絶たない。美しさには、誰も抗えない。 |