流石兄妹の華麗なる休日~百ベビ組手~ 後編 (2)

Last-modified: 2015-06-27 (土) 23:21:15
551 :へびぃ:2008/05/05(月) 02:29:08 ID:???
「えと、じゃあ説明しますね。と言っても、そちらのお兄さんはもう解ってしまわれたようですが・・・」

1さんが苦笑しながら続ける。

「やり方は簡単です。あそこにぶら下がっているしぃの腹部を、思いっきりどついて下さい。
 どんな方法をとっても結構です」

「え?え?えっと、つまり・・・」

妹者が考えながら言った。

「あのしぃのお腹を、叩いたり蹴ったり、すればいいってことなのじゃ?」

「その通りですよ、お嬢さん」

1さんがまた笑顔を見せる。

「それが、どう『おみくじ』と関係があるのじゃ?」

妹者が首を傾げたが、弟者が言った。

「まあ、やってみればわかるさ。ほら妹者、お前が一番だ」

「わ、わかったのじゃ!」

妹者は一旦考えるのを止め、吊り下げられたしぃの内の一匹に向き直った。

552 :へびぃ:2008/05/05(月) 02:29:31 ID:???
「ハニャ!ナンナノヨ!シィチャンニ ナニカシタラ ユルサナインダカラネ!」

「ダッコシナサイヨ!ダッコダッコダッコ!」

「コンナンジャ ベビチャンモ ウメナイジャナイノ!」

「ソウヨ!シィチャンタチハ カワイイ カワイイ ベビチャンヲ ウンデ マターリスル ギムガアルノヨ!」

「ハニャーン!ハニャーン!」

「う、うるさいのじゃ・・・」

妹者が耳を軽く塞ぐ。
弟者が「まあまあ」と言いながら、妹者の肩をポン、と叩いた。

「これから黙らせてやればいいじゃないか。思いっきりやってこい!」

「りょーかいなのじゃ!」

妹者は手を耳から離すと、気合の入った表情を作った。
そして未だハニャハニャと騒ぐ左端のしぃを向き、いきなり走り出した。
ちなみに妹者はかなり足が速い。50m走を7秒3で走る。クラスどころか学校一の俊足だった。
彼女の体育の成績は、1年生の1学期から常に『5』だ。

「ハ、ハニャ!ナンナノヨ!コッチ コナイデヨゥ!」

妹者の剣幕に、しぃが怯えの表情を見せた。

「ひぃぃぃぃぃっさつぅぅぅ・・・」

妹者が叫びながら、あっという間にしぃとの距離を詰めた。
そして、あと僅か2,3mの所で、妹者は跳躍した。

「妹者ドロップ、なのじゃぁぁぁぁっ!!」

妹者の気合の叫び。そして―――

553 :へびぃ:2008/05/05(月) 02:29:48 ID:???
ドギュゥッ!!

思いっきり肉を打ったような、それでいて何かが圧迫され、軋むようなくぐもった音がした。
妹者の両足が、深々としぃの膨らんだ腹部にめり込んでいた。何とも華麗なドロップキック。

「グギュゥゥゥゥ!?」

しぃが眼球が零れ落ちそうなほど大きく目を見開き、これまたくぐもった悲鳴を上げる。
しかし、妹者の攻撃はこれで終わらなかった。
片膝をついて着地した妹者は素早く立ち上がると、左手を右手に被せるようにし、肘を広げた。
しぃに対して横を向くような形だ。
その瞬間だった。妹者が、動いた。

「ひじうちっ!!」

ドムッ!!

「ゴギョォオォォォ!!?」

叫びと共に放たれた肘打ちは、これまたしぃの腹部に深々と突き刺さった。
異様な悲鳴を上げるしぃ。
さらに妹者は、スカートの裾を翻しながらその場でくるりと一回転。

「うらけんっ!!」

ドグチュッ!!

