「アヒャのおもてなし」

Last-modified: 2022-08-07 (日) 12:42:43

アヒャのおもてなし(小説作品・シリーズ)

ボロボロのアパートにアヒャは独りで暮らしていた。
でも、寂しくはなかった。
退屈になると、彼は客を招き、おもてなしをした。

作者 


アヒャのおもてなし

10 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/01/23(木) 20:34 [ dCIfO4CM ]
ここの1さんじゃないけど、少し書いてみますた。

都会の片隅のアパートの一室に、アヒャが独りで暮らしている。
だが、今日は客人がいた。
台所のまな板の上には、しぃがいた。
かなり太い釘で四肢をまな板に固定しているので、
しぃが激しく暴れても大丈夫だ。
「ネェ ダッコシテアゲルカラァ ヒィィ イタイヨォォ シィハ ナンニモ シテナイヨォ」
悲鳴と絶叫と号泣を混ぜ合わせた無様な発音でわめいてくる。
アヒャは裁縫用の大きく鋭いハサミを持って来た。
そして、腹部の柔らかな皮膚をつまみ、ヘソからノドの方まで切り開き、
皮膚を包丁で剥がし、釘で止めた。
「シィィィイッ ウウェエ ゲウウェッ」  
叫びは途中から、嘔吐のような音に変わった。
アヒャはいつもの笑顔で、今度はハサミを助骨沿いに切り裂いた。
しぃの心臓の鼓動にあわせて、血管から血がリズミカルに吹き出している。
露出した内臓。しぃはまだ、かろうじて生きている。
アヒャはお気に入りのコーヒーカップに、電気ポットから熱湯を入れた。
何のためらいもなく、熱湯を切り開かれた腹部にそそいだ。
「ヒギャァァァ オゲエッ」
湯気がたちこめ、血が飛び散り、
恐怖のあまり脱糞したしぃの糞尿のにおいがしている。

都会の片隅のアパートの一室に、アヒャが独りで暮らしている。
今度の客人は、いつ来るのだろう?
次のおもてなしのために、アヒャは刺身包丁を研ぎ始めた……。

アヒャのおもてなし 2

27 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/01/26(日) 00:53 [ O.eb2neU ]
ボロボロのアパートにアヒャは独りで暮らしていた。
でも、寂しくはなかった。
退屈になると、彼は客を招き、おもてなしをした。
今日の客は、ぃょぅだ。
応接室は、この前と同じ台所。
まず、ぃょぅの口に生ゴミを詰めた後、ガムテープでふさいだ。
アヒャはぃょぅの小うるさい声がとても嫌だったのだ。
そして、冬の冷たい水道水を浴びせた。
毛を濡らした方が、斬りやすくなるのだ。
ぃょぅを鷲掴みにした手に、ビクンビクンとぃょぅの震えが伝わってくる。
まな板の上にぃょぅを置き、あえて釘で固定はせずに、
腹の中央に包丁で切れ目を入れた。
ぃょぅは叫ぼうとしたが、口には生ゴミがいっぱいで、
曇った音が口からもれただけだった。
その切れ目から皮膚を上下に大きく切り裂いた。
ハサミと包丁で全身の皮膚を剥ぎ取ると、
ぃょぅの体に粗挽きマスタードを塗り込んだ。
ぃょぅが激しく震えた。
すると汚らしい液体が、ぃょぅの鼻から滴り落ちた。
が、そんなことは気にせずに、アヒャは鼻歌混じりにおろし金を取り出した。
アヒャは楽しげにぃょぅをひっ掴み、おろし金で擦りおろしていった。
ぃょぅは小さいので、掴んで擦りおろすのは難しくはなかった。
鮮血がアヒャの口元に飛び散った。
アヒャは唾液に濡れた舌を出し、ぃょぅの返り血を舐め取った。

数分後、おろし金に何か堅い物が当たったような手応えを感じた。
見ると、ぃょぅの体の肉はほとんどえぐれ、骨がむき出しになっていた。
ぃょぅの口に巻いたガムテープを引きちぎって、とってやると
ボトボトと口から、生ゴミと吐瀉物と血があふれ出てきた。
せっかくテープがとかれたというのに、ぃょぅはもう叫ばなかった。
口の中の物はもう無いのに、何故騒がないのだろう、とアヒャは首を傾げた。
まぁ、いいや、とアヒャはもう冷たくなったぃょぅの残骸を
台所の隅の青いポリバケツに詰め込んだ。

