プルートー【1】
「ここは死者が集まる地獄への入り口。冥府の世界を案内するわ」 冷たく陰鬱な地底湖にその入り口はある。死者を総べる女王プルートーの許可があれば、生者も冥府への階段を降りられるだろう。ただし、そこから戻れるかはプルートーの気分しだいだ。 |
プルートー【2】
「私の右目は生を見る。私の左目は死を見る。あなたの魂は、私のどちらの目に映るのかしら?」 暗く深い湖には、不気味な影がいつも蠢いて見える。その影の正体が何なのかは考えない方がいい。道に迷い、プルートーから見放された魂の末路など、気持ちのいい話ではないのだから。 |
プルートー【3】
「ここから先には氷しかない。温かい血の通った人間には少し辛い環境ね」 それは彼女の慈悲なのか。体温のある体を持つ者には、この寒さは絶えられない。 「私の左目をじっと見て。そうすれば、もう寒さを感じなくなるから……」 |
プルートー【4】
「ようこそ死者の世界へ。あなたを歓迎するわ……永遠にここから逃れられない、住民として」 冷たく閉ざされた冥府の扉。その内側の者たちが凍えるようなことはない。温かい体も、人として生きていたころの喜びも持たぬ者たちは寒さを感じないのだ。彼らはプルートーの蒐集物として、ただただそこに居続ける。 |