科学技術

Last-modified: 2021-09-18 (土) 14:58:56

・ナノマキシム

ナノマシンに作用する薬剤で、出血を止めるための各種処置を施すように命令を出すタイプ、異物に対する抗体の産生を促すタイプなど、様々な作用をナノマシンに行わせる。通常ナノマシンは身体のコンディションに応じて自動的にサポートをするように働くが、外傷や感染症などの大きなダメージを負った場合は通常の動作モードでは役に立たないため、普段は副作用を避けるために抑制されている強力な生命維持処置を行うプログラムを起動させ、ナノマシンを活性化させるこの薬剤を投与する。病院で一般的に使われているが、戦場において衛生兵が応急処置の一環として注射する場合もある。

・ペン型注射器

軍の救急医療キットに含まれる新型注射器。
兵士の体格に合わせた1回分の薬剤が封入されたカプセルと、注射筒から成っている。
尾部のボタンを注射器の側面にあるツメを下に押し下げて安全装置を解除してから押し込むことで、圧縮空気で押し出された注射針が出てくると同時に薬剤が体内へ注入される。
薬剤は痛み止めのモルヒネ(衛生兵のように資格があるものだけが使用する)、応急処置用の感染防止の抗菌剤、化学兵器曝露時の緊急措置用のアトロピン、非常用の抗菌剤など皮下注射と筋肉注射で投与する様々な薬剤が持たせられる。
扱いが簡便で専門知識なしで使用でき、アンプルを切ったりする手間も省けるため世界中で普及している。

・アラーテック

モダフィニルをさらに改良し、覚醒、知覚鋭敏化を強く引き起こすようにしたもの。
作用は強く、使用した場合聴覚、視覚が鋭くなり触覚はわずかな空気の流れも感じ取れるほど鋭くなるが、反面効果持続時間は約3時間程度しか持たない。航空機の夜間任務での事故防止や、特殊部隊の任務の円滑化を図る目的で兵士に投与される。
効果の切れ方が特徴的で、最初に覚醒作用が切れ、次に鎮静作用、次に感覚鋭敏作用と順番に効果が無くなっていく。中でも感覚の鋭敏化は効果が切れるまでの時間が多少長く(個人差があるが、長いと3時間)、ちょっとした刺激でも過敏に反応してしまうため効果が完全に切れるまではあまり動かないことが推奨されている。これは全身の感覚神経が影響を受けるためで、例えばほんの少し頬を触るだけでもくすぐられたような感覚を受けることがあるため、あらゆるモノに触ることがストレスになりうる。この状態では日常生活で受ける刺激も大げさに感じ取ってしまうので、歩くのも大変である。なのでこの薬剤を投与された兵士は、任務後すべての感覚を遮断するため水が満たされた透明な離脱カプセルと呼ばれるカプセル内で効果が切れるまでを過ごす。この間、カプセルの内側のテレビで映画を見たりすることができる(音声はカプセル内のイヤホンで外界の音が聴ける)。
しかし戦場では周囲の状況をすばやく、かつ的確(薬剤の効果が持続する間は鎮静作用も働く)に察知できるので、兵士の危険回避に大いに役立つ。
薬剤の名前はアラート態勢の兵士が使うことから。

・Shot Stopper

片手で止血材を打ち出す事が出来る応急止血キット。
打ち出される止血材は棒状をしていて、傷口に直接挿入したり広げてシートとして使う。特殊な方法で抗菌剤とトロンビンをしみこませた不織布は、血液に触れると膨潤して圧迫止血を図る。また、開口部を覆う事で傷口からの感染を防ぐ。
特に銃創や破片による大血管の損傷に効果を発揮し、傷に打ち込むだけで処置が出来る。
シートは強固な構造で傷口の中でちぎれる事がなく、血管の中に入り込んでも血流に乗って飛ばないように工夫されている他、フィブリンと同等の凝固能力を発揮して膨潤による圧迫と相乗する事で動脈の止血も可能。
ただし、血管を完全に塞いでしまったり膨らんで圧迫する事がかえって周囲の組織の血流を阻害して虚血になる危険があるため、傷口に挿入する使い方をした場合は後送して外科的に処置をする事が義務付けられている。
レントゲンには不透過で、血管造影や初期の診断で治療計画を立てる手助けとなり、体内への残留も防ぐ。
当然ながら、傷口を内側から圧迫するため猛烈に痛い。

・VX

神経剤の代表格で、世界で最も知名度の高い化学兵器の原料となる化学物質のひとつ。実際にテロに使用されたサリンと並び、インパクトのある名前と毒性の強さで知られている。
皮膚や粘膜からも容易に毒性を発揮し、曝露されると痙攣や呼吸停止を招く上に親油性が高く水では洗い流せない。加えて揮発性が低く分解されにくいので一度散布されると1週間近く毒性が残り続けるため、化学兵器としては「優秀」と言える。
木材や布にしみこむと長期間毒性を保つ。防護のためには全身をカバーする大掛かりなスーツが必要となる。
除染には水での洗浄はあまり意味が無く、化学薬品を用いた化学洗浄が必須となる。
ガスと言われるが実際は揮発性が低いため、霧状のエアロゾルの形で散布される事で毒ガスと呼ばれる状態になる。
過酸化水素で分解されると毒性はあるものの不安定で自然分解が期待できる物質になるので、万が一見つけたらオキシドールをぶっかけると少しはマシになるかもしれない。
液体は綺麗な琥珀色で、インテリア向き。
ロシアでの内戦中に大規模に使用され、反体制派と政府軍側の双方に多大な死傷者を出し、いくつかの街が汚染で立ち入り禁止となった。

・Rウイルス

南太平洋の島で発生した、大規模バイオハザードの原因となったウイルス兵器。感染手段、秘匿性、致死率、制御の容易さは生物兵器史上最も完成度が高いと言われる。
ソ連が冷戦時代にアメリカに対抗すべく、予算のかかる弾道ミサイルや核兵器に代わって比較的低予算で効果的な攻撃が可能な化学兵器、生物兵器での抑止力を確保しようと行った極秘プロジェクトをロシアが受け継いだ産物。
高い致死性、感染拡大能力、治療抵抗性、制御の容易さを既存の病原体ではなく、目的通りに設計した人工の病原体で実現することを意図している。
ヒトの細胞に感染するよう設計したファージに遺伝子を導入する手法で開発され、狂犬病ウイルスをベース遺伝子としてファージに組み込み、感染力を強化させ既存の狂犬病ワクチンに対する抵抗力を高めて治療を困難にした上に、脳組織を急速に破壊するよう性質を変化させている。ただし生物兵器として活用できるように感染を制御する目的で、空気感染を防ぐように作られており空気中での生存性はほぼ無い。
接触感染で広まり、体内にウイルスが侵入すると脳細胞では毒性物質を産生して大脳を破壊して患者は理性を失う。一方で他の組織では活発な増殖を行うために細胞の代謝を活性化させ、細胞の不死化を積極的に行いながら新陳代謝を向上させる。このため感染者は極度に凶暴化しながら健常者を襲うようになり、さらに感染を広げる手助けをする。
また、細胞の不死化と代謝の活性化により通常の人間ではあり得ない程の耐久性を獲得して様々な攻撃を受けても立ち上がり、向かってくる。感染の初期段階では非常に凶暴で全力疾走しながら襲い掛かってくるが、やがて感染が進むとエネルギー不足から代謝が衰えて組織を維持できなくなり、動きが鈍くなって最終的に組織が壊死を起こして体が腐り落ちてしまう。十分なエネルギーを摂取した場合は、爆発的な細胞分裂によって外見が変形するほどの腫瘍を形成する。また、代謝経路を変更して個々の細胞がダメージに対する耐性を大幅に上げているためにたとえ心臓を撃ち抜かれ、心停止の状態にあっても嫌気的な代謝である程度活動を行うが心臓が動いている個体よりは運動性は劣る。
このような特性のため感染者がさながらゾンビのように振る舞う事から理性を食われたと表現された。
感染拡大、敵の殲滅等を達成する手段として制御不能な暴動を引き起こす事が最も完成された生物兵器と称される所以であり、そこから暴動を意味するRiotの頭文字を取りRウイルスと名付けられた。
発病した時点で脳組織が不可逆的な破壊を受けるため治療の手立てはなく、神経細胞の受容体を変異させてしまう事で麻酔薬や鎮静薬も効果が薄れ、安楽死も出来ない。感染後すぐに拘束を行うか前もっての予防が重要となる。
基本的には脳からの指令で体を動かしている事に変わりはないので、発病してしまった患者を制圧するには脳か脊髄を破壊する。それでも細胞は活動し、ウイルスは排出されるため遺体は速やかに処理が必要となる。
一部の抗ウイルス薬には増殖を抑制し、発病を遅らせる効果があるが根治するには至らない。

