iRacingにはロードレースとオーバルレースの2つのレース環境が用意されています。iRacingで初めてオーバルレースを経験した、という人も少なくないでしょう。もともとオーバルレースのファンな人はともかく、「興味がないから全く走ってない」「LegendsでSouth Boston走ってみたけど、おもしろさがわからない。」という人もいるでしょう。このページでは、そういった方に向けてオーバルレースの魅力を伝えてみたいと思います。
魅力
スリル
ロードレースにおいても、テール・トゥ・ノーズ、サイド・バイ・サイドは一番興奮する瞬間だと思います。しかしオーバルの場合は瞬間ではなく”常時”です。抜くか抜かれるか、併走したまま何十周も走ります。しかも、トラック/車種にもよりますがオーバルレースは常時300km/h付近で展開します。その状態で他車との軽い接触もありつつ、迫り来るウォールに緊張感も抱きながらフィニッシュを目指します。チェッカーフラッグが振られた時、1位-2位の差が100分の1秒以下というのも稀ではありません!
駆け引き
ターンでの競り合いはもちろんのこと、終盤で良い位置につくための中盤でのポジショニング、コーション発生時にステイアウト(ピットに入らず順位を上げる)するか否か、ロングラン/スプリントが強いセットアップ/走り方のどちらを取るか、等など、オーバルではあらゆるシーンで駆け引きがあります。あなたはドライバーであると同時にクルーチーフとしてレース戦略を組み立てる必要があります。もちろん、初めから全てを上手くこなせるドライバーはいません。経験を重ねるにつれあなたなりのスタイルが構築されていくことでしょう。
ラスト10周でコーションが発生した時、あなたはピットに入りますか?タイヤがどれだけ残っていればステイアウトで逃げ切れますか?ピットに入るなら、何番手後退までが許容範囲ですか?前に出たドライバーは簡単に抜けるドライバーかどうか、それまでのレース模様を覚えていますか?
オーバルで考えることはたくさんあります!
チームワーク
よほどの実力差がない限り、オーバルで単独走行で勝利することは非常に難しいでしょう。単独の車とパック走行している車とでは、1周あたり0.1秒、0.2秒もしくはそれ以上の差があるのが普通です。もし、あなたがリーダーを追いかけている状況なら、周囲の車と協力し、隊列を整え可能な限りペースを上げる必要があります。パートナーが普段あなたと一緒にレースをしているチームメイトなら話は早いでしょう。しかし周りは初めて一緒に走るようなドライバーがほとんどです。彼らと協力体制を築くことは可能でしょうか?…可能です!彼らもまた、あなたと同じように「誰かと組んでペースを上げたい」と思っています。こうやって、オーバルでは即席のチームメイトが出来るのが通常です。そしてまた彼らに裏切られるのも…
遅くても勝てる?
ドラフティング(スリップストリーム)を最大限活用しましょう。1周のタイムがコンマ数秒遅くとも、トップについて走ることは可能です。もしトップ集団からはぐれたら?フルコースコーションがあります。全車一定のペースで走り、それからレースは仕切りなおしです。簡単に言ってしまえば、オーバルは最後のイエローフラッグからチェッカーフラッグの間だけ速ければ勝てます。残念ながらクラッシュ等によりそのステージに立てなかったドライバーもいるでしょう。ほら、勝利の確率が上がりましたね?ミスをしない・クラッシュに巻き込まれないという手堅い走りも、勝ちに繋がる重要なテクニックです。
オーバルは速さだけでは勝てません。逆に言うと、速さがなくても勝てます!
マナー
クラッシュを防ぐために
1時間近く走りフィニッシュも目前、このまま行けば大量ポイント獲得!しかし次の瞬間…クラッシュ!こんな思いは誰もしたくありません。オーバルは基本的に集団で密集してレースが展開するため、一人のミスで大勢のドライバーを巻き込むことは珍しくありません。そのためオーバルレースのドライバー達は危険に対して敏感で、万が一の場合も可能な限り(自分だけでなく周囲も含めて)被害を最小限にしようとします。
以下に挙げているのはあくまでマナーです。マナーを強要しないのもマナーですが、あなたも円滑なレースに努めてくれることを期待しています。
インをブロックしない
ロードレースの場合は、コーナーでインを取るかアウトを取るか、前走車に選択権がありますが(これも議論の余地はあるかもしれませんが)、オーバルではインサイドをブロックしてはいけません。
特にショートオーバルではインサイドが絶対的に有利なため、アウトサイドからオーバーテイクをすることはほとんど不可能です(スーパースピードウェイなら事情は異なります)。このため前走車は通常どおりレコードラインをトレースし、追走車がインサイドから仕掛け、その後併走したまま数周競り合うというのがオーバルの基本的なバトルです。サイド・バイ・サイドを存分に楽しんでください。
後続車に張り付かれたらどう振舞うのが良いのでしょうか?