「オギィィィィィ!!?」

回転しながら放たれた見事な裏拳。しぃの横腹に強烈な一撃。
この時から、打撃された際の効果音に、何やら柔らかいものが潰れたような音が混じりだした。
さらにさらに。妹者は裏拳ついでに、再びしぃを正面へと見据えた。
肘打ちの状態から270°回転した形だ。
間、髪入れず、妹者の右腕が唸りを上げた!

「せいけんっ!!」

ドブチョッ!

「アギィェェェェェェッッ!!!?」

妹者の正拳突きは、これまたしぃの妊娠っ腹にクリーンヒット。
聞くに堪えない悲鳴を上げ、身悶えするしぃ。のた打ち回ろうにも、ぶら下がっているのだから出来る筈も無い。
だが、まだ終わらない。
妹者は突き出した右手を戻すと、最後の攻撃を繰り出すべく、息を大きく吸った。

「ジィィ、モ、・・・モウ、ヤメ・・・」

しぃが微かに呻くような声を上げたが、その瞬間の妹者の叫びに掻き消された。

「とぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁ、なのじゃっっ!!!!」

妹者の必殺の蹴りが、しぃの腹部に詰まった、小さ過ぎる命を完全に叩き潰した。



グブチャッッ!!!!

554 :へびぃ:2008/05/05(月) 02:30:09 ID:???
「ギュァァァァァァァァァァァァァァッッ!!!!??」

しぃの醜い悲鳴が木霊する。そして、苦痛を既に通り越したような凄まじい表情を浮かべた。

「・・・た、たくましいお嬢さんですね・・・」

呆気に取られた1さんが、ははは、と笑いながら言った。兄者と弟者は顔を見合わせた。

「・・・弟者よ」

「・・・なんだ、兄者」

「俺達が思っていたより、妹者の中の母者の遺伝子は濃いようだな・・・」

「・・・ああ、俺もそう思う。末恐ろしいな、これは・・・」

ぼそぼそと会話を交わす2人の元へ、素晴らしく晴れやかな表情の妹者が駆け寄った。

「い、妹者・・・楽しかったか?」

兄者が訊くと、妹者は今現在のしぃとは対極的なとても爽やかな笑顔を浮かべて、

「うん!スッキリそーかい、なのじゃ!」

そう言いながら、頬を伝った汗を手の甲で軽く拭った。
ニコニコと笑う妹者はいつもの妹者で、先程までの武道家を思わせるような気迫は微塵も感じられない。
と、その時だった。

「イギィィィィィィ・・・ア・・・ウ、ウマレルゥゥゥ・・・」

妹者にフルボッコにされたしぃが、呻くような声を上げていた。凄まじい衝撃を腹部にあれだけ何発も叩き込まれれば、流石に産気づくというものだ。

「おや、お御籤の結果が出ますよ?」

それに気付いた1さんが3人に向かって言った。

555 :へびぃ:2008/05/05(月) 02:30:25 ID:???
「ハニ゙ャァァァァ・・・ア゙ア゙ァァァァァ・・・ジィィィィィ!!」

先程までは丸く大きく膨れていたしぃの腹は、今やボコボコだった。
そこここに隆起や凹みが見られ、皮が剥けていたり、痣が出来てたり。
中に詰まっているのは、言うまでも無くベビしぃだ。無論、とても柔らかい。
あの腹の変形具合を見ずとも、中身がどうなっているかは容易に想像が付いてしまう。

「ハギャァァァァァン!!ウギャァァァァァァ!!」

しぃの悲鳴が段々と大きくなっていく。妹者は再び、耳を軽く塞いだ。
4人が固唾を飲んで見守る中、ついにしぃはその時を迎えた。

「アァァァァァ・・・ハニャァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

その絶叫と共に、しぃの股間から何かが溢れ出した。
『それ』は見た目にはまるでヘドロのような流動性の物体。
そして―――

グチャッ!!

―――落下。吊り下げられたしぃの真下に、『それ』は落ちた。

「ギィィィィィ・・・ジギャァァァァァァ・・・」

不自由な手足を蠢かせ、尚も力むしぃ。股間からは、まだまだその物体が溢れ出てくる。

ビチャビチャビチャッ!!

