擬古田薬品 (1)

Last-modified: 2021-08-12 (木) 16:34:55
2 名前: 管理団 投稿日: 2003/11/03(月) 01:25 [ btf06cwM ]

モラ山は、ダッコ映像に勤めている。
擬古田薬品との合同プロジェクトで記録映画を製作することになった。
政府の麻薬撲滅キャンペーンの一環らしい。
 確かに歌手やタレントが『だめ、絶対』なんて言っているポスターよりも
「麻薬に手を出すとこうなりますよ。」という実際の経過観察を見せたほうが、
 抑止力になるということなのだろう。

被験者は、ちびギコ・ちびしぃ・しぃ(妊娠しぃも含む)に決まっている。
問題は、どうやって研究所に連れてくるか、
悟られないようにするには、どうしたらいいか。
モラ山は悩んでいた。
「擬古田薬品さんとの合同プロジェクトって言ったってなぁ。
どうやってたくさんのしぃを集めて来いって言うんだよ・・・」

公園の中を歩いていたら、ちびしぃがベビしぃを売っていた。
*が見えない。少し色素が薄いのだろうか。
モラ山は彼女を見ていたら、ある閃きを感じた・・・・・
9 名前: 1・会社にて 投稿日: 2003/11/05(水) 14:55 [ Q9ecaUgc ]
公園でちびしぃを見た翌日、モラ山は上司のモナ川に相談した。
「え?*なしのしぃがベビを売っていたので、彼女にしぃ集め役を
 頼みたい?結構凄腕っぽいのか。でもなぁ・・・・うちみたいな
 弱小会社ではあまり彼女に金を払えそうにないモナ。」

「でも、逸材ですよ。口もうまそうだし。あれならアフォしぃも
 研究所まで楽に連れてこれそうなんだけどなぁ・・・」

モラ山とモナ川が頭を抱え込んでいると、社長のモラ谷が現れた。
「値切る方法ならいくらでもあるぞ。」

「ええええ??」

「彼女の生活パターンで、必要なものを支給する手法をとるんだ。
 擬古田薬品さんの許可が必要になるが、必要とするのが薬であれば、
 お金の面でのうちの負担は抑えられるかもしれない。」

「社長!それいいアイディアっす!!!」

「では、早速擬古田さんに連絡をとるモナね。」

モナ川は擬古田薬品に電話を入れた。
「擬古田さんですか?ダッコ映像です。いつもお世話になっております。
 実は折り入って相談がありまして・・・・」

モナ川は、モラ山が公園で見かけた*なしのベビ売りのしぃのこと、
彼女を被験者集め役にしたいこと、(彼女へ払うお金)をできるだけ
抑えたいこと、もし彼女が薬を必要としている状況にあれば、
擬古田薬品に提供をお願いしたいことを擬古田薬品の担当者に伝えた。

「担当者さんがこちらにいらっしゃるんですか?
 わかりました。伝えておきます。」

「擬古田さんの担当者がこちらに明日来るって。
 担当者と詳細は詰めてほしいって言っていたモナ。
 無償提供のことはOKが取れたモナよ。」

「忙しくなりそうですね。社長」

「そうだね、今日は飲みにいかないか?
 とりあえず、仕事の成功祈願ということで。」

3人は飲み屋街へと繰り出した。

10 名前: 2・擬古田側との打ち合わせ 投稿日: 2003/11/05(水) 14:58 [ Q9ecaUgc ]
翌日、擬古田薬品から2人の担当者が、ダッコ映像に来社した。

「はじめまして。擬古田薬品の、擬古矢と申します。」
「マーケティング タントウノ ジエン! ヨロシク。」
「お一人ずつに、名刺を渡したかったんですが、申し訳ありません。切らしておりまして・・・」