ターンに差し掛かったとき、イン側を写すミラーに後続車が下の図ほど写っていれば、インを閉めてはいけません。
(画像準備中)
特に、後続車とのギャップが0.1秒、余裕をみれば0.2秒以下の場合は注意してください。相手はブレーキングをねばり何とかしてあなたのインに滑り込もうとしているかもしれません。
逆にあなたが追う立場の場合は、ターンに入る前に車を左に寄せ、相手に次のターンで抜く意思があることを示しましょう。
残り3周!という状況でも無い限りは、無理にオーバーテイクしたりポジションを守る必要はありません。ポジションを上げてもピット戦略で負けるかもしれませんし、リードを広げてもコーションで帳消しになるかもしれません。リスクは”必要な時に最小限”負えばいいのです。
前方の危険を察知したら
現実のオーバルレースなら、スポッターが「前方でクラッシュだ!ボトムに逃げろ!」等注意してくれますが、iRacingのスポッターはそこまで親切ではありません…。そこで、あなた自身が他のドライバーのスポッターとなり、危険を察知したら後続へ注意を促してください。そのためVC(ボイスチャット)の使用を推奨します。
最も汎用的に使えるのが「watch out!(気をつけて!)」です。前の車がスライディングしていてどうやらスピンしそうだという時、ウォールにヒットした車が跳ね返ってきそうな時、リスタートを失敗した車がいる時、に使えます。
もうちょっと具体的に注意したければ、スライディングしていてタイヤスモークを上げている車がいる時は「smoke!」、スピンしている車がいれば「spinner!」、コースを塞いでいる車がいれば「go low/go high」が使えます。
数台がからむ完全なクラッシュが起きていれば「wreck!wreck!wreck!」です。「slow down!」と言いつつ回避に専念すれば、あなた自身も後続車も生存確率がグッと上がるでしょう。
イエローフラッグが振られた時、あなたがリーダー(1位)ならペースカーをキャッチアップした場所を伝えてください。「pace car, T2/backstretch/etc.」と注意しておけば、キャッチアップに必死な後続車に追突されることもないでしょう…。
リスタートの心得
リスタートはポジションアップのチャンスです。他のドライバーも同じ事を考えています。そのためクラッシュの発生率も必然的に上がりますが、そんなシチュエーションだからこそ慎重になる必要があります。
低速からの加速を十分に練習してください。おそらく2速から加速することになると思いますが、スロットルワークを誤れば簡単にホイルスピンします。オーバル車両の特性上、フル加速中に車を真っ直ぐ走らせるのも慣れてないドライバーにとっては難しいでしょう。
前の車の加速が渋い場合でも、無理にオーバーテイクしないほうがいいでしょう。例え先頭集団と差がついたとしても、1周回ってくる頃には差は無くなっています。
リスタート直後のT1、T2も注意してください。普段はT1へ減速しながら飛び込みますが、リスタート後は加速しながらクリアすることになります。車の挙動の違いに注意してください。タイヤが冷えていることも挙動の違いを生む要因になっています。
自分のミスで巻き添えにしないために
もしスピンしてしまったら?コースを塞がないことを第一に考えてください。むやみに立て直そうとするのはお勧めしません。インへ流れているのならそのままエプロン・芝を目指してください。アウトへ流れているのなら、ターンを抜けるまでウォールに張り付いているのが無難です。
テクニック
ドラフティング
ドラフティングはオーバルでは特に重要なテクニックです。前を走る車の後ろにピッタリ張り付くと、空気抵抗が無くなりトップスピードが伸びます。前の車にもドラフティングの効果は有り、車体後端の負圧が無くなるためトップスピードが伸びます。前の車のスピードが伸びると後ろの車もさらにスピードが伸び…とお互いの影響が相互に繰り返され飽和するところまで2台のスピードが伸びます。
さらにあと一歩、2台のペースを上げるためにはバンプドラフトというテクニックを用います。前走車は空気抵抗がありますが、後ろの車にはそれが無いためわずかに車速が上回ります。これを前走車にも活かすため、前走車を”押します”。得られる効果はわずかですが、何十周と走るうちにそのわずかな効果が積み上がり、最終的に十分なリードを獲得できます。しかし、強く押し過ぎたり、斜めに押したり、ターンに差し掛かってブレーキングを始めた時に押すと前走車は簡単にスピンします。本当に必要な時だけ、相手に「押してくれ!」と要求された時だけバンプするようにしましょう。