出てくる傍から、次々と落下していく物体。すぐに、辺りを異臭が漂い始める。

「ハギャァァァァァァァ!!」

まるで断末魔のような悲鳴を上げて、そのしぃは腹に残った物体を全てぶちまけた。

ベチョッ!

最後にそう音を立てて、『それ』の落下は止まった。

556 :へびぃ:2008/05/05(月) 02:30:51 ID:???
「シヒィィィィィィィ・・・シヒィィィィィィィィィ・・・」

肩で息をするしぃ。激痛を伴った『出産』に、殆どの体力を奪われたようだ。
そのしぃの周りに、4人が駆け寄った。勿論、落下した『それ』を確かめるためだ。

「うえぇぇ・・・気持ち悪いのじゃ・・・」

妹者が口元を手で押さえた。当然のリアクションと言えるだろう。
そこに落ちていた物―――今そこで吊られているしぃの、腹の中にあったもの。
つまり、ベビしぃ―――いや、正確には、『ベビしぃになるはずだった物』―――。
―――ヘドロか、はたまた何かの肉のミンチか。
正直な話、何も知らなければ、それにしか見えない物体。
赤や茶色を中心とした色彩の、半固体、半液体の流動性の物体。
所々にアクセントを加えるように混ざる白色は、骨や歯だろう。また、非常に分かり難いが、耳の様な物も確認出来る。
そんな異形の物体の中に、兄者はベビしぃの出来かけの目玉を見つけた。それだけでは無く、その不気味な目玉とまっすぐ目が合ってしまい、思わず兄者は素早く目線を逸らした。
『百ベビ組手』や、先刻の『景品付きベビしぃくじ』を体験した3人が見ても、最早ベビしぃの原型は殆ど留めていない。また、これが何匹分のミンチなのかも。
しかし、こういった仕事に慣れているらしい1さんは、「ひい、ふう、みい・・・」と数えていく。
そして数え終わったらしい彼が、妹者に笑顔を向けた。

「お疲れ様でした。全部で6匹、腹の中にいたようですね」

「ろ、6匹も・・・なのじゃ?」

「おいおい、6匹だって?」

「いくらアフォしぃでも、6匹も一度に生むってのは、かなり珍しいんじゃないか・・・?」

驚きの表情を浮かべる3人。だが、それも頷ける。
いくらしぃの繁殖力が凄まじいとはいえ、一度に生む数は平均的に2~3匹が多い。4,5ならまだしも、6匹も一度に生むというケースはかなり珍しいのだ。

「6匹もいたというのは、とても珍しいですからね・・・普通のお御籤で言えば、これは確実に大吉、でしょうな」

1さんがそう告げると、妹者はパッと顔を輝かせた。

「ホントなのじゃ!?」

「良かったな、妹者」

弟者がそう言うと、1さんはさらに続けた。

「徹底的に叩き潰されてますね。これは健康運が高まっている証拠なんですよ」

「うん!元気もりもり、なのじゃ!」

「まあ、あれだけ暴れられるならな・・・」

兄者の苦笑。

「しかも、目玉が潰れずにちゃんと残っている。これは金運が素晴らしいですね」

1さんの言葉を聞き、妹者が何かに気付いたような表情を浮かべる。

「そういえば、ゲームが当たったのじゃ!」

そして、先刻じぃから貰ったゲーム機を見せると、1さんは満足げに頷きながら言った。

「おお、それはそれは。あながち間違っていないでしょう?」

「それどころか、バッチリ当たってるよな・・・」

弟者が驚き半分、苦笑半分といった表情を浮かべた。
はははは、と笑いあう4人。その背後で、

「シィィィィィ・・・ハッ!ベビチャン!シィチャンノ カワイイ ベビチャンハ!?」

半ば放心状態だったしぃが、目を覚ました。

557 :へびぃ:2008/05/05(月) 02:31:16 ID:???
「あ~あ。目を覚まさない方が幸せだったかもしれないのにな・・・」

兄者がぽそりと呟いた。
と、1さんが「ベビチャンベビチャン」と騒ぎ立てるしぃに歩み寄り、言った。

「ベビちゃんに会いたいですかな?」

「ハニャ!サテハ アンタガ シィチャンノ ベビチャンヲ カクシタノネ!?
ハヤク コノ カワイイ シィチャンノ カワイイ ベビチャンニ アワセナサイヨ!アトダッコ!」

