君。そう今この機密文書のページを開いている君のことだよ。
まずは忠告しておく。これはただの機密文書じゃない。この先に書かれていることは興味本位で見ていい代物ではない。冗談とかではない。
この下に書かれた記録には、私たちが本来知るべきではないはずの「真実」が記されている。相応の覚悟と耐性を持たない者が見てしまうと発狂してもおかしくない程の真実が。
…まあ、こんな忠告をしても君は構わずに見るんだと思う。言葉程度じゃ人の好奇心を止めることはできないし、私もあまりやりたくない。なんなら私もどっちかというと君たちと似たような感じだしね。
…覚悟はできた?できたのなら、この下の文書を開くといい。君の叡智の一助となることを願ってる。
重要機密文書を開示します。
アクセスが承認されました。
重要機密文書0000が開示されました。この情報は情報部に記録されます。あなたの飽くなき好奇心と勇気に幸あるように。
- これより、先程の召喚魔法実験により発生した、神性、またはそれに類すると見られる精神生命体との対話を試みます。突如発生した上に何も準備できていないため何が起こるかわからない。なので音声認識による文書作成によってこの記録を残すことにします。死の天使事件のようなことが起こらなければ良いのですが。
対話を開始します。
あぁ…なんと呼べば良いでしょうか。
私のことは、「ヘイスティア」とでも呼んで下さい。
わかりました。それではヘイスティア。あなたはどのような存在で、なぜ先程の上位次元召喚に応じたのですか?
私は…あなた方の概念に当て嵌めるのならば、「別世界の神」という立場にあるでしょう。私はこの世界とは別の世界、こちら側の言語に対応させるならば「地球」と言う世界を創造し、管理しています。なぜ、先程の召喚に応じたかですね。簡単に言えば、あなたに会ってみたかったのです。これ程のレベルの召喚術式を発動させることができる存在は殆どいません。この国なら…あなたと、えっと、戦略魔法師団?の師団長と副師団長の6人、この世界線の天皇様。あと-さん、ぐらいですね。
…なんと。そのような理由でしたか。では、私の召喚魔法で、この世界線における「神」も召喚することも可能なのでしょうか。
ええ。彼女がそれを受け入れるのなら。この世界、あなた方の言葉では惑星イツモノンを管理する神々である(認識不能)や(認識不能)は少々自由な部分がありまして。あまり他人、いえ他神の話を聞かないのです。あなたたちは少しだけ幸運ですね。あの2柱がちゃんとした世界を創造して、管理しているのですから。
…というと?
あの子たちは今までにも幾つか世界を創造しているのです。中にはまともな世界も存在したのですが、いくつかの世界は矛盾と理不尽に満ちた世界だったり、途中で創造をやめてしまったりしているのです。
…!つまり私たちは…
創造された存在であるあなた方に言うのは少々酷であることは承知の上で言います。あなた方は彼女らに創られ、また彼女らに管理される存在なのです。
…そうなの…ですか。
…ええ。ですが、この世界に限っての話をするのなら、すぐに消滅したりすることはないでしょう。彼女たちはこの世界を気に入っているようなので。また今回は彼女らは放任主義でこの世界を直接動かすことはあまりしないそうですので、理不尽なこともあまり起きないと思います。…そろそろ時間ですね。
…あ、そうですね。そろそろ召喚式が解けてしまう…
…短時間でしたが、あなたとの遭遇は楽しかったです。邂逅の徴に、これを受け取って下さい。
これは…?
後で鑑定してみて下さい。難度9程度の強度で見るとわかると思います。…では、この邂逅に幸あらんことを。精神生命体は元の次元に帰還したようです。それと、ブローチのようなものを受け取りました。後で鑑定に回します。
私の主観ですが、彼女…恐らく彼女、からは神聖な、とでも表現しましょうか。そんな空気を感じました。また、魔力とは異なる概念的な力だと思われますが、少なくとも戦略魔法師団員の数十倍以上の力を感じました。何があっても敵に回してはいけないと思います。
これで記録を終了します。-鑑定によって、この博士が受け取ったブローチは「祝福の飾」という固有名を持つこと、召喚者である鳳博士が所持する時、「ヘイスティアの祝福」なる魔法か、それに類する力が常時発動すること、惑星イツモノンには存在し得ない素材でできており、破壊も不能であることが判明しました。また、天皇陛下と枢密院の提案により、このブローチは鳳博士が所持することが決定しました。
今回対話に成功した精神生命体から得ることができた情報から、この世界は複数の「神」によって創造され、管理されていることが判明しました。また、こちら側から「神」に対してルートを開くことができることが判明したため、古術である「神性召喚」が実在した可能性が生まれました。
今回判明した情報は、その重要性と現実性から、重要機密情報に指定されました。