・DNAメモリドライブ

DNAの塩基配列に情報を記録する技術。
記録したいデジタル情報を分割してそれぞれの塩基ごとに信号を割り振り、最後に正しい配列や塩基に何が記録されているかを指示するインデックスを書き込んでおく。そしてそのDNAの塩基配列を読み取り、塩基ごとに記録された情報を取り出していくと再生が可能になる。
2010年代半ばには技術として確立しており、最近になって主に軍事用として実用化されつつある。
記録された情報を読み出すには塩基に何を記録したのか、またその正しい配列が分からなければならずそれを知らなければ塩基配列の解読は可能でも情報の再生が出来ない。これを利用して情報を安全に運搬する暗号化技術として、機密情報の保管と伝達を行う手段としていくつかの実験が進んでいる。
DNA単体としても、バクテリアに組み込んでもOKで場合によってはバクテリアを増殖させる過程でコピーも可能となる。

・トウモロコシ枯れ病

アメリカの穀倉地帯を襲った新しい病気。正体は遺伝子工学で作られた新型病原菌で、カビを改良して特定の遺伝子を持つトウモロコシの葉を侵して枯れさせる。
葉の変色が見られる頃には手遅れで、葉同士が触れたり人間に付着する、風で胞子が飛ぶ等の方法で次々と感染を広げる。
ある種の遺伝子組み換えトウモロコシのみに感染するように作られ、他の植物には感染出来ない。
元は雑草を枯れさせる生物農薬の研究で開発された物が、中国に渡って敵の食糧源を破壊させる生物兵器として改造され、中華連邦への支援を続けるアメリカを攻撃するべく穀倉地帯に散布された。
幸い天候不順で雨が多かったため胞子が飛ばず、限られた地域でのみ被害が見られただけで食い止められたが食糧を狙ったバイオテロが現実となった衝撃は、食料価格の大変動と共に同様の攻撃が世界中に拡散する事による人類の絶滅にすら繋がるとして、各国に新たな脅威への対策を急がせることになった。
この事件後、水源や土壌、耕作地への立ち入り制限が厳しくなりセンサーやドローンを使った監視システムの導入などが行われると同時に、特定の遺伝子を持つ品種のみを栽培する事を避けるようFDAが通達を出した。
尚、実行犯は監視カメラもなく痕跡も殆ど残らなかった事から逮捕に至っていないが、中華連邦側から占拠した中国のバイオ研究所で発見された資料と兵器のサンプルがもたらされた事で発覚した。

・ナノマシン

ナオミ・ハンター博士によって開発された体内で様々な活動を行うナノサイズのマシン。
筋肉の繊毛運動の操作や薬剤の投与、有害物質の解毒から軍用や政府用のものは言語規制まで可能。
各種タンパク質の合成や異物の排除、止血の補助と言った医療作用によって使用者の傷の治りを早める事も出来る。
スネークがシャドーモセス島でのミッションの際に使われたものは第1世代、雷電が人工血液と共に使ったものは第2世代、SOP実用化と共に各国の軍人やPMC兵士に使われたものは第3世代と幾度かの改良を経て世代が別れている。
第3世代のナノマシンは中枢神経系への介入を行う事が出来る(感情制御や五感の共有など)。

・ナノコーティング

ナノマシンを使い、ナノレベルで物体表面に様々な物質をコーティングする技術。従来のコーティングと違って均一に、かつ隙間なくコーティングができるため物体表面を強固に防護する。
塗料に特殊なナノマシンを混ぜることでコーティング剤が完成する。この塗料はナノマシンの作用によってムラを無くしながら表面を覆う。ナノマシンに様々な素材を組み込むことで強度を増すことができ、更に表面の形状や特性を変更させると質感や電波反射、色彩などを変更できるため、戦車の表面塗装などに応用される。
ナノマシンによって表面の形状を僅かに変化させることも可能で、潜水艦や迷彩に応用が始まった。

・可変迷彩

迷彩塗装にナノコーティング技術を応用することで自在に光学模様を変化させることのできる迷彩。理論上塗装だけでなく服にも適応するが、複雑に形状が変化する布地で目的の色彩や効果を発揮させるのが非常に難しく、バッテリーの問題もあって迷彩服への応用は研究段階。
当初その多彩な使い道の可能性から革命的とも思われたが、コストがネックとなって民間での採用は限られていた。一方既存の曲面ディスプレイなどを使ったものとは違い、ある程度の自己修復能力や耐久性を持つため過酷な軍事用途での採用は広がっている。
塗料表面のナノマシンが光の反射率を変化させて目的の色を出すタイプと、小さな区画を表面に構築してそこを微小回路上のLEDで発光させることで色を変化させる2種類がある。
特に航空機分野では、赤外線放射を変化させてIRSTのような赤外線探知システムを欺瞞する事で従来の電波ステルスに加えて、赤外線でも探知が困難な究極のオールスペクトル・ステルスの実現に向けて盛んに研究されている。

・スマートカバーネット

人間や拠点、車両を隠すための擬装ネットの次世代版。
進化を続けるドローンと、AIを応用した画像解析技術に対抗するため画像処理、解析、探知に使われるアルゴリズムを回避する特殊な迷彩パターンと赤外線抑制塗料によって赤外線探知もある程度ごまかせる。
ただし機械の監視を逃れる事に最適化されたパターンは人間の目で見ると違和感が残るため、従来の人間による監視へのカモフラージュ能力は昔ながらの擬装ネットに劣る。
とはいえ、多くの国で画像認識技術を使った自動監視を利用している現代では意外と擬装効果は高く、実際に使った兵士曰くデジタルに頼り過ぎた奴ほどアナログを忘れるから誤魔化すのは簡単との事。

・スマートスキン

アクティブ・フェイズドアレイレーダー、IRSTなどの複合センサーを薄いシート状にして機体表面に張り付けることで、従来のレーダーやセンサーでは不可能だった全周囲の、高速探査を実現するもの。
素子を薄くして張り付け、レーダー波の送受信、通信、探知など複数の機能を持たせることであらゆる方向への電子攻撃、ジャミング、探知を同時に行う事が可能となる。
IRSTの機能を持たせることで、赤外線探査機能を付加することもできる。
攻撃と防御の双方をソフトウェアでのコントロールのみで、高速に行うため戦闘能力の飛躍的な向上が期待できる。その代り、ハードウェアの処理能力が高く求められ機体も表面の扱いがデリケートになる。
航空自衛隊で運用されている戦闘機へ順次導入されており、艦船や車両にも導入が進んでいるがコストの高さから順調とは言い難い。

・IRST

レーダー警戒装置の赤外線バージョンとも言える、赤外線捜索追跡システム。赤外線を出す物体を検知、追尾し場合によっては警報を出す。
パッシブ誘導のミサイル、ステルス戦闘機の捜索と発見に有用で複数のセンサーを搭載した航空機をネットワークで接続、探知網と大きさと精度を上げる事でレーダーと組み合わせた複合的な、回避の難しい探知システムを作ることが出来る。
高感度で非冷却型の赤外線センサーの開発、デジタル画像解析技術の向上、処理能力の高いハードウェアの進化によって性能はどんどん高くなっており、更にステルス機の増加やECM技術の向上によってレーダーによる探知距離が縮まっている事も相まって開発競争が激化している。

