虫歯の治療

Last-modified: 2015-06-24 (水) 02:25:29
295 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/08(火) 00:50:01 [ .RCsbuIE ]

「ベビチャン ゴハンヨー!」
母親と思われるしぃの呼び声に、一匹のベビしぃがよちよちと母の元に歩いてくる。
「マァマ キョウノゴハン ナァニィ?」
「キョウノゴハンハ アマーイ オマンジュウダヨ!」
そう言うと母しぃは、饅頭を2つ取り出し、1つをベビしぃに差し出す。
「オイチチョウ! イタダキマーチュ!」
「アワテズニ ユックリタベルノヨ!」
ご満悦の笑みを浮かべて、ベビしぃは饅頭にかぶりついた。しかし
「……… ! イチャッ! イチャーヨゥ!!」
突然ベビしぃが、饅頭を放り投げて痛がり始めたのだ。
「ド ドウシタノ ベビチャン?」
「オクチノナカガ イターデチュ! トッテモ イターデチュ!」
「ドレドレ………?」
母しぃが、痛がるベビしぃの口を開けると
「アラ! ベビチャン ムシバサン デキテルジャナイ! ……コレハチョット タイヘンネ………
 ベビチャン オイシャサンニ ミテモライニイクヨ!」
母しぃはベビしぃを抱き上げると、町の方に出かけていった。

296 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/08(火) 00:50:22 [ .RCsbuIE ]

「ヨカッタァ ヤサシイ ハイシャサンガイテ」
やっととある歯医者で門前払いされず、しぃ親子は待合室に通された。
というのも、しぃ族は病院を始めとして、どこの公共施設でもひどく嫌われているのだ。
「疫病をまき散らしに来たのか!?」 「しぃ族が来ると、雰囲気が悪くなるのよ!」
「社会に何も貢献しないくせに、人並みに公共施設が使えると思ってるのか!? このゴミ共がッ!!」
などと、門前で叩き出されるのは日常茶飯事。
たまに入れてくれるところもあるにはあるが、そういったところでも
「しぃ族は、他種族の10倍以上の料金をいただきます」などと表記されている有様である。
しぃ族に対する差別など、無くならないのだ。

「マタ コンカイモ オカネヲタクサン トラレルンダロウナァ………」
既に自分の不遇を悟った様子で、母しぃがぽつりとつぶやく。
「デモ イイワ ソレデベビチャンガ ゲンキニナルナラ……」
ようやく名前を呼ばれ、2匹は治療室へと入っていった。

297 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/08(火) 00:50:43 [ .RCsbuIE ]

「どうなさいました?」
にこやかな仏スマイルを浮かべたモララーが、しぃ親子を見て話しかける。
「えーーと……… 本日はお母さんの方ですか? それともそのベビちゃんですか?」
その穏やかな語り口調は、多少萎縮していた母しぃも思わず
(アア ヨカッタ! コンナヤサシソウナセンセイデ!)と思うほどだった。
「ジツハ ベビチャンニ ムシバガデキテシマッテ……」
「ほう? では拝見させてください。ベビちゃん アーンして。」
子供用の治療椅子に座ったベビしぃは、素直に口を開ける。
「あらら。奥の方に大きいのができちゃってますね。でも、削ればどうにかなりますね。
 ベビちゃん、今まで痛かったろう?」
そう言ってモララーは、ベビしぃの頭を優しくなでた。
なでられて気持ちがいいのか、ベビも母親同様、うっとりした目つきでモララーを見つめる。
「じゃあ今からベビちゃんの虫歯の治療を始めます……。それでは、待合室でお待ち下さい。」
母しぃはモララーに一礼すると、待合室へと退出していった。

298 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/08(火) 00:51:05 [ .RCsbuIE ]