ジサクジエンは擬古矢の頭を一発叩き、ダッコ映像側にわびた。

「こちらこそ、ご足労をおかけしまして・・・しかもマーケティングの方まで。」
モラ谷が逆に恐縮すると、
ジエンは「キニスンナ! *ナシノ チビシィガ ホシイモノ サッソク サガソウ!」
と言い、早速「コウエン ドコダ?」と ダッコ映像側に聞いてきた。
「モラ山君。われわれを案内してくれないか?」
モラ谷に促され、モラ山は彼女を見かけた公園に皆で出かけた。

公園に着くと、もうベビを売り切ったらしく、彼女は帰宅するところだった。
結構量が売れたのか、帰りに鮭と、しぃフード、栄養剤、と結構買い込んでいた。
5人は、母娘宅を特定し、近所にて聞き込みを開始した。すると、
「母親の腹を蹴り、流産させた」「懲りずにママが妊娠しちゃったの・・・」と言っていた
という証言が聞き出せた。

証言を聞いた後、彼らは、ダッコ映像に戻った。
モラ谷はモラ山に、ジュースを買いに行くように命じ、彼はコンビニに出かけ、
モナ川、モラ谷、擬古矢の3人は
社内で和んでいたが、ジエンは一生懸命メモをとっていた。

「ピル(21錠型OR28錠型)、血液検査・堕胎/避妊手術・(ケイサツ モミケーシ?)」

疑問を感じたモラ谷は、ジエンに聞いてみた。
「ジエンさん?(警察 もみ消し?)ってなんすか?」

「ベビ リャクーシュ (ユウカイ?) シテタラ モミケーシ ヒツヨウ!」

「おお。そうモナね。それに、ピルの件もかなぁ。
(懲りずにママが妊娠しちゃった)って言ってた件も
気になるモナ。あまり母親の妊娠を喜んでいないように、
思えるモナ。」

「ちびちゃん一人が、またーりできる、と言うところをアピールしても
 彼女の心をくすぐるかもしれないね。」

「政府が絡んでいる点で、結構自由がきくんだゴルァ。」

「それに、もうひとつ・・・(ニヤニヤ)」

(何か裏を感じるなぁ・・・・)

でも社長のことだし、楽しめるに違いない。モナ川はそう思い直した。
モラ山がジュースを買って帰社し、5人でジュースを飲みながら、
スカウトについての話し合いを持った。

モラ山はジエンのメモを見ながら感心していた。
(彼女のニーズにあっているかも・・・・ジエンさんさすがだ。)

「ジエンさん。抗精神薬系も彼女に提供って可能ですかね?」
モラ山がきくと「ウチハ クスリヤ バカニ スンナ!」 と、怒られてしまった。

「ごめんなさい。弟が擬古田さんの研究所の所員で、
 被験者を探してるんですよ。抗精神薬の依存について調べていまして、
 検体を欲しがっているんです。」

「奇遇だなゴルァ。うちの兄もだ。」

四方山話をしていると、そろそろ終電に間に合うかどうかという時間であった。
「終電が・・・」
「今日は解散して、明日はスカウトに行くぞ」
「ヨロシーク!!!!」

5人はダッコ映像を後にした。

11 名前: 3・スカウト 投稿日: 2003/11/05(水) 15:02 [ Q9ecaUgc ]
朝になった。
母娘宅近くに集まった5人は、ちびしぃの尾行をはじめた。
略取している。もの凄い勢いで略取している。
母親が留守にして、ベビだけ残ったダンボールから。
ベビだけ残された乳母車から。
「ベビの失踪」の噂も母親しぃのところに入っていそうなものだが、
無用心なのか、「私だけは大丈夫」という妙な自信からなのか、
かなり、ベビだけ残っている状態を5人は見ていた。
その隙を狙ってベビを*無しのちびしぃは、略取していた。
ちびの身のこなしが早かったのか、子沢山のしぃから全員いただいたのか、
瞬く間にちびの乳母車はすし詰めになった。