憮然とした表情でしぃが捲し立てる。最後にきっちりダッコを要求するのがなんとも。

「・・・わかりました。そこまで仰るのなら・・・」

1さんがそう言いかけた時、弟者が1さんにステンレストング(要するに空き缶拾いに使うアレ)とスコップ、そしてバケツを渡した。テントから持って来たらしい。
これで、直接手で触れることなく、ベビしぃ―――しぃの真下に散乱する物体―――を集め、持ち上げる事が出来る。

「お、これはどうも。―――それじゃ、暫しお待ちください」

「ハヤクシナサイヨ!マッタク コレダカラ カトウAAハ テギワガワルクテ コマルワ!」

減らず口を叩くしぃをスルーし、1さんは吊るされたしぃの体の下に潜り込んだ。
そしてスコップを駆使し、素早くドロドロした残骸を集めていく。

「妹者も手伝うのじゃ!」

妹者がそう1さんに言うと、1さんは笑顔を投げかけながら、

「有難う御座います。しかし、お気持ちだけで十分ですよ。ここは私にお任せを。
 そのお可愛らしいお洋服が汚れてしまうかも知れませんし、ね?」

優しい口調で答えた。その手には、彼の口調にはまるで似合わないおぞましい物体。
最後に、ギリギリで形を保っているように見える、ベビしぃの頭蓋骨のような物をトングでバケツに放り込み、1さんの作業は完了した。
残骸があった場所には血や羊水等の体液によって作られた染みが生々しく残っており、まだ肉片も所々に残っていたが、殆どの残骸がバケツの中へと移植されていた。
ふぅ、と一息ついてから、1さんはしぃに声を掛けた。

「―――お待たせ致しました」

558 :へびぃ:2008/05/05(月) 02:31:37 ID:???
「ズイブント ジカンガ カカッタジャナイノ!」

文句を垂れるしぃに対して、1さんは笑顔を作る。

「申し訳御座いません。あなたのベビちゃんがあんまり可愛らしかったので、つい見とれてしまいまして」

「フン!コノ カワイイシィチャンノ ベビチャンナンダカラ トウゼンヨ!アンタミタイナ カトウAAニ ジロジロミラレタラ ベビチャンノ キョウイクニ ワルイワ!
・・・マア、イイワ。シィチャンハ ウチュウイチ ヤサシイカラ ユルシテアゲル。ハヤク ベビチャンヲ ミセナサイ!」

好き勝手に喚き散らすしぃに対し、妹者が怒りの表情を見せた。

「む~。1さんにあんな事言うなんて、許せないのじゃ!もう一回、妹者ドロップを・・・」

そして、しぃに向かって行こうとする妹者を、弟者が止めた。

「ま、まあ待て妹者よ。ここは1さんに任せようじゃないか」

「・・・わかったのじゃ」

そう言って彼女は、素直に再び弟者と兄者の横へ戻った。
当の1さんはと言うと、好き勝手に言われながらも表情1つ変えず、しぃに見えないように、バケツを自分の傍へと寄せていた。

「それじゃ、今お見せしますからね」

1さんの言葉に、

「ハニャーン♪ベビチャン、イマ オカアサンガ ナッコシテ アゲルカラネ♪」

しぃの表情が緩む。先程から「チィ」や「ナッコ」の一言も聞こえないのに、まるで疑っていない。
1さんがバケツを持ち上げる直前、彼は3人の方を向き、ウインク1つ。

「は~い、ごたいめ~ん!」

「ハニャーン!ベビチャ・・・」





シィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!!???????