その後ろ姿をモララーは、先程の仏スマイルはどこへやら 
お定まりの、嫌悪のオーラがわき出している表情で見届けていた。
「………クソババァが……目にもの見せてやる………。」
モララーはそう吐き捨てると、今度は何やら色々道具の入っている戸棚へと歩を進めた。
そして「ゴミ虫用」と書かれた戸をがらりと開けると、中から何かをとりだした。
小さな、革製のベルトだった。
そしてそのベルトを使って、ベビしぃを手際よく椅子に拘束していく。
両手、両足。実に30秒もかからなかった。
頭以外の四肢を拘束されて不快なのか、ベビしぃは今にも泣きそうな顔でわめいた。
「アニャァ! ナーニヨゥ コエェ! ハナチテヨゥ!」
そんな涙目のベビしぃの前に、不動明王のような険しい顔をしたモララーが立つ。
「うるさいッ!! 黙れッ!!」
思いっきり拳を握りしめ、横っ面を殴り飛ばした。
「ジィィィィィッ!?」
体を拘束されているため吹き飛ばなかったものの、ベビしぃは首だけでも吹き飛んでいきそうな威力で殴られた。
「よくもまぁゴキブリ以下の分際で、のこのこと姿を現せたもんだな あぁ!?」
続けざまに、モララーは二回三回と、ベビしぃの横面を拳で殴る。
さっきまで優しく頭をなでてくれたモララーが、この変貌ぶり。ベビしぃは困惑した目をして口を開く。
「オジ……タン……… ナンデ?」
「俺はまだおじさんなんて年じゃねえェんだよ!! 食らえッッ!」
モララーのストレートパンチが、深々とベビしぃの顔面に命中した。

「ゴベッ!! ゴボッ! ベッ!」
モララーが拳をどかすと、ベビしぃは血反吐と、殴られて折れたであろう歯の欠片を胸の上に吐き出した。
モララーはその歯の欠片を手に取ると、にやりと笑ってこういった。
「おいゴミベビ、残念だったな。まだてめえの虫歯は抜けてねえみてぇだぜ。
 まぁ安心しな。抜けるまで『治療』は続けてやっからよ。無麻酔でな。
 いくら叫んでもいいぞ? この部屋の防音は完璧だからな!」
涙をボロボロ流しながら、すっかり歯抜けになったベビしぃは
体をブルブル震わせながら、イヤイヤと首を横に振った。

299 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/08(火) 00:51:36 [ .RCsbuIE ]

「なんだお前……? 口開けろよ。」
モララーは先程の「ゴミ虫用」の戸棚から、今度はドリルを取り出した。
何匹ものしぃの血を吸ってきたのか、黒く変色した血が付いたドリルは、耳障りな音を立てる。
恐怖心を煽る点では、これは抜群だったようだ。ベビしぃは口と目をギュッと 固く閉じた。
「おいコラ! 聞いてんのか!? 治療ができねーだろ!?
 オラ! さっさと口を開けろっつってんだろーが!」
モララーは鬼の形相で怒鳴るも、ベビしぃは相変わらずガタガタ震えながら目と口を固く閉じている。
「ふん……。それなら………」
モララーは固く閉じられたベビしぃの口をこじ開けるように、無理矢理右手の指をつっこんだ。
そして左手の指も同じようにねじ込むと、片手で上顎を
そしてもう片方で下顎を、それぞれ逆方向に つまりは口を開くように引っ張った。
「ア……ア……ア……ア………ヤベ……テェ………」
ベビしぃも何とか口を開かれまいと抵抗を試みるが、所詮はベビしぃの咬合力。
大人のモララーの腕力に、かなうはずもない。
そして

ボ グ ッ

「ア゙ァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」
何かが外れるような、鈍い音がした。
見ると、泣き叫んで顔を横に振り回しているベビしぃの下顎が
更にブランコのように、左右に揺れているではないか!
そう。モララーが、ベビしぃの下顎を力任せに外したのだ。
「ゴミクズの分際で手こずらせんじゃねーよ!! 行くぞッ!!」
もはや口という最後の砦が陥落した今、ベビしぃは侵入者を受け入れるしか ない。