・オールスペクトル・ステルス

ナノマシンを使った可変迷彩の技術を応用し、物体の表面構造をナノレベルで変化させる事である種のフォトニック結晶のようなもので物体を覆い隠す次世代のステルス技術。
物体表面であらゆる電磁波を分散させ反射しにくくする構造を作り、兵器が敵を探知する電波や赤外線等の目を逃れる事を目的とする。
現段階では表面の模様を変化させる、電波の反射を抑えるレベルだがいずれ研究が進み電波、赤外線、紫外線が同時に制御出来るようなれば既存のあらゆる探知システムに見つからない、究極のステルスが実現されると言われている。
全ての表面で同時に、全てのスペクトルの電磁波を制御するのは極めて困難であり、形状や放射しやすい電磁波によってどの波長に対抗する構造を作るのかを分担させる方法が最も実現性が高いとされる。
また、電波ステルスは既存のステルス機の表面加工技術と材料によって達成して、赤外線や紫外線など従来のステルス技術でカバーできない部分を可変迷彩で隠す方法も開発が進んでいる。ナノマシンを使う事で天候や地域によって変化する電磁波の環境にも柔軟に変化、対応できる事が大きな強み。
航空機分野では夜間に飛行すれば可視光へのステルス性能は殆ど必要ない事、可視光での探知誘導には空気のよどみやゆらぎ、雲などの天候で限界がありソースを分配するほどの優位性が得られない事から、可視光を欺瞞する手段としては使わない方針の国が殆どである。

・超広域無人機連携型防空システム

航空自衛隊が開発中の、複数の航空機をネットワーク上で連携させて個々の探知した敵情報を共有しながら空域を監視するシステム。
戦闘機はもちろん戦闘機から発射されたドローンなどをネットワークに接続、各種センサーやレーダーの得た情報を統合する事で、ステルス機や小型ドローンを探知する事を狙う。
従来の構想より更に大規模で、AIによる高速処理によって地上や海上の部隊との情報交換、連携攻撃を可能とする予定。

・Synthetic intellectual humanoid

人工知性搭載型ヒューマノイド。頭文字をとってシーフとも。
PMC兵士の需要増大で不足した兵力の補充として生まれたアンドロイド。 開発にあたっては人間に随伴して行動できる事を前提に、人間の兵士の任務を遂行しやすくするため外見や体を従来の無人機とは違い、人間そっくりにすることで人間の完全代替を目指した。
更に、PMCが各国の軍事作戦を受注するようになるとSOPシステムを経由してシステム管理者であるアメリカにその作戦内容、政治事情等が流れる事を危惧した国々がSOPの規制外の兵士を欲していた事も影響している。
このような背景の中、まず兵士の代わりになる戦力としてAI制御の無人兵器がいくつか試作された。しかし人間に同伴して人間同様の高度な作戦を行うためのAIは非常にコストがかかり、かつ複雑で戦場に投入するには大き過ぎ、デリケート過ぎた。
しかも巨大なAIで持っても人間サイズで人間と同伴して作戦行動を取るには至らず、代わりに人工的に作成した神経細胞を使用した脳とコンピュータの融合したシステムが考案された。
このシステムは人間相手のコミュニケーションや柔軟な思考などの「人らしさ」を脳で行い、数値計算や論理、効率などを優先する機械らしい演算をAIで行うもので、機械側から脳へ情報のインプットや読み出しも可能としている。
更に初期に開発されたプロトタイプは人の人格を移植した脳の部分の制御をかなり緩く設定し、素体も生体部品の構成比率が多く一部臓器は機能こそ再現できていないものの、見た目と形状をそっくりに真似たものが作られた。これにより外見も内部も人間そっくりとなっている。
素体や頭脳の維持、ナノマシン稼働に必要なエネルギーは食物から摂取しており、体内に消化酵素の生産プラントとエネルギーを取り出すナノマシンを持つ。消化吸収の仕組みは人間とは全く違い、化学的な反応を駆使した実験室の科学実験に近い。
しかしこの方式は現在の技術ではエネルギーを取り出す効率が悪く、メンテナンス時の栄養液交換で生体部品を維持しつつメイン動力はバッテリーを使う。
量産型は生体部品の数を減らし、用途によって素体も素材のベースを金属やセラミックにして耐久性を高めたアンドロイドとも言うべきものになり、頭脳も揺らぎが少なく、任務を重視するようにバイアスをかけている。加えて生体部品には様々な遺伝子操作を施した細胞が使用される。生体部品のないタイプもある。
手足は人間用の義手や義足の技術を流用しており、殆ど人間とそん色ない機能を持つ。
耐久性を重視しない場合はシリコンゴムや人間ベースの人工筋肉、皮膚を用いて人間に近いタイプになる。重視しない、と言っても並の人間よりは遺伝子操作された組織は強力である。
武装は基本的に歩兵用の武器を扱うが、アンドロイドのシーフの特性を生かすための生身の人間では扱えない重く大口径の火砲も開発が進んでいる。
個々の性格はあらかじめセットされているものの、揺らぎと出荷後の神経組織の成長による個性がある。この頭脳部分をはじめとする中枢神経系は全て完全なブラックボックスになっている。
体は神経を模したセンサーが張り巡らされ、痛みや温度を感じる他人間には知覚できない電磁波、生体反応などを感知できる。東部にはレーダーと多くのセンサーを備え、様々な観測に力を発揮する。あらかじめ設定された個体同士は遠隔でリンクする事で、感覚や情報を共有するひとつのシステムとして動く事も可能。
こうしてシーフは心を持ちながら生体部品は遺伝子の書き換えとナノマシンによる細胞の改造など、各種処置を施してより兵器として高性能を発揮できるような商品としてこの世に生まれたが、あまりにタブーに踏み込み過ぎたその仕様はすぐさま世界中で猛反発を食らった。戦争による企業同士の競争、利潤追求によるモラル低下の最たるものとしてたびたび脚光を浴びた。
人間と共に活動可能なレベルの生きた頭脳と高度な知能をもつ人型ロボット兵器という、当初の目的は達成したもののコストの壁は依然として残っており生産は進んでいない。

・シーフの頭脳

生きた神経組織とコンピュータのハイブリッド方式で一種のバイオコンピュータにも近い。人間と共に行動するなら、人間の脳を模したAIを作ればいいと言う発想の元に本物の脳細胞を使って、手っ取り早く人間の脳を再現しようとした試みで開発された。ナノマシンを活用した脳神経学、脳生理学、脳外科、神経内科学等の発展によって得られたデータの集大成。
この頭脳は人で言う「感情」を備えていて人間との円滑なコミュニケーションを行えるが、これは出荷時にインプットされる基本的な情報よりもその後の環境、人間とのかかわりあいによる影響が大きく出る。
学習によって神経組織は自由に発達し、さながら人間の子供が成長するかのように人格が形成され、個性まで生み出す。つまり心、精神と呼ばれるものを備えている。しかしこれは偶然の産物と呼べるもので、当初は情報処理のみの利用を考えていたが、特定の配列に神経細胞を配置して成長を促した結果精神活動らしいものを観測できたという具合で、これが本当に心を持つと呼べるのか今でも議論を呼んでいる。
この生体脳は人間と共に活動する際、人間らしく振舞いコミュニケーションを図りながら機械のみでは難しい柔軟な発想や思考を行う。一方で機械部品のコンピュータは論理、効率、数値計算などの機械的な振る舞いを求める演算、相互リンクや他のコンピュータとの接続といった機械らしい機能を担う。
製造段階で機械側からある程度の常識、知識など人間として生活するための要素を頭脳にインプットしており、これが基本的な人格となる。そして世に出た後の教育、環境、人との接触によって神経ネットワークが成長して個性が生まれる。
この人格はヒトの人格を移植したプロトタイプのものをコピーして流用しており、複雑な人間の感情や人格を一から構築する事は未だ実現されていない。
尚、頭脳の製造はブラックボックス化しており、素体は様々なメーカーから出ているが頭脳だけは同じものを使用している。そのため専門的な改修、治療、調整などはヴェクターのみが行う。