559 :へびぃ:2008/05/05(月) 02:32:21 ID:???
1さんがしぃに向かって差し出した、例の物体入りのバケツ。
その中身を直視したしぃは、『百ベビ組手』の観客達全員分の歓声並みの絶叫を上げた。

「ナ・・・ナッ、ナッ・・・ナニヨ、コレェェェェェェェェェ!!!?」

「何って・・・あなた、自分で言ってた事も忘れてしまわれたのですか?あなたのベビちゃんですよ」

1さんがしれっと答える。しぃはまだ信じられないといった表情で続けた。

「ウ、ウソヨ、ソンナノ!!シィノ ベビチャンガ コンナ グチャグチャノ モノナワケ ナイジャナイノ!!!!」

「そう言われましても、私達はちゃんと見てたんですよ。あなたが、これを産み落とす所を」

「ソ、ソンナ・・・ウソ・・・ウソヨ・・・・!ド、ドウシテ・・・」

絶望の色がありありと浮かぶ表情のしぃ。声が震えている。

「いやあ、もうすぐ生まれるって時に、あれだけお腹に攻撃されたら・・・必然的にこうなるでしょうねぇ」

「!!!!」

この時、ようやくしぃは妹者に攻撃された事を思い出したらしく、妹者をキッと睨み付けた。
対する妹者もむっとした表情を作り、握った右手を左手に打ちつけた。彼女も、先刻抱いた怒りを忘れてはいなかったようだ。

パンッ!!

小気味良い音が響くと、しぃはビクリと体を竦ませた。どうやら、その時の耐え難い苦痛も一緒に思い出したようである。

「ハ、ハニャ・・・」

すっかり意気消沈した感のあるしぃに向かって、1さんはさらに続ける。

「・・・というわけで、これがあなたのベビちゃんです。お気の毒でしたね」

すると、しぃが顔を上げた。

「ウ・・・ウソヨ!ソンナノ ゼッタイニ ウソヨ!!シィチャンノ ベビチャンガ アンナ ドロドロニ ナッタナンテ、シンジナイワヨッ!!」

認めたくないらしいしぃが、悪あがきにしか聞こえないような口調で1さんに迫った。

「はぁ・・・まだそんな事を。お気持ちはわかりますが、現実を受け入れて下さい」

1さんが呆れ顔で言うが、しぃは一歩も引き下がらない。

「ソンナコトイッテ、マダドコカニ シィチャンノ ベビチャンヲ カクシテルンデショ!?イクラ シィチャンノ ベビチャンガ カワイイカラッテ ソンナコトシテ ユルサレルト オモッテルノ!?
イマスグニ シィチャンニ カワイイベビチャンヲ カエシタラ ダッコ ジュウマンカイデ ユルシテアゲルワ!サア、ハヤク ベビチャンニ アワセナサイ!ベビチャンヲ ナッコサセナサイヨッ!」

しぃは未だに、自分のベビがちゃんとした姿形でまだ何処かにいて、「ミィミィ」等と鳴きながら寄って来てくれると思っている。
そんな現実を受け入れられないしぃの言葉に、1さんは「やれやれ」といった表情を作った。

「・・・そんなにベビちゃんをダッコしたいですか?」

「アタリマエジャナイ!ヴァカジャナイノ!?ハヤク コノ ウチュウイチ カワイイ シィチャンノ ウチュウイチ カワイイ ベ(ry」

先程から何度も言っているような事を怒鳴り散らすしぃに向かって1さんは、

「・・・わかりました。そこまで仰られるのなら・・・」

静かな口調で呟きながら、再び足元のバケツを掴み上げた。そして―――

「―――お好きなだけ、ダッコなさいっ!」



ドバッシャァァァァァァァン!!