28 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/01/26(日) 00:53 [ O.eb2neU ]
次の日、アヒャのアパートに玄関ベルの音が響き渡った。
今日の客は、同じアパートに住んでいるモララーだ。
モララーはアヒャのことを虐殺仲間だと思っているらしい。
……アヒャはこのモララーが嫌いだった。
「この前さ、ちびギコの耳をさぁ……それで、尻尾を……なぁ、聴いてるのか?」
モララーは自分がした虐殺をアヒャに話してくる。
「アヒャァ? そういう話は嫌いだぞ。いい加減に汁」
アヒャは虐殺や虐待が嫌いだった。
しかし、いくら言ってもモララーは信じなっかた。
「虐殺への罪悪感かい? そういうのは偽善って言うんだからな」
(本当に嫌なのに。 アヒャー……無意味に生き物を頃すのは、酷い行為アヒャ)

モララーが帰った後で、
アヒャはたまたま図書館で借りてきていた本を開いた。
ページの見開きに白黒の挿し絵で、昔の戦争の映像が映し出された。
戦争の犠牲となったしぃ達の血と糞尿の沼地に、
肉片、臓器がウジに混じって血溜まりに浮かんでいた。
(アヒャッ!! 惨いことするもんだ)
ため息をつき、本を閉じる。
(アヒャは、こんなこと絶対しない。アヒャは虐待も虐殺も許さないアヒャ)
そう独り決心すると、アヒャは台所に消えて行った……。

アヒャのおもてなし 3

31 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/01/26(日) 21:58 [ O.eb2neU ]
いつものように台所にたたずみながら、アヒャは考えごとをしていた。
珍しく、真剣に考えていた。
あのモララーのことだ。
(アヒャを勝手に虐殺仲間にして、本当に迷惑アヒャ。
 なんとか、この誤解を解きたいもんだ……)
そんなことを考えながら、アヒャの手はべびギコに向けて包丁を構えていた。
べびギコは何もわからないような顔で、呆然とまな板の上に乗せられている。
べびギコに軽く添えられたアヒャの手に、べびギコは親しげに体を擦りつけた。
そんなべびギコをアヒャはさっと一瞥すると、また考えごとをし始めた。
アヒャは、べびギコ程度なら、考えごとをしながらでも殺せると思っていた。
(アヒャッ!! アヒャとモララーのしていることの違いを
 実際に見せてやればイイッ!! アヒャヒャ、明日早速見せるアヒャ~)
考えごとの済んだアヒャはまな板の上に視線を移した。
そして、自分の手に擦り寄っているべびギコに、静かに包丁を振りかぶる。

アヒャは青いポリバケツに、
かつて自分に擦り寄ってきた物の一部を乱暴に入れた。
その動作の粗々しさとは反対にアヒャの表情はとても満足そうな笑顔だった。

明くる日、アヒャはモララーを自宅に呼んだ。
アヒャは、台所にモララーを招き入れた。
そう、自分がしてきたことを見せるために。自分は虐殺などしていないと教えるために。
そして、今度はモララーを客として迎えるために……。

アヒャのおもてなし 4

44 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/01/28(火) 23:50 [ c2cHpkdM ]
元は、ごく普通のアパートの台所だったのだ。
しかし、今そこにはアヒャの手によって、この世の地獄が表されていた。
テーブルの上の透明なポリ袋。
まだ血の付いている、ちびギコの腕が数匹分、無理矢理詰め込まれている。
ペットボトルには、八分目程、何者かの血が満たされている。
ヌラヌラとした血液が、ペットボトルのキャップのふちにこびり付いて光っている。
カッパッパーの皿と甲羅は、ハンマーとスクリュー・ドライバーで壊され、
甲羅の中身はクツクツと煮立った鍋の中で、
泥臭いにおいを発しながら、ドロドロに煮込まれている。
炊飯器では、おにーにが炊かれていたらしい。
高温の水蒸気で顔や体の米が溶けて、あまり原型を留めていない。
しぃは、まな板の上で腹を裂かれ、そのグロテスクな色彩の
内臓をアヒャとモララーに見せびらかすかのように仰向けに固定されている。
そのしぃのそばには、白い陶器の皿に臓器が盛られていた。