お昼にはちょっと早いだろうか?
ちびが公園に着いて2~3分後に、5人は公園に着き
物陰に隠れてベビ売りの様子を早めの弁当を食べながら見ていた。


「しかし、もの凄い勢いで略取していたモナ。
 なにか、復讐しているみたいな感じを受けるモナ。」

「復讐してるんじゃないか????」

「なぜだ ゴルァ???」

擬古矢がモラ山に聞いた。

「でぃを虐待している場所見たことあります?
しぃは、自分の違う姿のしぃ・傷ついた同族の姿を(醜い)と思っているみたいです。
彼女はおそらく、(奇形)とされて、陰口とか叩かれたことがあるんじゃないかな?」

「ああ、大耳のしぃが虐待されているところを助けたことがある。
 なんて連中だゴルァ、と思ったぞ。そうか、うん、納得できるな。」

「アノチビハ *ヲ アフォチビカラ ゴウダツ シタコトアル! 」

「怒りとか結構たまってるんじゃないすかね?」

2時間ほどたったころ、ちびしぃはベビを売り切った。

5人はちびに声をかけた。

「こんにちは。ちびちゃん。」

「ごめんなさい。もう売り切れなんです。
 お兄さんたちけっこう前から見てたでしょ?言ってくれれば、とっておいたのに。」

「全角でしゃべる賢いしぃちゃんは珍しいモナ。」

「これ、ママには言わないでくださいね。半角でしゃべらないとママに怒られるの。
 ところで、お兄さんたち、何の用ですか?」

「オマエラ ナニシテル メイシ ダセ!!」

ジエンに促され、5人は名刺を出した。

「ダッコ映像さんに、擬古田薬品さん?」

「ちびちゃんのセールストークを見込んで頼みがあるんだ。
 アフォしぃ(妊娠しぃも)、ちびギコ、ちびしぃをできるだけ多く集めたいんだよ。」

「彼らには記録映画に出てもらうモナ。」

モラ山、モナ川が言うと、「どんな映画ですか?」と彼女が聞くので、
擬古田薬品の2人が答えた。

「麻薬撲滅キャンペーンって知ってるか?
 ポスターだけじゃジャンキーは減らないって言うんで、記録映画を作ることになったんだ。
 (実際に麻薬に手を出すとこうなります)っていう具体例を出したほうが、わかりやすいって
 やっと政府も気づいたらしいんだ。遅いんだけどな。」

「ウチ ジッケンシセツ テイキョーウ!!」

「でも・・・・・・」

「お金は、ベビちゃんの売った日当よりちょっと多いくらいしか出せないけど、
ほかで、サービスするモナ。薬で必要なものがあれば、ちびちゃんにあげるモナ。
それと、略取したベビの、母親しぃが警察に訴えても、揉み消してあげるモナ。」

「お母さんの愛情がちびちゃんだけに注がれるように、
 避妊薬も出すぞゴルァ。」

避妊薬の言葉に、ベビの心は奪われてしまった。
「やらせて下さい!でも、情報がないと騙そうにも騙せないです。」
*のないちびしぃは、5人の申し出を受けることにした。

擬古田薬品の2人は感心して、
「ミアゲタ チビ イイ!!!」
「研修が必要か。明日朝10時に迎えに来る。 
研修期間中は、1日5000円出そう。それから、ダッコさんと
契約は詰めることにしよう。」

サイタマ色の太陽が沈むころ、6人は別れた。

19 名前: 4・葛藤 投稿日: 2003/11/08(土) 17:58 [ aZEDM6dY ]

夜、ダンボールの中でちびは一人葛藤していた。

(5人の申し出を受ければ、同族を売ることになる・・・・)

ちびの心の中で天使は囁いていた。
「ちびちゃんは、お友達を虐殺厨に売るなんてことはしないわよね?」

悪魔も囁いていた。
「友達なんていないじゃん。(キケイ) ってあんた、馬鹿にされてたでしょうが。
それに、あんたの母親、際限なく子供こさえるかもよ?あんたの姉妹に
愛情、取られるんじゃないのぉ?避妊薬くれるって言ってるんだからさぁ。
売っちゃえばいいのに。」