・体内通信

ナノマシンによる通信のこと。脳内のナノマシンが言語野に生ずる電気信号を読み取ってその人物が話そうとすることを相手のナノマシンに伝達し、受信側のナノマシンが耳小骨の振動と言う形で音に変換することで会話が成立する。実際に口に出して話すことしか送信されない。そのため慣れない内は口で喋りながら話してしまう者もいる。
尚、発信者のナノマシンによって個人個人の声の質まで送信されるため聞き取る側は普通に会話するのと変わらない声を聞くことが出来る。
音を出さずに会話できるため、隠密性を有する作戦で重宝されるほか、周囲の騒音に邪魔されないので戦闘時の的確なやり取りにも欠かせない。
しかし、低出力のため10キロほどしか直接の通信が出来ず、更に遠距離では別の周波数を使った衛星や航空機による中継が必要になる。また、送受信できるデータの大きさも小さいので、今でも通信のメインは軍用無線である。
送波出力を上げれば中継で数百キロ範囲での通信が可能になるが、その場合はスクランブルをかけなければ双方の位置がバレる恐れがある。
通信時に耳の後ろに指を当てるのは耳小骨に埋め込まれたスピーカーのスイッチを入れるためである。基本的に押している間通信が可能で、受信時にスイッチを押すことが応答となるが、拘束された場合に備えて言葉をつぶやく(開け、など)事でも起動が可能。この場合は再びつぶやくまで通信が出来る。周波数合わせはこの原理で数字をつぶやく。

・汎用レーザー通信

レーザー光線にデータを乗せて通信を行う、光通信の一種。見通せる場所ならどこでも通信可能で大容量のデータを扱う事が出来る。
専用ソフトがあれば銃のレーザーポインターでも発信でき、受信設備もレーザー検知センサーをそのまま利用できるなど既存の設備を流用して通信を行える。人工衛星からの通信は地球上の受信設備を狙う精度を高める研究中で、主に地上と海上での通信に活用されている。
傍受の危険が少なく、受信機にしっかり当てれば情報の損失が電波を使った無線通信より少ない、直進性の高いレーザー光線を使用しているため相手にレーザーを当てるのが容易など様々なメリットがあるが、レーザーそのものの発信源を特定される恐れがあり、見つかると自分の位置を正確に知らせてしまう。
大容量高速通信が難しい潜水艦のために潜望鏡へレーザーを当てて通信を行う構想がある他、電波による無線通信が難しい状況で離れた場所の歩兵と通信を行う実験が進んでいる。

・広域可視光通信

光通信を可視光で行う技術。身近に存在する多くの光源にLEDが普及した事で自由な変調が可能となり、受信側もイメージセンサやフォトダイオードの急速な進歩を遂げた事で実用化が始まっている。
信号機や道路照明から車へ交通情報を送る、またそれに対して車側から応答する事で位置情報や渋滞の観測を行う実験が始まっている。緊急時には車から周囲の道路照明用の光センサに信号を送る事で、電話より迅速で確実な非常通報が出来るシステムが、一部の官公庁や警察車両で採用されつつある。
自衛隊では無線封鎖中の通信用に、識別灯を用いた短距離光通信装置を実験している他赤外線を使う事でナイトビジョンと一体化した受信装置へ、敵味方の識別信号を送る等の研究が進んでいる。
SSSでは屋外に設置する、車に積む、個人で持ち歩く等様々なサイズの光無線装置を活用しており、屋外広告に偽装して付近の調査員に暗号化した指令を送る、逆に個人のスマホやカメラからセンサーへ向けて情報を送る、すれ違いながらお互いの情報交換を行う等の諜報活動で積極的に利用される。
電波より発見しづらく、調整されたセンサー以外では信号すら拾えず、たとえ信号が拾われたとしても暗号化する事でノイズに偽装出来るため、傍受されにくい強力な秘匿回線が構築できる。
大規模な実験では、高所の電波塔の衝突防止灯から全周囲へ信号を発信して通信可能範囲を調べた事も。

・スマート耐Gスーツ

スカルスーツの技術を応用して作られた次世代耐Gスーツ。
空気圧で下半身を加圧する従来のものと違い、編み込まれた人工筋肉が体型に合わせて効率的に人体を圧縮する事でより低圧でより高いGへの耐性を生み出す。
トレーナー程度に薄いため着用時のストレスも少なく、着脱も容易。液体式に匹敵、あるいは凌駕する耐G性能を発揮しながら重量は空気圧式よりはるかに軽量で駆動は電気で行うため応答性も良く、薄型軽量な人工筋肉繊維はヘルメットや上半身にもストレスなく装着可能で重量制限を気にする事もない。
コンバットエッジにあたる全身タイプはナノマシンとの連携まで可能で、訓練を受けたパイロットはこのスーツの着用でテストでは継続して14Gに耐えた。訓練を受けていない一般人でも9Gを耐える。
下半身のみのタイプは価格も安く、空戦競技の参加可能年齢を下げ競技人口の拡大に大きく貢献した。

・外骨格式放射線防護服

パワードスーツを組み込み、従来の防護服では不可能だった防護能力の大幅アップと活動時間の延長を両立させた新しい防護服。
タングステンや鉛、ホウ素を使ったシートと特殊高分子ポリエチレン、中性子遮蔽のためのハイドロゲルシートの装甲と鉛含有ガラス面で覆われた宇宙服のような外観をしていて、背中のバッテリーでパワードスーツを駆動させる事で300kg近い重量がありながら、通常の修理や点検作業に支障を来さない速度を確保している。指先は可動性を確保するとどうしても防護能力が落ちてしまうため、スーツ内部でロボットアームを操作して作業を行うようになっている。
バッテリーの他電源ケーブルをつなげたままでも行動可能で、ケーブルは通信の役割も兼ねる。更に線量の大きな場所へ立ち入る場合は顔のガラスシールドへ防護板を張り付けてカメラ映像で活動する事も可能。
原子力発電所や核燃料工場のメンテナンス、米軍では原子力潜水艦や空母の原子炉区画での作業にも広く採用されている。
ハッチ式の背中を空けると、こいつはデブだから床を踏み抜くなよ!とのメッセージが落書きされている事も。
停電すると動けなくなってしまうが、モノコック構造なので力が抜けると外殻で自重を支えて中の人間が潰れないようになっており、換気機能もフィルターを使って最低限確保される。

・人工血液

文字通りの人工の血液。主に赤血球のことを指す。
ナノカプセル内部にヘモグロビンを封入したタイプのものと、酸素溶解能の高い物質を用いるタイプが主流となっている。医療用ナノマシンを使って体内に生産プラントを作り出すことで、人工血小板を即座に作り出して止血補助する機能を持たせた軍事用の完成と共に、白血球はナノマシン、赤血球は改良したパーフルオロカーボンで代替した全血代替人工血液が発展した。プラント潜入時に雷電に使用されたものはこの総入れ替えタイプの第2世代。
第2世代の人工血液は腎臓での老廃物の除去能が小さいため、腎不全患者ほどではないにしろ、数か月に一度程の割合で透析を行うことが必須である。
かつては戦場で負傷した時に都合がよい(人工の方が血液型や感染症などの従来の輸血に関わる問題が一切なくなる上、兵士の強化もできる)ため特殊部隊など高度に肉体を使う部隊は任務中に血液を入れ替えていた。
現在は第3世代となり、日本で開発されたヘモグロビン-アルブミンクラスターによる人工赤血球によって、ほぼ完成を見ている。

・クローン

同じ遺伝情報を持つ、一つの個体から発生した生物や細胞など。特に親の細胞を使って複製を子として作る個体のクローンが有名。
象徴としての伝説の傭兵、ビッグボスを生み出すべく最強の兵士の製造を名目に行われた恐るべき子供達計画では、既に生殖能力を失っているビッグボスから子を作り出すためにクローンが作成された。
計画当時はクローン技術の基礎理論すら出来ていなかったが、基礎研究をしないまま強引に核移植によってクローンを実現させるアナログな手法でクローンを実現した。