なお、ドラフティングの効果は前後だけではありません。横に並んだ車同士にも空力的作用はあります。特にスーパースピードウェイでアウトサイドからオーバーテイクを仕掛ける時、インサイドの車に近づいていればその車の方へ引き付けられるため、ターン中の車速を稼ぐことが出来ます。引き寄せられるのはインサイドの車も同じです。不用意に近づくと、インサイドの車がアウトに振られクラッシュ!というのは時々見る光景です。
スリングショット
スリングショットはドラフティングの応用です。例えば、単独では295km/h、2台のドラフティングで300km/hで走れるとします。この時、後ろの車はエンジンパワーを100%使っているわけではなく、95%程度でこの速度を維持出来ています。すなわち残りの5%を使って300km/h以上を出し、前走車をパスすることが出来ます。
ただし、簡単にスリングショットをキメることは出来ません。単純に、前走車に張り付いた状態からラインを変え前に出ようとしても、ストレート区間を全て使っても次のターンでノーズを僅かにねじ込めるかどうか、といった状態が精一杯でしょう。そこで、ターンの出口では、ドラフティングの効果が維持出来る限界まで車間を空けます。ターンを抜けると同時にフル加速し、車間を詰めつつ速度を伸ばします。この時に、普通にドラフティングした場合の300km/hを上回る速度が出ているのが理想です。車間距離がゼロになったところでインに飛び出します。この飛び出したタイミングが、相手のブレーキ開始(ターン開始)と同時であればスリングショットは成功です。タイミングが早ければ、あなたも空気抵抗を受けターンで並ぶに至らないでしょう。遅ければ、オーバースピードでクラッシュするかもしれません。ポイントは”2台の速度差がどこで最大になるか”です。
パック走行
オーバルでは(特にデイトナやタラデガ等のスーパースピードウェイでは)レースのほとんどを集団で走行します。他車と接近した状態では、取ることができるラインも制限され、空力的な作用も変わり、また心理的なプレッシャーも単独走行時とは大きく異なります。
まずはレース前にプラクティスセッションで集団走行に十分慣れてください。人が多いプラクティスセッションは、他のドライバーも集団走行の練習・セッティングの確認を行っているので、目的に適っています(予選用セットを確認したい、単にトラックに慣れたい、という目的であれば人が少ないセッションを選びましょう)。インをキープする走り方・アウトをキープする走り方は、単独でレコードラインを走る時とは感触も必要なドライビングも異なります。
また、前走車にピッタリ張り付いて走っていると、フロントウィンドウには前走車のリアしか映りません。つまり、もしあなたが路面のペイントやウォールのマーキングを目印に走っていた場合、集団走行時にはそれらを見ることはできません。観客席やコースサイドのオブジェクト等でも自分の位置がある把握できるよう練習しておくことをお勧めします。
レース中、集団走行時に目の前の車がアウトに振られ、スペースが出来たらあなたはどうしますか?そのスペースに滑り込み、アウトに振られた車を車列から追い出したいと思うかもしれませんが、それは大抵クラッシュの原因になります。まず、その前の車はポジションを落とすほどのミスをしたと思っていません。何も考えず(ミラーも見ず)自分が元居た位置に戻ろうとするでしょう。しかしそこにはあなたがノーズを差し込んでいる…結果は言わずもがな、ですね。あなたが逆の立場だった場合は、戻る前にミラーで後続の様子を確認してください。アグレッシブなドライバーならポジションを上げるべくあなたの居場所を奪っているかもしれません。スペースを残してくれていることが確認できたら、感謝しながら元の位置に戻りましょう。
アンダーグリーンピット
ピットインはなるべくコーション中(イエローフラッグ中)に済ませたいところですが、状況によってはグリーンフラッグ中に必要になることもあります。
とにかくロスを少なくピットへ入る必要があります。T3もしくはT4からフルブレーキングをしながらピットロードへ飛び込む練習をしてください。ブレーキをしながらエプロン(トラック内側の平面部分)へ降りると挙動が大きく乱れますが、上手く車を押さえ込むテクニックが必要になります。自信がなければT3に入る前にエプロンへ降りておくとよいでしょう。
あなたがピットに入ろうとしている時、後続車がいると100%追突されます(相手はあなたがピットに入るため減速することを知りませんから)。遅くともバックストレッチを走行している間にVCで「pit pit pit!」と注意を促すか、テキストチャットで「pppppp」と警告しておきましょう。相手が慎重なドライバーなら、それを受けてT3に入る頃にはラインをアウト寄りに変えあなたの減速に備えてくれるはずです。そうでなければ、逆にあなたがラインを変え、減速を始める前に相手をパスさせましょう。