バケツの中身を全て、しぃに向かってぶちまけた。

「シギィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!??」

これまた聞くに堪えないような悲鳴を上げるしぃ。
その縛られた手足からは、滴ると言うにはドロドロし過ぎているような血肉がボタボタと垂れている。

560 :へびぃ:2008/05/05(月) 02:32:48 ID:???
「ハニ゙ャァァァァァァァァァァァ!!!??ナニヨ コレェェェェェェェ!!!??」

大音量で叫ぶしぃに対し、1さんが冷静に言った。

「何って・・・あなたの望みを叶えて差し上げたんですよ。
 如何ですかな?6匹分のゲル状ベビちゃんとのダッコのお味は」

「コ・・・コンナノ、ダッコジャナ・・・イヤァァァァァァァァァァァァァ!!!」

半狂乱となったしぃの叫び声に、妹者はまた耳を塞ぐ。本日3度目だ。

「アアアアアァァァァァァァ・・・ベビチャン・・・ベビチャン・・・ハニャァァァァ、ァァァァ・・・」

明らかに狂いかけているとわかるしぃの声。目は血走り、その全身は、自らの血を分けて作られた物に塗れている。

「いやあ、俺も長年しぃという生き物を見てきたが・・・こんなに血生臭いダッコは初めて見たな」

「ダッコというものは俺も元々不快な物だと思ってはいたが・・・これは凄い。不快ってレベルじゃないな」

「『気持ち悪い』って、こういう時のために作られた言葉なのじゃ、きっと」

兄妹の言葉に、しぃが反応した。

「ア゙ァァァァァァ・・・ダッコ・・・ダッゴォォォォォォ・・・ベビチャ・・・ジィィ・・・」

最早バイオハザード化したしぃの声。その顔は醜く歪み、強気でダッコをねだっていた時の面影は欠片も無い。
そしてしぃは、

「ウァァァアァ・・・ダッゴ・・・ダコダコダコダコダコダコダコダコダコ・・・ベビチャンベビチャンベビチャン」

まるで壊れたテープレコーダーのように同じ単語ばかりを繰り返した後―――

「ベビチャンベビチャンベビチャンベビベビベビダコダコダコ・・・ヴァァァァァァウjdンbyhベクィpwンwcンプbccクヌbybジガヒhjp;」

―――異常な叫び声を上げ、やがて静かになった。

561 :へびぃ:2008/05/05(月) 02:33:24 ID:???
「・・・どうやら、逝ってしまわれたようですね」

1さんが言った。
がっくりうなだれたしぃの顔には生気が全く感じられない。白目を剥き、顔中の穴と言う穴から液体を垂れ流している。

「ショック死、か―――まあ、しぃってのは元々精神の足腰も脆いらしいからな」

兄者の言葉に、弟者もうんうんと頷いた。

「―――というわけで、『妊娠しぃdeお御籤』は以上で御座います。お疲れ様で御座いました」

1さんがそう言って深々と頭を下げる。慌てて3人も頭を下げた。
互いが頭を上げてから、弟者が言う。

「後片付け、手伝いましょうか?」

しかし1さんは、それを丁重に断った。

「有難う御座います。ですが、私一人で大丈夫ですから・・・お客様にご迷惑をおかけする訳には」

笑顔で言う1さん。無理に食い下がる事も無いだろうと思い、3人は彼の好意に甘える事とした。

「どうも、有難う御座いました」

「バイバイなのじゃ~」

「どうかお気をつけて・・・あ、私、この近くの『壱ノ宮神社』で働いておりますので、何か御用のときはいつでもお越し下さい」

挨拶を交わして、3人は1さんと別れた。
空を見上げると、もう微かにオレンジ色に染まり始めている。
今から家路に着くであろう人々の群れが、大移動。出店も閉まっている所が目立った。
やがて聞こえて来る、『間も無く終了時刻です。本日は『百ベビ組手』大会にお越し頂き、誠に有難う御座いました』のアナウンス。