・コフィンシステム

元は防衛省技術研究本部で行われていた「ナノマシンの脳電気信号を読み取る機構を使った先進的操縦システムの研究」で、NERV設立とともにNERV技術開発研究所との共同開発に転換して、エヴァの操縦システムを応用する形を取る事に決定し「EVAにおける非接触型脳神経接続の応用研究」に移り変わった。
移行後システムのプロトタイプが完成したものの脳から発生する電気信号を正確に読み取り、なおかつノイズを除去してリアルタイムにシステムとパイロットをリンクさせるために膨大なマシンパワーが必要な事が判明し、ハード面での技術進歩を待つ事になる。
そしてMAGIの技術を応用した有機コンピューターの完成によってついに戦闘機への搭載が可能なレベルに到達、システムとコンピューターに適合した765プロのメンバーがパイロットを務めることで実証試験に入った。現在は万人向けに改良されたシステムがRナンバーへ搭載され始めている。
このシステムはナノマシンがパイロットの脳から電気信号を読み取り、それを操縦系統にフィードバックする事で直感的な操縦を実現したもので、A-10神経を介してパイロットを直接リンクさせるエヴァの操縦システムから発展したものである。更にAIならではの高速情報処理システムによって、敵の位置や脅威度などを自動でパイロットに提供することで操縦以外に神経を使わずに済むような戦闘支援システムも搭載している。
理想は完全にコックピットを装甲化して外部の情報を機体に取り付けたカメラによって得ながら操縦桿を使わず、完全にパイロットの脳だけで操縦する事であるが技術的な課題が多く、実現には至っていない。開発当初、この理想に沿ったコックピットのイメージ図がパイロットが仰向けに寝た姿勢で機体に搭乗するスタイルであった事から、「棺桶」を意味する「コフィン」の名で呼ばれるようになった。
実用化第1号である765小隊で運用されているシステムは、性能を最大限に発揮するため脳からの読み取りからコントロールまでコンピュータそのものを各個人に最適化した上で、その最適化された状態に合わせて機体を改造しているため各機体ともパイロット専用機となっている。
システムによる制御を行うと、パイロットに最適化されたシステムの持つ癖が機体制御に現れるため、その癖に耐えられるように、機体をシステムに合わせて改造する。
その後、パイロットを選ばずシステムが扱える改良型が開発されたため、こちらはRナンバーへの搭載が始まった。
このシステムの初期型を搭載した機にはシステムの適合者のDNAが組み込まれたDNAコンピューターを利用したAIが必須となる。改良型は機能はそのままに搭乗人物を選ばない。
改良型はヒトのDNAを基に修飾を加えたものを利用しており、人間ならば誰でも運用が可能となったが、システムを利用した操縦は訓練を積まなければ中々実用的なレベルまで達することが出来ない。

・BINDEN

コフィンシステムにおいてパイロットの神経と操縦系統を接続するシステム。
地上でのコフィンシステム経由のシミュレーションに使われる。ドイツ語で繋ぐの意。

・MAGI

カスパー、バルタザール、メルキオールの3つの第7世代の有機コンピューターからなるNERVの中枢ともいえるスーパーコンピューター。
コンピューターといっても人格移植OSを実装しているためジレンマなど人間と同じような思考が可能。
悠長に会話・・とまでは行かないがヒトの脳そのものと言えるほどの高い知能を持つ。
開発者は赤木ナオコ博士、システムアップは娘のリツコ博士が行った。
なお、コンピューターには赤木ナオコ博士の女としての思考、科学者としての思考、母親としての思考の3つの思考パターンが移植されている。
演算スピードはぶっちぎりのトップで世界中のコンピューターが束になっても軽くあしらわれるレベル。
バックアップが松代にある。
第3新東京市の市政と街のシステム全体を統括しており、街そのものを手のひらに治めていると言ってよい。
戦闘時にはエヴァのバックアップを担当し、敵性勢力の戦力分析や脅威度判定、侵攻の度合いに光学観測による武装の推定など多岐に渡る索敵と分析で戦闘のサポートを行う。街の監視カメラやセンサーはMAGIのためでもある。
日本政府の防衛、インフラなどのネットワークシステムの防護と、攻撃を受けた際に攻撃元の特定と反撃を必要に応じて行うため世界中の諜報機関からは毛嫌いされる存在である。

・ダーナ

TDD-1に搭載されたAI。開発はNERV人工知能研究所で、テレサ・テスタロッサの人格を移植しており事実上の分身といえる。
TDD-1のほぼすべてを制御でき、一人でも操縦できるのはダーナのバックアップがあるため。
ハッキングによる乗っ取りに対する切り札として、テッサとの共振によって直接コンタクトを取ることですべての権限をテッサへ戻す緊急アクセスを行うレディ・チャペルに本体がある。
索敵、脅威判定、攻撃補助などもほぼ全自動。

・VR訓練

その名の通り、仮想現実空間を利用した訓練の事。一時期流行と言えるほど採用されたが、SOPシステムの導入によってパイロットや特殊な環境での活動を行う兵士以外の利用は激減した。
自衛隊でも採用されており、国土の狭さと予算の制限による訓練の限界をVR訓練によって解決している。現実感の欠如を防止するため、訓練時間は決められており実際に体を動かす訓練と並行して行われる。
特に航空機パイロットの養成には欠かせないもので、これまでの訓練より遥かに効率よく現実に沿った訓練が行えるため、一般の旅客機のパイロットから戦闘機のパイロットまでがVR訓練を積む。
パイロット・チルドレンと呼ばれる子どもたちも勿論VR訓練を行っており、その増加に拍車をかけているためしばしば反戦団体から非難の対象となっている。
765小隊も例外ではなく、実際に戦闘機を飛ばす訓練と共にVR訓練による戦闘訓練が行われる。
被験者はヘッドセットを装着し、そこから脳へ信号を入力する事でシステム上に構築された仮想空間に発生する事象を五感で体験する事が可能となる。

・デウス・エクス・マキナ

米軍が運用するSOPを更に進化させたAIによる地球規模の指揮システム。陸海空と海兵隊はそれぞれの方面に指揮システムを持っているが、これはそれらのシステムと連携し統合した作戦指揮を行う。
NSOPが集めた個々の兵士の細かな情報を統合して敵の戦力や兵器、位置に合わせた部隊展開を割り出したり、作戦の状況に応じて必要な物資や兵力の配置を助言するなど参謀として戦場全体の把握と指揮をサポートする。
言わばAIの将軍であり、末端まで徹底されたデータリンクでもたらされる膨大な情報量で人間による指揮と戦場の把握が難しくなった現代戦において、見落としも疲れもない上に人間では不可能な情報量を扱えるこのシステムは戦争に欠かせないものとなり、地球規模で展開する複雑な作戦を扱える点で従来の指揮システムをはるかに超える規模を持つ。
能力的には全てAIによる決定で作戦を進める事も出来ると言われるが、あくまで助言をするものであって最終決定権は人間にある。

・イカロス

BTMWの完全自律戦闘AIを組み込んだOSのコードネーム。
テクノロジー批判によく引用されるイカロスの名をあえて冠して、そのタブーに挑む事を示している。
従来までの戦闘支援を越えて移動、索敵、戦術選択、戦闘そのものまで全てをAIが行う事を目指して開発が進められ、AIによる戦争、機械による殺人という技術発展のタブーに真っ向からぶつかるため議論を呼んだ。
コックピットの座席を取り外し、メインフレームをそこに搭載して機体を制御しながら戦闘行動を行う。友軍、民間人への攻撃禁止等の最低限のルールをインプットされ、後はあらかじめ持つ行動アルゴリズムと学習によってAIが次の行動を決定する。
複雑な市街戦での行動には問題が多く、センサーで見えない場所にぶつかったり感情がない故に機体と行動に問題が無ければ、多少の破壊行為を無視する様はまさにロボット兵器であると揶揄された。
開発当初から人間の制御を介さないため暴走の危険を常に念頭に置き、遠隔での制御や接近や攻撃を禁止する最上位規範の識別コードを建物や車両に示してセンサーに読ませる表示板、AIとはリンクしていない動力制御系に直接信号を送る事で強制的に電源をシャットダウンする絶対停止命令等の安全策を盛り込んだ。
ただ、自己学習するAIの学習過程や成果はブラックボックスでどのようにAIが成長するのかは未知数である事から、そこに人間への反抗や命令違反が入り込んでしまった場合や判断基準の不透明さから、やはり暴走の危険性を指摘する声は大きい。