「キケイ キケイ キケイ キケイ キケイ キケイ キケイ・・・・・・・」

ちびの頭の中で、キケイの3文字が頭の中に渦を巻いていた。
*がないだけで、陰口をどれだけ叩かれたか。
同年代の、同族にどれだけ馬鹿にされたか。
母親は、弱弱しく微笑んだだけで、馬鹿にした同族たちに何もしてくれなかった・・・・

(復讐してやるんだ。同族に。)

心の中の悪魔が、天使の首を鎌で切り取り、彼女に微笑んだ。
安らかな寝息を立てている母親の横で
彼女は、邪悪な微笑を浮かべた。

20 名前: 5・迎えの車中で 投稿日: 2003/11/08(土) 17:59 [ aZEDM6dY ]
10時になる数分前に、ちびしぃは待ち合わせ場所の公園についた。
数分後、擬古田薬品の社名が書かれた乗用車に乗って、擬古田が現れた。

「おはよう、ちびちゃん。」
「おはようございます。擬古矢さん。」
「まぁ、乗って。中で内容を説明するから。」

ちびしぃが車に乗り込んでしばらく世間話をした後、
(彼女の愚痴をほとんど擬古矢が聞いているようなものであったが)
擬古矢は説明をした。

「研究所に着くのは、1~2時くらいになるよ。それから軽い食事をしようね。
 ダッコさんたちは、先に研究所に着いてる。3時ぐらいに
 映画に関係の無い部署についての説明を始めるよ。妊娠しぃを扱ってる部署になる。
 実際に見てもらうことにもなるけど。」
 
「妊娠しぃたちの部署?」

「ちびちゃんのトークのネタに、そこも見学してもらおうと思うんだ。
妊娠しぃを連れてきてくれたら、1匹あたり2000円出そう。
ところで、ちびちゃんはグロいの平気?」

「ジシン ナイデス・・・・・」

「そうか。じゃあ、コンビニに行こうか。ビニール袋を置いてるんだよ。そこ。」

2~3分後に、コンビニに着くと、擬古矢は、ビニール袋と、アイスクリーム・角砂糖を買ってきた。

「ここでも少し食べたほうがいいよ。あそこに行ったら、もしかしたら吐いちゃうかもしれないから。
向こうで食事しながら、詳しい妊娠しぃの部署の説明をするけど、あそこでは、奇形児を
見ることになるんだ。だいじょうぶかな?けっこうグロかも・・・・」

「スコシ カクゴスル ジカンヲ クダサイ・・・・」

「落ち着いたら言ってね。」

ちびは、少し擬古矢に待ってもらっていた。
パニックを起こしたのだろうか?呼吸が少し荒い。
擬古矢は、「パニック・アタックかな?」とビニールを渡し、
ちびに袋を口に当てて、呼吸をするようにいった。

(キケイって、どんなの?私みたいな*が無いベビちゃん?
そこのベビちゃんはママに捨てられたベビちゃん?)

(キケイのベビちゃんたちのママも、何にもしないのかな??
 ちびが馬鹿にされても弱弱しく微笑んでたママみたいに・・・・)

しばらく、ちびは気持ちが揺れていたが、
だんだん落ち着きを取り戻してきた。霧が少しづつ晴れてくるみたいに・・・・

(キケイ キケイ * ナシノ キケイ ・・・・)

弱弱しく微笑むだけで、私のことを馬鹿にした同族に何も言い返せなかった母、
コウビとダッコしか考えられない母。
助けてくれなかった。助けてくれなかった・・・・・・

また、ちびの心に囁く声が聞こえた。

(アフォしぃががよく使う「虐殺厨」が減るだけじゃん。
あいつらだって、でぃちゃんや(キケイ)を虐待や
虐殺してるし、あたしだって・・・・・
それにお金も入るし、一石二鳥だよねぇ。)

「覚悟は決まった?」

「はい」

「さっきは息苦しかったの?」

「少しめまいがしたんですが、落ち着きました。大丈夫です。
袋を口に当てて呼吸してるうちに、落ち着いてきました。」

「そう。社に戻ったら、抗不安剤を処方してもらおう。
じゃ、行こうか。」

車を走らせてから、2~30分後、研究所に着いた。

21 名前: 6・研究所にて 投稿日: 2003/11/08(土) 18:01 [ aZEDM6dY ]
研究所につくと、ダッコ映像のモラ谷・モラ山・モナ川が二人を出迎えた。
擬古矢は「抗不安剤をもらいに行ってくる」と中座すると、
3人がちびに話し掛けてきた。

