ヨミアエル【1】
「この壺の中身が気になりますか?ふふふ……それではこの壺に秘められた、悲しいお話をしましょう」 古物商の女性は禍々しい壺をなでながら語りだす。悲運の道具を集めるヨミアエルはこの手の話を多く持っている。 |
ヨミアエル【2】
「遠い遠い昔のお話です……」 古物商は語りだす。それはとある裕福な王族の物語。王は不治の病にかかった王妃のために、恐ろしい悪魔と契約をした。壺に毎日、一つずつ王の大切なものを入れれば、王妃の命を延ばすと。しかし、それは悪魔の罠だった。 |
ヨミアエル【3】
「優しい王様は、王妃様のために自分の大切なものを、毎日壺の中に入れていきました……」 王はあらゆるものを壺にいれた。すると、王妃の体長は回復していった。財宝を入れ、王冠を入れ、食料を入れ、王の大切なものはほとんどなくなってしまったが、王妃だけは生きながらえた。 |
ヨミアエル【4】
「大切なものを入れる約束は絶対です。それが悪魔との契約なのですから」 ついに王の大切なものはすべてなくなってしまった。と思いきや、壺から現れた悪魔は、王に残された最後の大切なものをとりあげると、壺に入れた。哀れな王妃は壺に閉じ込められ、そのままそこで骨となったのだ。 「こうして契約をした悪魔ヨミアエルは、また新たな悲運の道具を手に入れたのです。めでたしめでたし」 |