・ハンズフリー

既に戦闘機で開発が進んでいるナノマシンを利用した脳と機体を直結して、手を介さず脳から直接機体を操縦する次世代の操縦システムをBTMWで実現しようとするプロジェクト。
操縦だけでなくパイロットの視覚、聴覚等で得る情報もセンサーやカメラを通して脳に送る事も可能とされる。
このシステムは従来の同様のシステムと違って脳へ情報を送信する機構が備わっている事が特徴で、BTMWのAIと人間の脳が接続される事で更なる能力向上を図っている。しかし送信される情報が脳に与える影響は未知数で、BTMWと一体化すると言える状況で起こる事が予測できないため実際に人間がフルに機能を解禁した状態での実験はまだ行われていない。

・フェアリー

アメリカで研究されている完全自律型戦闘UAVのOSのコードネーム。フライトシミュレーターでの模擬戦闘で、誰もいないコックピットでレバーやボタンが勝手に動作する様子を妖精が操縦してるようだと表現した事から名付けられた。
既に飛行機の推力偏向機構の技術が人間の限界をはるかに越える機動性をもたらすレベルに達し、カメラやセンサーの性能の進化が著しい今、高性能な戦闘機にとって、反応速度も遅く加速度にも耐えられない人間が性能を縛る足枷になっているとの考え方に基づいてDARPAで始まった完全な戦闘機の無人化を目指すプロジェクトで作られた。
最初は基本的な機動をインプットし、人間のパイロットの動きを読み込ませて学習させる事で徐々に成長するAIで、さながら人間のように基本を覚えてからベテランに学ぶ事で腕前を上げていく。更に学習成果の集合体である脳はコピーして量産が容易であり、熟練パイロットを数百単位で生み出せる。
現段階では学習量が少ない事と経験や勘に基づくひらめき、センスによる操縦が再現できない事から人間を越えるには至っていない。実用化されれば人間の限界を簡単に越える反応速度と加速度で、異常とも言える機動が可能な無人戦闘機が実現されるとされGの壁を突破して戦闘機は人間が機械に勝てない兵器となると言われる。
自動操縦が不可能と言われる離着陸を、発射台からの射出と誘導爆弾用のレーザー誘導装置によるガイドシステムで解決する事で戦闘のみにプログラムと機体を集中させて一層の戦闘能力の向上を図っている。

・ラムダドライバ

ASに搭載された防壁で操縦者の精神力を基に形成される。
ウィスパードによってもたらされたブラックテクノロジーであり、ラムダドライバで対抗する以外にはATフィールドかヒルベルトエフェクトで中和、侵食するか操縦者の意識を失わせない限り破ることは困難。
意識をしていない時は防壁がなくなるので、その隙を狙われることがある。
精神世界の干渉可能な範囲を、物理的な世界へ引っ張り込んでいるため操縦者の精神力と、それを物理的に増幅させるための操縦者の擬似的な頭脳と神経系が必要であるため、エヴァと同じく操縦者そのものを模したものでなければ展開できない。
妖精の目によって可視化できる。

・ECCS

対電磁迷彩対抗手段。ミサイルやセンサー系に実用化が進んでおり、ECS搭載のASやヘリもこれらの兵器に狙われれば通常兵器と変わらない。
このため、ECMやECCMによる「電子的な化かし合い」が頻発する。
ECSの発するオゾン臭や、紫外線の反射パターンの変化などを感知して誘導する。
装置が大型で、個人で携行できるものはまだ存在しない。

・ヤマト

日本政府の運用する、東京都の防衛、産業、インフラなどあらゆる物を管理している超大規模AI。社会を形作るシステムの防護と、最適な運用を行うための行政活動のサポートを行っており、管轄は内閣府。
IoTの究極の形として、カメラやセンサーによる可視化とそれらをネットワークでつなぐ事で都市そのものを電子化する実験が行われ、インフラや情報通信を管理して災害対策や交通の利便性向上、犯罪捜査などをサポートするAIが管理する街を作るべく開発された。
信号操作での渋滞解消から車や人の流れを分析して必要な道路、鉄道ダイヤの設定の提案や災害時のライフラインの迂回、障害箇所の発見、電力使用量の監視といったあらゆる行政サービスを瞬時に、的確に提供する。
個人にはスマートホンを通した道案内、ICカード替わりの交通機関への運賃支払いなども行う。

・さきもり

防衛省の所有するAI。装備開発、指揮、戦術ネットワーク管理など自衛隊の運用に関するサポート業務を行っている。
市ヶ谷にメイン、呉にバックアップを兼ねるサブが設置され防衛通信基盤と共に全国の駐屯地と結ばれる。
少ない戦力で効率的に国土を守る、少数精鋭プロジェクトに伴って整備されたもので陸海空海保のみならず、全国の沿岸や海上に設置されている監視装置、回遊型監視ロボット、護衛艦からの情報をネットワークで吸い上げて領海を監視するほか、電波傍受のデータやサイバー攻撃を探知排除するためのインターネットの監視を行う。
有事の際には敵の情報をネットワークを通じて収集、戦力分析や作戦指揮に必要な装備等の提案を行う。

・BOSS

SSSで運用されている戦術ネットワークの管理運営、業務支援、シギントやサイバー戦などを行うAI。
全世界のデジタル情報を調査、追跡できるほどの超大規模な情報処理能力を持つ光コンピュータで構成され、かつてのSOPシステムに近い。思考や人格などは無く、大量の情報を処理する事に特化している。
外部との通信には強固なファイヤーウォールが設けられ、内部をめぐるデータも常に監視下に置かれておりウイルスやマルウェアを免疫機構のように排除する他、世界中で日々作られるウイルスの情報をどんどん学習するB細胞と名付けられたデータバンクを備えて新たな脅威から情報を守る。
防壁も兼ねるいくつかのサブコンピューター、更に下の階層に各地のアクセス用コンピューターが連なってそれぞれの間の通信は独自の暗号化が施される。

・ATフィールド

絶対的な防御力を持つ壁のようなもの。使徒とエヴァシリーズのみ展開でき、エヴァでなければ使徒と戦えない理由になっている。その防御力は凄まじく、核兵器すら通用しない。
別次元への干渉可能範囲を広げる事でフィールドに干渉、無効化できるヒルベルトエフェクト、同じATフィールドによる侵蝕によってのみ突破が可能。若しくは圧倒的な力で強引に穴を開けてもいい。
エヴァのフィールドがパイロットの精神状態に大きく影響される事から「心の壁」であるとの見方があるが、正体はよく分かっていない。
フィールドの形状を刃のように変えてぶつけたり、或いは壁状のままぶつけることで攻撃する事も出来る。
ラムダドライバが通用しないため、大きな抑止力ともなっている。

・ヒルベルトエフェクト

ATフィールドの解析データを基に擬似ATフィールドともいえる力場の形成を目指して研究が行われた結果、機械的にATフィールドの再現に成功したもの。
再現とは言え、ATフィールドに比べてラムダドライバに対する侵食能力は少々劣る。
しかも防御能力はゼロである。
反面、コストは低く抑えられたため艦船などに複数搭載してアンプリファイヤーで出力を増幅させることで、通常戦力でもラムダドライバ搭載のASに対抗できるようになった。
なお、人の脳に人為的に発生回路を作ることでその人間の持つエネルギーを2次電池としてエフェクトを発生させることが出来る。
グノーシスと呼ばれる存在に対しては、存在する次元をこちら側に固着させる特性を持つことから、様々な敵に対しての切り札のようなものとなった。
倫理面に問題が多すぎるためにタブーとされていたがPMCのバイオテクノロジー研究所のヨアキム・ミズラヒ博士の独断によって1人だけヒルベルトエフェクトの発動が可能な人間が生まれている。
その後、グノーシスの出現やテロの激化から批判を浴びつつもヒトを基にした百式レアリエンとして量産され、世界中の軍に正式に配備される事が決まった。