「体の調子でも悪いモナ?契約はすこしまったほうがいい?」
「擬古矢君から説明を受けて少しびっくりしちゃったかな?」

「大丈夫です。もう落ち着きました。」

「今日は妊娠しぃの部署の見学をするんだって。それと、焼却炉の説明も」

「焼却炉????」

「うん。麻薬中毒のとことか、妊娠しぃが頃しちゃったベビとかで
遺体が出るでしょ?それを焼却するんだ。」

「頃しちゃうの?自分の子なのに?」

「これから見る場所について、擬古矢君から説明を受けたよね?そこで生まれたベビを母親は
頃しちゃうんだよ。まず100%といっていい。育てている母親なんていないよ。」

「ちびちゃん。抗不安剤をもらってきたよ。1錠寝る前に飲んで寝てくれって。」

擬古矢が抗不安剤をもらって戻ってきた。
「食事にしないか?4人とも。」

「食事しながら、妊娠しぃについての説明やら、契約についての説明やら
話そうか?どうする?」

「食事しながらの妊娠しぃの部署の説明は、ちときついっす。社長。
契約を先にしましょうよ。」

「部署の説明は食休みしてからだ。普通でもきついと思うぞ。」
モラ山の意見に擬古矢が同意すると、

「そうモナね。擬古矢さん。食堂に連れて行って欲しいモナ。
いいかげん、腹が減ったモナ」

「モナ川さん。そうですね。行きましょう。」

5人は食堂へ向かった。

22 名前: 7・契約 投稿日: 2003/11/08(土) 18:05 [ aZEDM6dY ]
‐‐‐‐‐‐‐契約書‐‐‐‐‐‐‐

ちびギコ・ちびしぃ・しぃ  1人 1000円
妊娠しぃ    1人 2000円

もし、アフォしぃではないしぃを連れてきた場合
罰金  1500円

------------------------------------------------------

全員、食事をし終えて15分ほど経った頃であろうか。
モラ谷、擬古矢は、紙をちびしぃに差し出した。

「ちびちゃんは、アフォしぃではないしぃちゃんと会った事あるモナ?」

モナ川に聞かれたちびは、うなずいた。
「私が、*が無いのを同族に馬鹿にされたとき、お友達に助けてもらったの。
ちびにできた初めてのお友達。でもね、大勢のアフォに2人とも殴られちゃったけど。
お友達と一緒に家に帰ったの。お友達の家、しぃの家と近いのね。
お友達の家に着いたとき、彼女のお母さんがびっくりしてたから、
私がわけを話したのね。しぃちゃんに助けてもらいました。って。ありがとう。って。」

「お友達のママは、なんて言ってた?」

「当然のことをしただけだって。お友達は、いい子だってダッコされてたの。
こんな人がお母さんだったらなぁ。って、あの時思った。」

「そういう、優しいしぃちゃんを連れてきてはだめだよ。もし連れてきたら、罰金として
ちびちゃんに払うお金から、1人1500円づつ引くからね。誤魔化してもだめだよ。
ここに連れてくるときに、調べてから連れて行くからね。」

モラ山に念を押されて、ちびはうなずいた。

「モラ山君。そう、緊張させなくても。ちびちゃん、簡単なことモナ。
 ちびちゃんを馬鹿にした連中を全員連れてくればいいモナよ。」

モナ川に言われたちびは、安心したのだろう。笑顔が出てきたように見える。
「ちびちゃん。念のため、おテテに墨を塗ってここに押して欲しいんだ。
 僕たちと、ちびちゃんの、お仕事の契約書だよ。」