今まで、数々の虐殺をこなしてきたモララーだが、このような光景を見るのは初めてだった。
モララーがしてきた虐殺とは本質的に異なるアヒャのこの行為。
アヒャのそれは虐殺と言うより、むしろ……。
食事だった。
アヒャはゆっくりと、立ち尽くすモララーに近づいて行った。狂気の笑みを浮かべながら。

45 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/01/28(火) 23:51 [ c2cHpkdM ]
「アヒャヒャヒャ、なぁモララー。どうだこの際、無意味な虐殺は止めないか?」
モララーはぎこちなく振り向いた。
「なるほどね。食べれば有意義だって言いたいわけか。このキティ」
アヒャは、奇声にも似た笑い声を発した後、
おもむろにしぃのそばに置いてあった皿を持ってきた。
「肝臓だ。内臓だと、肝臓が一番ウマーだぞ。アヒャヒャ、ウマーウマー」
アヒャは肝臓をモララーの目の前にちらつかせると、生のままでそれを食べた。
クチャクチャと汚らしい音を立てながら、アヒャは肝臓を味わっている。
アヒャの唾液に濡れた口から、噛み切られた肝臓の切れ端が、少しだけこぼれる。
食べ終わり、口を手でぬぐうと、アヒャはモララーを見つめて言った。
「アヒャは、今までちび共しか食べたことがないアヒャ。今度は大物を食べてみたいと思ってるアヒャ」
アヒャの包丁がモララーの頬をかすめた。しかし、モララーもかなりの手練れだった。
素早い動きでアヒャの刃をかわす。
そして、とっさにカッパッパーの甲羅の近くにあったハンマーを手に取った。
アヒャは包丁を突き出し、モララーはハンマーを振り下ろした。
包丁はモララーの左手を深くえぐり、ハンマーはアヒャの頭を強打した。
アヒャの体が傾き、台所の床の血溜まりに倒れ込んだ。
モララーは、痛みをこらえながら、人目を忍んで自分のアパートの部屋に戻った。
素早く腕の手当をして、必要最低限の荷物をまとめて部屋を出た。

あれから、数年。
地方に隠れ、虐殺などの行為も自粛していたある日のこと。
「ミュイィ♪ ミュギ? ギュゥゥゥッ!! ギュィィ……」
ストレスが溜まっていたのか、つい一匹のべびギコを殺してしまった。
ふと、手に着いた返り血を舐めてみた。鉄の味がモララーの舌をおおった。
次に、べびギコの肉片を恐る恐る舐めてみた。噛んで、飲み込んでみた。
そして、狂ったように内臓を掻き出すと、手当たりしだいにむさぼっていった……。

 完

アヒャのおもてなし 5

231 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/02/13(木) 23:12 [ JjEcgS.c ]
1/3
薄暗いアパート。
この部屋の主はハンマーで頭を殴られ、倒れている。
普通なら、死んでいるであろうその衝撃に、彼は耐え抜いた。
生きのイイ食材……ちびギコやしぃを食べてきて、体が一般人よりも丈夫になっていたのだろうか。
彼はゆっくりとした動作で起きあがると、軽く頭をさすった。
鈍い痛みが走る。が、その痛みもじきにおさまった。
そして、彼は何喰わぬ顔で、いつもの生活を続けた。

いつもと同じ孤独な生活。寂しい、退屈。
そんな時、この部屋の主であるアヒャはお客様を呼ぶ。
今日のお客はカッパッパーだ。
アヒャにとって、今回の客は食べ飽きたちびギコやしぃ達と違って、
魅力的な珍味のように思えた。
せっかくの珍味、食べ方も工夫してみることにする。
アヒャは口の中に湧き出てくる唾液を飲み込むと、カッパッパーを狂気の光を宿した目で凝視した。
頭の皿から、水掻きの付いた足先まで、舐めるように見回した。
そして、客人は台所へと消える。

