機密文書が閲覧されました。この情報は情報局によって記録されます。
まず現代怪異について。”彼ら”怪異と呼ばれるものは、誘湊に古くから存在するバグのような存在だ。妖怪や精霊とはまた別の存在で、魔力だまりや局地的な現実乖離などから発生し、無秩序にこの世界を脅かす。怪異自体は古くから存在し、それらはその時代ごとの存在が撃退、討伐してきた。昔話に登場するような妖怪の一部はこのような怪異だったりする。
その中でもアストラル的存在、つまりは深淵系統などに見られる精神生命体のような存在のことを、現代怪異と呼ぶ。なぜ現代、なのかというと、近代になってようやくその存在が認識されたからだ。恐らく古代から存在しているが、狂人として処理されたり、悪魔憑きとして歴史の影に葬られていると思われる。時に”彼ら”は人間やエルフ、セイレーンなどの人型実体の存在に憑依し、その存在に同化することで現実世界に干渉する。私たちはそれを”怪異化”と呼んでいる。怪異化自体は皇民たちにも周知されているが、その真相を知る者は現時点で殆ど存在しない。現在の魔法、科学では観測するのが精一杯で同化後の”彼ら”を引き剥がすことはできない。仕方のないことだが、私たちは怪異化した皇民を殺し、それを私たち影の人物達が弔い、誘湊国の影に葬ることしかできない。
…この文書は、極秘裏に連邦に共有しようと思う。最近は向こうでも怪異化が発生していると聞いている。これで少しは研究が進むと良いのだが。
…私たちは、一刻も早く怪異化を解除する手立てを見つけ、現代怪異を滅し、この残虐で非道な行為を止めなければならない。それが、私達が殺めてきた彼らへの、数少ない贖罪となることを信じて。