ちびは、即座に手のひらに墨を塗って手形を押した。

32 名前: 8・レモナ棟 投稿日: 2003/11/10(月) 13:44 [ hGDzyKlI ]
>>2 >>9-11 >>19-22 の続き。

「皆落ち着いた?レモナ棟について説明してもいい?」
擬古矢の問いに、みんなうなずいた。
少しの食休みの後に、擬古矢が説明を始めた。

「ちびちゃん。羊さんしってる?」

「馬鹿にしないでください。」

ちびが少し怒った口調で言うと、擬古矢は謝罪し、

「バイケイソウって言う植物があって、それを食べた羊たちにある奇形が見られたんだ。
これはアメリカの話で、日本では、そういった例はまだ出てないんだけど。
わが社はバイケイソウを北カリフォルニアから輸入して、
エキスを抽出することに成功したんだよ。で、そのエキスを妊娠しぃに注射したら、
同じ奇形がベビに発現した。バイケイソウエキスを錠剤にして、
すでにサンプルができているんで、経口投与する適量を実験したいんだ。」

「それで妊娠しぃが必要なんですね。ところで、奇形ってどんな?」

「まぁ見てもらえればわかるよ。それと、レモナ棟には、産婦人科のお医者さんもいるから、
お母さんの相談もするといいよ。ピルの件はすでに話をしてある。お医者さんの説明を受けてから
ピルを決めていいんじゃないかな。それと、堕胎手術、避妊手術が必要になったら俺に言ってくれ。
スケジュールを決める関係もあるんでね。」

「はい。」

「じゃあ、みんな行くモナ?」

モナ川の言葉にみなうなずき、エレベーターに乗った。

33 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/11/10(月) 13:57 [ hGDzyKlI ]
7階の部屋に、レモナ棟があった。5人は、エレベーターから降りると、
タカラギコ&ジサクジエンが「分娩室」と書かれた部屋から、黒いビニールを持ち、
血まみれになって出てきた。タカラギコは
「ああ、あのちびちゃんですね。少ししたら会いましょう。」
と、挨拶をして出て行った。

分娩室からは母親しぃともう1人の女性の言い争う声が聞こえてくる。

「ベビちゃんに、なんてことしてるのよ!!!!」

「シィィィィィ アンナノ ワタシノ ベビチャンジャ ナイワヨ!!!!!!」

「現実を見なさい!!!自分のベビを床に投げつけて、頃してしまって。
あの子を育てることもできたのに、あなたは頃しちゃったの。
自分のことを棚にあげて(ギャクサツチュウ)ってよく言えたものね」

「ベビハ マタツクレバイイ。 ナンニンデモツクレルモン!!」

「もう無理よ。アハハハ。あなたは、ここから別の場所に移されるんだから。
もう、出られないんだから。だれか、この人を、MMG棟に移してね。
止血処置は済んでいます。ギコ君にモルヒネの経口投与をお願いしてください。」

「はい、レモナ先生」
「来なさい。」 

二人の看護士のモナーに母親(だった)しぃが連れて行かれる途中、
ちびたちとすれ違った。母親だったしぃはちびを見つけると、
「アハハハ キケイノ チビチャン イキテテ ハズカシク ナイノォ?」
と、ちびを馬鹿にした。ちびは殴り倒してやりたくなったが、我慢していた。
3人が見えなくなった頃、モラ山、モナ川は感心して、
「ちびちゃん。よく我慢できたモナね。」
「漏れなら、殴り倒したけどなぁ。ちびちゃん。よくがんばったね。」

34 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/11/10(月) 13:59 [ hGDzyKlI ]
モラ山がちびをほめたすぐ後に、「擬古矢君?」という声が聞こえた。
「先生、お邪魔してま~す。どこに案内すればいいですかね?」
「あら、かわいいちびちゃんじゃない。産婦人科医のレモナです。はじめまして。
握手はちょっと待ってね・・ちょっと身支度を整えてくるわね。擬古矢君、診療室で
待ってもらってて。そこで説明もしてね。」