232 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/02/13(木) 23:12 [ JjEcgS.c ]
2/3
アヒャは、カッパッパーの皿を包丁の柄で強打した。
皿に亀裂が入り、血が亀裂に沿ってプツリプツリと小さく吹き出た。
「痛いカパァッ!! い、苛めないでカパ。ヒィアッアァァアアァァァお願い、お願いぃぃぃっ!!」
亀裂にアヒャの指がかけられる。そのまま傷口をこじ開けるように、亀裂をさらに広げる。
爆発的に血が噴き出し、アヒャの手、顔、体を赤く赤く染め上げた。
口元に付いた血液を長い舌で舐めとり、うっとりした表情で赤い自分を見つめる。
カッパッパーの目は虚ろで、口からはだらしなく舌を垂らしている。
アヒャはさらに指に力を入れると、ミリミリと低い音と共に皿を剥がし取った。
剥がした皿を生ゴミ入れに投げ捨てる。
ひん死のカッパッパーをまな板に仰向けに寝かすと、
アヒャは鋭く光る包丁を取り出した。
その刃は油が浮き出ていて、
今までに何匹もの命を切り裂いてきたのかを静かに物語っている。
アヒャはカッパッパーの右腕を大根を切るかのように切り落とした。
そのヌラヌラとした鮮血に濡れる切り口に、アヒャはそっと口を付けた。
小さなカッパッパーの腕の切り口は、アヒャの口の中にスッポリと収まった。
アヒャは、傷口から血液を吸い上げた。
まるで、子供がチューベットが美味しそうに食べる姿に似ていた。
カッパッパーの血管から、大量の血がアヒャの口に流れ込んできた。
鉄臭い血の味が、アヒャの空腹を満たしていく。

やがて食事は終わり、カッパッパーの大きさは少し縮んでいた。
アヒャは何度もゲップをした。
その度に鉄の味をはらんだ空気が、ノドを逆流してきた。
が、逆流してきたのは空気だけではなかった。
アヒャの口から、血ゲロが吹き出した。
その勢いは凄まじく、アヒャの鼻の穴からも血ゲロは滴り落ちた。
胃の中のカッパッパーの血が逆流してきたのだ。
アヒャは胃の中のモノを全て吐き出すと、うがいをしてさっさと寝た。
次の日の朝、朝食にパンとベーコンを食べた。
ベコーンを食べて数分後、またも嘔吐してしまった。
それからというもの、肉は全て食べれなくなった。
いや、食べられるがどうしても嘔吐してしまう。
もしかしたら、とアヒャは考えた。
前に調子に乗ってモララーを食べようとしたとき、反撃された。
それがトラウマになって、血肉が食べられなくなったのでは?
アヒャは呆然と座り込んだ。
もうお客との楽しい食事ができない。
そう思うと涙がこぼれてきた。
もっとも、アヒャ族特有の笑い顔のままなのだが。

233 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/02/13(木) 23:12 [ JjEcgS.c ]
3/3
肉が食べたい、でも食べられない。そんな状態が数ヶ月続いた。
が、ある日アヒャはイイ案を思いついた。
善は急げ、早速客人をアパートに連れてきた。
今日はオーソドックスにしぃを招いた。
「ナニヨォッ!! ナニスルキヨォ!! シィノオテテヲ ハナシナサイヨ ヘンタイ!!」
小うるさいしぃを黙らせるために、アヒャはしぃのノドを掴んだ。
「シギャ、シィィィ!! グ、グエ……」
戸惑うことなく、アヒャは怪物的な力で皮膚の上からしぃの声帯を潰した。
生暖かさと奇妙な感触がアヒャの手に伝わった。
文字通り息の根を止められたしぃは、やがて冷たくなっていった。
アヒャはしぃの体を包丁でばらすと、皮を引きちぎるように剥ぎ取った。
剥いだ皮は長い間酸の液に浸される。
水で洗い、ろ過や冷却、乾燥などの作業をへて、それは完成した。
アヒャ特製のしぃゼラチンだ。
これなら、肉とは違う食感で吐き気をもよおすこともないだろうし、
調理などの課程で、かつての肉食の思い出に浸れる。
アヒャは数ヶ月かけて作り上げたゼラチンで、早速ゼリーを作った。
イチゴ味の美味しいゼリー。その赤は、血のように赤く美しくより一層アヒャを満足させた。
都会の、スモッグで汚れた中途半端な青空の下、
ボロアパートのベランダっで赤いイチゴゼリーを頬張るアヒャがいる。
もし彼を見かけたら、ゼリーをごちそうして貰うのもイイだろう。
でも、彼の部屋に入るときは、間違っても台所に近づいてはいけないということを
頭の片隅に留めて置いた方がイイかも知れない。

 完