「アゲガガァァァァ!! ヤベデェ!!」
モララーは手に太い血管がぴきぴきと浮き出るくらいにドリルを握る手に力を込め、ベビしぃの奥歯を削っている。
もっとも、生え立ての柔らかいベビしぃの歯など、強力に力の込められたドリルはとっくに貫通して
今やその下の神経や血管に達している。
「ヂ ヂィィィィィィィ!!!」
血反吐と歯の欠片を吐き出しながら、ベビしぃは神経を直接削られるという
あらがうことの出来ない、まさに脳天にまで達する痛みを味わっていた。
思わず、ベビしぃは椅子の上で失禁してしまった。
直後、モララーがベビしぃの横っ面を平手ではり倒す。
「てめえッ! 白衣に小便飛ばしやがって! これがいくらするか知ってんのか!
 この白衣の一万分の一にも満たない価値しかねえ,ゴミの分際で!」
興奮したモララーの餌食となった歯はこれ一本にとどまるわけもなく
二本、三本と、ベビしぃの小さな奥歯が次々と、血を吹き出すクレーターと化していった。

300 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/08(火) 00:52:01 [ .RCsbuIE ]

「ドリル治療では虫歯は見つからなかったから、今度はこいつだ。」
ドリルをトレーの上に置くと、モララーは次にラジオペンチを持ち出してきた。
「ア アビャアァァァ……アヒャァァ………」    ・ ・
「……お前、どうせ俺がこいつを使って、一気に歯を引っこ抜くとでも思ってんだろ?」
モララーは、ベビしぃの前歯をラジオペンチで軽くつまんで問いかける。
「モ…モホ……ヤヘテェ………」
「……んなに俺ァ慈悲深くねーぞ! うおらぁっ!!」
ラジオペンチを握る手に力がこもった。
「ぺきっ」
何かが割れたような、軽く香ばしい音が鳴った。
そして、いくつかの破片がぱらぱらと床に落ちる。
モララーが、ベビしぃの前歯をペンチで挟みつぶしたのだ。
そして間髪入れずに、そのラジオペンチの刃先を、砕いた歯の歯茎に突き刺した。
「グ グゲェェェーー!! ギュエェェーー!!」
歯を砕かれるだけでも相当な苦痛だが、モララーは更に歯茎にペンチを突き刺して、歯茎をかきまわしている。
そして歯茎を散々かき回すと、モララーは砕いた歯の根をつまみ、引きずり出した。
「はい、これもハズレ。さ、次行くぜッ!」
またペンチで前歯を挟むと、今度は前後にグラグラと動かし始めた。
ペンチを、歯を、前後に動かすたびに歯茎から血が吹き出る。
「『リンゴをかじると、歯茎から血が出ませんか?』 ……ってか~? 昔あったなぁ~。
 出るよ、出てるよ、出てますって! もうっ 大っフィーバーさぁ! ヒャハハハハハ!!」
一人で楽しそうに笑いながら、モララーはまだ着いていた血管ごと、前歯を引っこ抜いた。

301 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/08(火) 00:52:26 [ .RCsbuIE ]

全ての歯が、ベビしぃの口から無くなった。
ベビしぃはもはや胸どころか、手足まで真っ赤に染めてぐったりしている。
まだ、息はあるようだが………
モララーはと言うと、ベビしぃに背を向けて、何やらカチャカチャ音を立てている。
察するに、何かを混ぜているようだ。「最後の仕上げ……」とかつぶやきながら。
そしてベビしぃの方を振り返ったモララーは、手にコップを持って近づいてきた。
「ゴミクズ。これで最後だ。これを口に注いでやるから、口をすすげ。」
モララーはそう言ってコップを差し出した。
「ハヒャァ………ホレレ………ヒャイホ………」
ベビしぃは全ての歯を抜かれ、老人の口のようにしぼんでしまった口を素直に開ける。
「ハヤヒュ………ハヤヒュ………」
そしてまさに注ごうという瞬間、モララーがベビしぃに話しかける。
「さて、ここで質問………。簡単な質問だから、答えて ね……?」
「…………??」
「歯の治療をした後に………一番やっては行けないことは………何でしょうか??」
「……?? ヘ……ヒャヒ………?」
「分からないか? じゃあ教えてやろう。正解は………」
モララーは、コップの中身をベビしぃの口の中に注いだ。
直後


ヒィンヒャアァァァァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!!