・SOP

Sons Of the Patriot の略。
アームズ・テック社を前身としたATセキュリティ社が開発した戦場管理システム。
ナノマシンによって各兵士の現在地、残弾数、消費弾薬量、命中率、殺傷人数、進軍距離、発汗量、血糖値、水分量などのあらゆる情報を中央のコンピューターに集め、一括して管理することで司令部が極めて精度の高い命令を下す事を可能とした。
また体内のコンディションをナノマシンによって自動管理し、痛覚コントロール、五感の共有、傷の治療、アルコールの分解など兵士を常に最適な状態で戦えるように調整するコンディション維持機能がシステムに組み込まれており、新兵もベテラン兵士のように振舞う事が出来るようになったため、PMCの急増する兵士の需要に応えるようにシステムの規模は拡大していった。
武器装備の登録なしでは戦争活動が一切できなくなるよう、武器は勿論車から基地の扉に至るまですべてにID管理が敷かれ、武器の不正使用や横流し、そして施設の利用すら管理されるようになる。これによって戦場の管理が実現した。この武器装備の完全管理をもってPMCはジュネーブ条約で禁止された傭兵と違い、正規軍と同列と扱われる規律と秩序を保った軍隊であるとされ、合法的なPMCの活動が許されるようになる。
この強力な統制システムと兵士の強化はPMCのみならず正規軍でも戦力強化と高度なセキュリティが評価され米軍はもちろん、同盟国正規軍、警察機関までこのシステムの適用が行われている。
コンディション維持機能には兵士による戦場でのトラブルを避けるべく感情制御が備わっていて、ナノマシンが脳内で様々な物質を分泌する事で感情に起因するトラブル(虐殺や略奪、新兵の怯えによる戦闘不能や殺人行為への躊躇による任務放棄など)を回避している。このため敵を殺害すると同時に快楽物質を分泌する事でコンバットハイを作り出し、新兵を好戦的にすることも可能となった。システムに登録されていないものは引き金すら引けないため、武器のロックによって反逆行為を強制的に押さえ込むことができる。これによってPMCは完璧なコントロール下に置かれた兵士による犯罪は起こり得ないとしてジュネーブ条約を回避、更に戦場へ進出をした。
しかしナノマシンによる感情制御は脳に直接作用するためダメージが大きく、拒絶反応を薬で無理やり押さえ込むため更にダメージが増大する悪循環によってPMCの兵士の脳は破綻寸前にまで追い詰められている。戦争経済発展のきっかけであり、終わりのきっかけでもある。

・ID銃

SOPシステムによってID管理が施された銃。
システム側にその銃の使用者が登録されており、IDが一致した兵士だけがその銃の引き金を引いて発砲することが出来る。
IDが一致しない場合引き金がロックされ、必要に応じてその銃の使用状況がシステムに送信される。これにより、紛失した銃の回収や横流しなどを監視して不適切な使用や無断持ち出し等を管理する事が可能となっている。IDはチップに記録されており、システム側で個人と紐付けする事でどの銃でも使用登録が出来る。
ID銃として使用できる銃は引き金が撃鉄と直接繋がっておらず、ID認証チップの組み込まれた制御装置を介して撃鉄と接続される。この制御装置はシステム施行後に軍やPMC向けに生産されたすべての銃と、回収された銃すべてに取り付け義務が課せられているため現在制御装置なしの銃を合法的に手に入れるのは不可能に近い。
尚、銃を分解しても制御装置に機関部の部品が入っているため簡単に撃てる状態に戻すことは難しく、分解した事も自動で通報される。
制御機構、GPS、監視装置は体温を使った発電システムで稼働する。

・Non ID銃

システムの管理から逃れるため、ID認証チップを偽造チップと交換してID認証なしで使用できるように改造された銃。
通常、制御装置に入っているIDチップと使用者のナノマシン情報を照らし合わせて使用の可否を判断するが、このIDチップをID認証のプロセスなしに、IDが一致した場合に出る信号を擬似的に機関部に送る偽造チップにすることで、ID認証をせずに誰でも使える銃が出来上がる。
当然不正改造なのでシステムにも改造の記録が残り、通常ならば通報したり位置情報を元に回収する等の対応が取られるがシステム管理者の立場にコネがあれば、その記録を抹消する事で見かけ上異常がないように誤魔化して、監視から逃れる事が出来る。
ドレビンはこうしてID認証を解除した銃や、そもそもID登録されていない銃を販売していた。

・エシュロン

NSAの管理する超大規模情報集積分析システム。後に愛国者達のシステムへと発展した。
世界中の通信(固定電話、携帯電話、コンピューター通信、インターネット、無線通信)を傍受し、解析する。世界中の合衆国大使館、米軍基地にアンテナがあると言われている。
世界最高の通信技術を保有しているが、NERVと戦略自衛隊のネットワークへは入れなかった。
北朝鮮やイランのような敵性国家の通信のみではなく、同盟国も監視対象に入っているが、運営に関わらずとも必要な情報の提供を受けることができるため非難することはない。そもそも存在は秘密であるため表立って問題になる事もない。
NSAは基本的には技術者集団で、この設備などで能動的に攻撃を仕掛けることはしないが諜報を担当する部署は例外的にCIAなどと連携して諜報活動に従事する。

・NSOP

SOPに代わる戦場管理システム。条約によって人格を否定する非人道的なナノマシンによる人格の最適化、感情の制御を禁止したため、現在位置特定や体調管理のための生体情報収集、武器弾薬の情報送信を行うことに機能を限定したもの。個人認証による武器の使用制限も体内のナノマシンと連携して行う。NはNewの意。ナノマシンの制御は自律制御の他専用の端末で行う。
ただしSOP程厳格な武器使用制限はなく、車両や基地の設備での認証はNSOP対応の設備を導入する余裕が時間的にもコスト的にもない事から、余程セキュリティが硬い場所でない限り撤廃された。
特に銃火器はすでに密造品が横行しており、ブロックすることにさほど意味がなくなったため個人認証程度の機能が残されている程度となっている。

・人類遺産保存計画

人類の歴史、技術、芸術、言語等の人類が生み出してきた遺産を記録として残し、時代そのものを後世に伝えていく事を目的とする計画。
世界規模のテロや核兵器の使用、国家間の戦争の激化により人類滅亡後に文明を再興する、あるいは前時代の歴史を伝え続けるための施設が注目され、既存の同じような役目を持つ施設の拡大に各国が資金を投じた。
放射性廃棄物の保管庫のように言語や文明の変化があっても、何があって何をすべきかを理解出来るように工夫され、記録媒体も技術によらず読み出せる事を目指している。
経年劣化、情報の読み出し、文明崩壊後の荒廃や知識の喪失などを検討した結果記録媒体には日本で開発された石英ガラスにレーザーで情報を書き込む技術が採用され、それを地下のトンネルに収める事で記録を残していくようになった。
人類の歴史や文化、言語を始め農作物の栽培方法、感染症や放射線などの危険性と対処法、もしもの時に頼るべき施設、様々な生物のゲノム情報、科学技術の再興に必要な知識や道具など人類の英知そのものを保存する。
ノルウェーの山中に巨大なトンネルがあり、いくつかに区画分けされて必要なものごとにフロアが仕切られた施設がある。
同様の計画はアメリカ議会図書館でも行われており、こちらは書物を保存するためガラスにマイクロフィルムのように本の内容を記録したものが作られ、保管されている。この施設はガラスの本を保管するため、ガラス図書館とも呼ばれる。