分娩室の隣の部屋が診療室になっている。1人用、2~3人用のソファーがあり、
ちびは一人用のソファーに座っていた。擬古矢は丸椅子に、ダッコ映像の3人は
2~3人のソファーに座って待っていた。

医師の机には、ホルマリン漬けのベビの遺体が容器に入り、浮かんでいた。
まるで案内嬢のようだった。
観察してみると、ベビの目が1つしかなく、鼻や口もどこにあるかわからない。

「これが、ここで見られるベビの奇形。単眼症って言うんだ・・・」
「そうなんですか・・・・バイケイソウを食べてた羊も、こんな奇形があったんですか?」

擬古矢が答えを言う前にレモナが現れ、
「そうよ。サイクロパミンって言う毒素のせいなんだけどね。胎児期のコレステロールの
輸送を阻害することにより神経系に著しい障害を引き起こすんだって。
まだ、コレステロールの発生における役割は明らかではないんだけど、
マウスの研究によればsonic hedgehog という遺伝子がこれに関連しているみたいなの。
どうもしぃも、同じみたいね。」

「わかりました。ところで。バイケイソウの錠剤を見せてもらえます?」
レモナは緑色の錠剤を見せると、ちびは思わず「ベタベタかも・・・・」とつぶやいた。
「やっぱり??? ハハハ。素直ねぇこの子。
 擬古矢君。カプセルにするか、錠剤の色を変えるか検討したほうがいいわね。
 ちびちゃん。貴重な意見をありがとう。」
レモナは握手をちびと交わした。

「話は変わるけど、ピルについての説明をしましょうか。
ちびちゃんのママはお薬って、飲み忘れするほう?」

「飲みません。味が嫌なんだって。本当こどもみたいで嫌になります。」
「ハハハハ・・・」

これくらいの粒なのよ。と、レモナはちびにピルのシートを見せた。

「毎日飲む薬なんで、飲み忘れがあると困るの。
21錠型は21錠飲んで7日休むのね。休んでいる7日の間に消退出血がきます。
28錠型は、毎日飲み続けるの。
ここに1って書いてあるでしょう?ここから初めて、番号順に順番に飲ませてね。
ホルモンの量が薬の色によって違うのよ。最後の色にはホルモンがありません。
飲み忘れをしないための偽薬です。最後の色の錠剤を飲んでいる時に
消退出血が来ます。
 これは21錠型・28錠型両方ともなんだけど。必ず時間を決めて飲ませてね。
1日一回ね。今日は簡単に説明をしたけど、細かな説明はこの次でいいかしら?
どのピルがママの体に合うかまだわからないし。いろいろ試してママに合うものを
探しましょうか。」

レモナの説明にちびはうなずくと、
「今日は、いい意見をくれたお礼にプレゼントするわね。どっちがいい?」
「えっ?」
「お礼に今日はピルをあげる。」
「レモナ先生。ありがとう。でも、母が妊娠してるかもしれないんです。」
「そう、それなら、近いうち連れてきて頂戴。それから決めても
遅くないわね。」
「はい。」ちびはうなずいた。

そろそろ時間も時間ですしと、擬古矢がレモナに告げた。
「じゃあ。さようならかしらね。ちょっと名残惜しいけど。」
「レモナ先生。ご説明ありがとうございました。」
ちびが礼を言い、4人は頭を下げると、
レモナは「いつでもいらっしゃいね。お礼はさせて頂戴ね~。」
とちびに言いながら、5人を手を振って見送った。

ちびは何度も、レモナに頭を下げて
4人とともに レモナ棟を あとにした。

35 名前: 9・焼却炉 投稿日: 2003/11/10(月) 14:01 [ hGDzyKlI ]
エレベーターの中でちびは、
「ウマレタダケ シアワセナノカナ・・・・」と呟いた。

モラ谷は、
「ちびちゃん。漏れは親になってないんでわからないけども、
親になるって言うことは、親になる責任もついてくるってことだと思うんだ。
ちびちゃんが馬鹿にされてるのを見てて、お母さんは君の同族に怒ってくれたか?
普通なら怒るぞ。丸耳の子とその子のお母さんを知っているけども、
自分の子供が丸耳なのををアフォしぃに馬鹿にされてるのを見つけた
その子のお母さんは、アフォしぃをぼこぼこにしていた。
漏れ、そのお母さんを見て母親の強さって言うのを感じたぞ。」