「・・・んじゃ、帰るか」

「ああ、そうだな」

「そうするのじゃ。もう流石に疲れたのじゃ・・・」

そう会話を交わし、歩き出そうとしたその時。不意に兄者が言った。

「妹者、今日はもう疲れただろう。俺がおんぶして行ってやるよ」

「え、ホントなのじゃ!?」

「お、頭脳派の兄者が肉体労働とは・・・珍しいな。明日は雨か?」

喜ぶ妹者と、からかうような口調の弟者。それを聞いた兄者が憮然として答える。

「一言どころか全文余計だ、弟者。俺はただ、疲れきっているであろう妹をこれ以上歩かせたくないだけだ。お前は荷物もあるしな・・・」

それを聞いた弟者は、苦笑。

「冗談だ、兄者。時に落ち着け。―――妹者。兄者もああ言ってるし、おぶってもらうといい」

「わーい、ありがとうなのじゃ!」

嬉々として、妹者が兄者の背中に飛び乗る。

「それじゃ、帰るぞ。弟者、はぐれるなよ!」

「それはこっちの台詞だ、兄者・・・」

今朝の事を思い出した弟者が、また苦笑した。
そして3人は、人の波の奔流に巻き込まれぬよう、慎重に出口を目指した。

562 :へびぃ:2008/05/05(月) 02:33:56 ID:???
―――広場の外。
無事に脱出を果たした3人は、家路に着いた。
歩を進める内に、同じように近くを歩いていたAAの数もどんどん減っていき、やがて自分達だけとなった。

「それにしてもだ、兄者」

歩きながら、『百ベビ組手』で貰った賞状と盾、そして副賞のナイフを抱えた弟者が言った。

「何だ、弟者よ」

妹者を背負った兄者が答える。

「今日の妹者だがな・・・あんな技、どこで身につけたんだ?ドロップキックはともかく、その後のコンボ。何やら叫んでたし・・・」

それを聞いた兄者は、ばつが悪そうに言った。

「む・・・まあ、その、以前、妹者と共にとあるアニメを一緒に見てだな。それで・・・」

「まさか・・・おいおい、あれを妹者に見せたのか?」

その『アニメ』の正体が分かったらしい弟者が、怪訝な顔をする。

「い、いや・・・もうすぐ夏だし、熱くなれるアニメが見たくなってな・・・。
 俺がレンタルビデオ屋から借りてきて、いざ第1話を見ようとしたら、妹者がやってきて『暇だから一緒に見るのじゃ!』と」

「それで・・・影響された、と」

「影響どころか、俺よりハマってたみたいなんだこれが。その日一日、俺の事を『師匠』って呼んだり・・・なぁ、妹者」

兄者は不意に妹者に話を振った。だが、妹者からの返答は無い。

「・・・妹者?」

弟者が声を掛けた。が、その理由はすぐに分かった。

「―――すぅ・・・すぅ・・・むにゃむにゃ・・・」

「―――寝てしまったか。まあ、1日中遊びまわったんだ、無理もなかろう」

兄者がハハハ、と笑った。
と、その時。妹者が声を発した。

「うにゃ・・・ちっちゃいあにじゃが、ゆうしょうなのじゃ・・・むにゃむにゃ・・・」

それを聞いた兄者が、再び笑う。

「ははは、妹者の夢の中では、弟者は優勝しているらしいな」

「ぬぅ、4位で勘弁してくれ・・・」

ちょっと顔を赤くした弟者はそう呟いていたが、不意にポン、と手を打った(実際は荷物が邪魔で少し苦労していたが)。

「そうだ。妹者の希望を叶えてやらんとな・・・」

言いながら携帯電話を取り出し、電話をかける。通話先は―――自宅。

「もしもし、母者か?うん、俺だ。兄者と妹者も一緒だ。今から帰るよ」

電話には母者が出たようだ。弟者はこれから帰る旨を伝えた。しかし、そこで電話を切ろうとはせず、言葉を続けた。

「あ、スマンが母者、一つ要望があるんだ。聞いてくれるか?・・・うむ、サンクス。あのだな・・・」

弟者はそこで一旦言葉を切り、安らかに眠る妹者の顔をちらりと見る。そして、電話の向こうの母者に告げた。



「―――今日の夕飯は、天ぷらを頼む」








【完】