・i・イルミネーター

戦闘支援情報システム。SOPと違ってナノマシンを使わず、各個人の持つ端末によってSOP同様の情報共有や指揮をリアルタイムで行う事が出来る。
元々パソコンやヘルメットカメラなどを組み合わせて活用した映像、情報、地形図、敵の情報などを把握するシステムは存在していたが、それを更にコンパクトかつ即応性の高いものにすべく寄せ集めで作られていたシステムそのものを一新し、最初からシステム専用に特化したデバイスとネットワークを新規に開発した。
防弾ポリカーボネート製のサングラスに小型カメラと無線機、バッテリー、IRレーザー照射器、発信装置が組み込まれており、サングラスはハーフミラーで外の景色を見ながら表示される情報を見る光透過型ヘッドマウントディスプレイと目の動きでアイコンを操作選択する機能が搭載されている。これにより、装着した兵士は指揮官や他の部隊から送られる情報を見ながら作戦を遂行し、必要に応じて自分の行動をコマンドとして送信する。
指揮官はタブレットやパソコンなどにインストールされたアプリを使い、どのデバイスでも指揮を執る事が可能で各兵士からの情報はカメラの他無線と位置情報、送られてくるコマンドで把握する。
指揮官の持つデバイスを核にアドホックネットワークを構築するか、インターネットを使って遠隔接続する、衛星通信を介する、既存の無線デバイスを使うなどあらゆる方法でネットワークを構築してそれぞれの通信は軍用無線規格の暗号化が施され、電波の逆探知による位置情報の漏えいを防ぐ。
手軽に高度な戦術ネットワークを構築できるが通信量、情報処理に必要なマシンパワーはやり取りする情報の内容に大きく左右されるため、作戦によっては別にサーバーを用意して全員のリアルタイムな映像を配信させたり、逆にメッセージや位置情報など簡単な情報のみを必要とするならタブレット端末で身軽にしたりなど、場面によって様々な形態と大きさでシステムを構築する。
強力な通信回線を必ずしも利用しない分、どこでも簡単にネットワークを立ち上げる事が可能だがそれ故に、多人数で同時に多くの情報をやり取りするには力不足で数個小隊程度までが最も確実に高速に動作する人数で、それ以上となると正規軍の運用するC4Iシステムが必要となる。

・キャパシティダウン

対能力者用音響兵器。
能力者が脳の演算を妨害されると能力を使えなくなることを利用し、特殊な波長の音波で演算能力を混乱させ、能力者を無力化する装置の総称。
甲高い音を発し、能力者は能力のコントロールが不能となるが能力がない人間にはただの高い音にしか聞こえず、無害である。スキルアウトや街のガラの悪いグループに何者かが横流ししているとの噂があり、事実第10学区周辺でこの兵器を使った犯罪が発生している。
元は能力者を捕えるためのもの。

・ツリー・ダイヤグラム

学園の管理するスーパーコンピューター。静止衛星として学園上空に漂っており、学園都市の管理、能力開発プログラム作成、各種研究、天気予報などあらゆる学園の活動に深くかかわっている。
申請すれば個人でもツリーダイヤグラムを使ってデータ解析などを行うことが出来る。
製造、メンテナンスはNERVの赤木リツコ博士によるが、関係するのはあくまでハード面のみで何に使われているかは知らない。天気予報は秒単位で天気を100%的中させる。

・イャート3

ロシアで開発されていた新型化学兵器。
呼吸器から人体に侵入し、肺胞にて毒性を発揮する事で炎症反応を引き起こす。暴露されるとのどや鼻を激しく刺激して酷い咳やくしゃみに襲われ、呼吸困難へと発展する。肺胞へのダメージは血管壁を広げる作用が働くことで、肺水腫などの呼吸器系の破壊を起こして死亡する。
純度が低くても毒性を発揮し、かつ扱いが簡便で容易に空気中に放出されて広域に広がる。
次世代の化学兵器と期待されていたが、扱いの簡便さが逆に対処しやすいという欠点に繋がり、V剤の研究が進んだ現代でわざわざ使う物としては不十分な毒性もあって実戦配備はされなかった。
しかし、製造コストの低さとどこでも手に入る薬品で作る事の出来る隠密性の高さ、広いエリアを殺傷力を保ったまま汚染できる特徴から非合法組織に目が付けられ、ソマリアやメキシコなどの麻薬カルテルやテロリストによって大量生産がされているとのうわさがある。
色は緑で、比重は空気よりも重く下に貯まっていく。ガスマスクのみで防護できるが、除染作業で全身を洗う必要がある。
水では分解されないが、水で容易に洗い落とせるため洗濯だけで除染できる。しかし、排水は蒸発するとガスを放出するため、化学薬品による中和処理が必須となる。

・ECS

Electromagnetic Camouflage System。
電磁迷彩と呼ばれ、エメリッヒ博士の開発したステルス迷彩の応用で赤外線から電磁波に至るまであらゆる探知技術を欺瞞することが出来る。
ただし、紫外線までは欺瞞できないため鳥には無意味。また、作動時にはオゾン臭がするため嗅覚が敏感な犬などがいると見えなくとも位置がばれることがある。加えてレーザースクリーンに水が触れるとスパークが発生するため、雨や濃い霧の中や水中では使用不可。
稼働時には莫大な電力を消費するため戦闘機動は取れない。
実戦配備はまだ大規模に始まっていないが既に既存技術化しつつあり、先進国では対ECSモードを搭載したミサイルや探知機が配備されつつある。しかし、未だ戦場では非常に有効な手段である。

・メガフロート

海上に建造される人工的な浮島。
埋め立てや干拓ではなく、浮かぶ島を土地造成の手段とするもので、埋め立てをする従来の人工島建設より遥かに建設費は安く、また移動ができるため必要な場所へ動かしたり地震に耐える、拡張が容易などの特徴がある。
20世紀には既に航空機が着陸できる事が立証され、技術開発も海上空港の建設が可能なレベルに達していたが空港建設の需要が減ったこと、造船や土木関係の企業の対立などの影響もあって大規模なメガフロート建設は立ち消えとなった。
しかし人口増加の一途を辿る国への輸出品目として、また農業生産やGOP後の景気後退に対する景気浮揚策としての都市開発事業のため、災害にも強い利点もあって日本政府がメガフロートの建造に再び着手したためメガフロートは日の目を見ることとなり、東京でのお台場の拡大と住宅地建設、東海地方での工場や石油プラント拡大のための土地造成にメガフロートを採用したことで世界での需要の掘り起こしと、メガフロート建設の受注の独占に成功した。
これを見て各国もメガフロートの開発に力を注ぎ、特にアメリカは世界中でテロの激化による空母の出動回数の増加に対応するべく、重点的に監視したい地域に米軍基地を置く手段を模索している最中だったため、海上移動要塞としてメガフロートを採用し急速に開発が進んでいる。
世界最大のメガフロートは日本の四国沖にある、太陽光、風力などの発電プラントを集めた海上発電施設の「たいよう島」の3番目で、面積は20平方キロメートル。
シェアトップを走るのは住友重機マリンエンジニアリング、三菱重工。
SSSはMSFからの引き継いだ資料やノウハウを元にメガフロートや海上プラントの建設を行う企業を子会社に持っているため、大規模なメガフロート建造に参加できるだけの技術を持っている。
建造方法はスピンセル(細胞)方式と呼ばれる工法で、まず中心となるメガフロートを陸上で建造して海に浮かべ、そこに橋をかけて資材を運び込みながら細胞分裂のように周囲にメガフロートを増設していき、大きくなったら最も容易に岸壁近くまで持ってこれる部分に橋をかけるため、メガフロートを回転させて橋を架けなおしたら再び資材を運び込んで組み立てていく。
最終的にメガフロート上に工場を作るか、貨物船で資材を運び入れて岸壁から切り離した状態で建造を進める。こうすることで、ドックなしでメガフロートの建設が可能になる。

・フルトン回収システム

荷物や人員をヘリウムの入った風船で上空へ飛ばし、それを輸送機やヘリコプターに取り付けたアームで引っ掛けて回収するシステム。
風船は数百メートルのケーブルを垂らし、その下に人や物を吊り下げている。それを航空機の「ひげ」で引っ掛けて捕まえたら、輸送機の後方ハッチやヘリのカーゴベイから流れてきたロープをウインチで巻き上げて収容する。
引っ掛けられる時に大きな衝撃があるが、民間人が耐えられる程度。
飛びぬけながら回収できるため、工作員の脱出や物資の受け渡しなどに有効でヘリが着陸できないような危険な地域での作戦で活躍する。ただしアームはあまり重いものを引っ掛けられないので、重量物は回収できない。
230kg程度までの重量のもので、尚且つテントのように風でバラバラにならず、ハッチに収まるサイズならほぼ制限なく回収できる。
ヘリウム入りバルーン、約450mのケーブル、ハーネスからなっておりいくつかの事故を元に改良が加えられている。現在は出番が減ってきているが、依然として素早く敵に囲まれた状況の人員を回収できる有効な手段であることには変わりない。