ベビオン【1】
「土は水を吸う。その様子を見ていると、土が他人に思えないの」 砂漠に住む魔族ベビオン。彼女に触れたが最後、すべての生命力を彼女に奪われてしまう。まるで砂にしみ込んだ水のように、奪われた力は絶対に帰ってこない。 |
ベビオン【2】
「土は何者も差別しないわ。あらゆる死体を包み込み、そのまま土の一部にしてくれる」 ベビオンに力を奪われた者の亡骸はとても美しいという。生命力だけが抜かれ、外傷が一切ないからだ。だが、どんなに美しい死体であれ、埋められてしまえば行きつく先は他と同じだ。 |
ベビオン【3】
「砂漠を何もない不毛の地だという人がいるけれど、それは大きな間違いね。砂さえあれば、もうそれで十分じゃないの」 砂漠に危機が迫っていた。凶暴で知られるサンドワームが、ベビオンの砂漠にやってきたのである。しかし、ベビオンは少しも動じない。彼女にとってサンドワームもミミズも、さほど変わらない相手なのだ。 |
ベビオン【4】
「どれだけの時間もつかしら?」 砂漠に現れたのは、ベビオンよりも何十倍も巨大な恐るべきサンドワームだった。一切、抵抗しないベビオンにサンドワームが食らいついた時、勝負はついた。触れた瞬間にすべての生命力を奪われたサンドワームはその場に倒れた。こうして、ベビオンの砂漠に新たな骨が加わったのである。 |