「それに、母は強しって言う言葉があるモナ。母親はいろんなものを背負って
 強くなっていくと思うモナ。」

「そろそろつくぞ。」擬古矢は到着を告げる。

チン。
地下1階に着いたことを知らせる音が鳴った。5人が降りると、
焼却炉とかかれたドアの向こうから、やけに陽気な歌声が聞こえる。

不謹慎で、陽気なレクイエムだ。

♪奇形を殺(や)ったの しぃちゃん しぃちゃん
 自分のベビなの  しぃちゃん しぃちゃん
キモイし ウザイし  はにゃにゃにゃにゃ~ん
マターリ したいし はにゃにゃにゃにゃ~ん♪

「カエウタ ハヤッ! ウマイカ ヘタカハ ベツ!」

「ジエンさん。 きびしいっすよ~。」

能天気なやり取りも聞こえて来る。

擬古矢がノックすると、「ドゾー」という声がしたので、
5人は中に入った。
タカラギコは焼却炉の中に何かを入れていた手を休め、
ジサクジエンはペダルのようなものから降りた。

「作業中悪いな。」

「いいえ~。一旦灰を集めようと思っていたんで、気にしないでください。」

「ソレニ イップク シタカッタ!」

焼却炉の隣に、休憩所がある。案内された5人は
椅子をタカラギコに勧められた。7人が着席すると、
擬古矢が説明を始めた。
「ここは、遺体を焼却している。今、燃やしてたのは、レモナさんのところの、
頃されたベビだよ。1回にベビ・ちびは20匹ぐらいまとめて焼却してるらしい。」

タカラギコが続けた。
「焼却炉なんだけど、冷蔵庫もあるんです。
 遺体を保存するんですって。変でしょ?ここ。」

「遺骨ってどうしてるんです?」ちびは疑問を口にした。

「コプーンニスル! 」

「MMG棟からの遺骨は粉にして、麻薬の増量剤にするようです。
MMG棟の人たちが詳しいんで、彼らの説明を聞いてもらえると
ありがたいんですけど。」

「ベビノ コプーン アツメタバカリ!」

「レモナさんの所のベビの遺骨は、まだ少量しか集まってないんです。
成分は、これから調べるらしいです。」

「じゃあ、遺骨はここから出ないモナ?」

「ベビの遺骨はわかりません。成分によりますね。MMG棟の遺骨は
 ここから出ることはありません。」

「そうなんですか。一種のリサイクルですね。」

擬古矢は外を見ると、もう夜になっていた。
「ちびちゃん。今日の研修は終わりだよ。ご飯はどうする?」

「車の中と、こっちで十分いただきました。お腹すいてないの。」

「そう。お薬を飲んで、早めにお休み。明日は
 MMG棟の研修になるからね。」

また、エレベータで移動し、3階に着いた。
ここは、宿舎になっているようだ。廊下を歩きながら
いろいろと説明を受けた。 売店、お風呂、各人の部屋・・・・

一室の鍵を擬古矢に渡された。
「今日はここで眠りなさい。」中に入ると、擬古矢はドアの向こうで
「じゃあ、明日迎えに来るから。」と言い、ちびと別れた。

ちびはふかふかのベッドの中でもらった薬を飲み、
電気を消し、眠りについた。

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バイケイソウ&単眼症に関する記述は
したらばの グロラボ掲示板・「奇形児を語ろう」スレの
5さんの書き込みを元に検索しました。

ピルに関する記述は
自分のかかりつけの医者の説明を
引用しています。(人間様ので申し訳ない)

増量剤に関する記述は
山口 椿さんの著書より引用しました。

幻冬舎 アウトロー文庫って
もしかして、成人指定?

次回、ちびちゃんの研修 2日目編にいきます。

次回:擬古田薬品 (2)