ベビしぃは、そのエメラルドグリーンのオメメが真っ赤になるほど目を血走らせ、
またこれ以上ないくらいぐわっと見開き
ベビの発するものとは思えぬような巨大な悲鳴を上げ
そして、全身をしばらくガクガクと痙攣させた後…………力つきた。
モララーの『治療』を遙かに上回る刺激による、ショック症状で………。

「正解は…………食物、特に刺激物を口にすること………でした………。
 もちろん、薄めても……ダメ。」
モララーはほくそ笑みながら、先程何かを作っていた方へ振り返る。
そこには、一つの瓶がおかれていた。
ラベルに、「The Source ※」と、書かれた……


※:The Source ……もちろん、ふつうにトンカツなどにかけるソースのことではありません。
          タバスコの約3000倍近い辛さを持つ、世界第2位の辛み食品添加物のことです。
         (ちなみに現時点の世界最強は『ブレア氏の午前6時(タバスコの約7600倍)』)  
          このレベルの辛さとなると、原液が皮膚につくと大火傷します。
          もちろん薄めたとしても、相当な破壊力ですが………
          今回のように、傷口に付着させるなどと言うことはもってのほかです。

302 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/08(火) 00:52:55 [ .RCsbuIE ]

「センセイ アリガトウゴザイマシタ」
「いえいえ。虫歯の方は『完全』に処理しておきましたから、ご安心下さい。」
母の腕の中で事切れているベビしぃを見つめて言う。
あの後、ベビしぃの体を洗浄、漂白、そして口には抜き取った歯を
いい加減に差し込み、接着剤で固定しておいたから、傍目には、治療室にはいる前と何ら変わりない姿である。
「アノ センセイ ウチノベビチャンナンデスガ……」
「? どうかなさいましたか?」
「イエ…コンナニキモチヨサソウニ ネムッテイルモノデスカラ……
 ナニカベビチャンニ シテクダサッタノカナァッテ」
(眠って……いる? こいつ、自分の子が事切れてる事も気が付かないのか?)
モララーは、思わず笑い出したくなる衝動をこらえて
「いえいえ。歯の治療の際に、ベビちゃんが痛くないように、全身麻酔をかけたんですよ。
 それで眠っているわけでして………」
「マァ! ベビチャンノタメニ ソンナニシテクレルナンテ…… センセイ! ホントウニアリガトウゴザイマス!」
(バカだ、こいつ! どこの医者が虫歯治すだけで全身麻酔かけるんだよ!)
「………それじゃあ……ププ……お大事に! ププッ!」
眉をぴくぴく引きつらせながら、笑いをこらえてモララーが手を振り、親子を見送った。

303 名前:cmeptb (dlFS2kHA) 投稿日:2005/02/08(火) 00:54:18 [ .RCsbuIE ]

「ヨカッタワネェ ベビチャン! ムシバサンナオッテ!」
決して返事の帰ってこない、母しぃの一方的な会話が始まった。
「ソレニシテモ コンナチカクニ アンナイイ ハイシャサンガアッタナンテ…… 
 コレカラモ ムシバサンデキタラ アソコニイコウネ!
 マァ オカネハチョットカカルケド ベビチャンガ コンナニキモチヨサソウナンダモン
 ウデノイイ オイシャサンニ チガイナイワ!」
母しぃは、歯医者の領収書をひらひらさせながらつぶやく。
そこにかかれていたのは、治療費として10万エソ の請求額であった。
他種族の実に100倍近い費用で、ある。

一人、騙されていると全く気づいていない母しぃは
死体を抱えたまま、脳天気に家へと帰っていった………。
                       
                      終わり