プロローグ

『アル・ニエンテ』から250年の月日が流れた。
世界はまるで停滞したかのようで、万物は静まり返っていた。
黒と白は、この世界最後の色となった。
リツモの目には一抹の不安が残る、
しかし、フィシカの目には確固たる信念と希望で満ちていた。
「信じてるわ」
「私は信じている。音律に祝福されているあなたなら、必ずまた、この世界に秩序をもたらすことが出来ると……」
目次
- プロローグ
- Main Story Chapter 0 こだまする荒野の音
- Main Story Chapter 1 大自然の万有音律
- Main Story Chapter 2 農場内の不協和音
- Main Story Chapter 3 国立ノタリウム研究所のトンネル
- Main Story Chapter 4 果てしない大空へ
- Main Story Chapter 5 神秘との邂逅
- Main Story Chapter 6 生命の音
- Main Story Chapter 7 逃亡と破壊
- Main Story Chapter 8 生命のノタリウムの心
- Side Story Chapter 1 天才少女とスターライトシューターの楽章
- Side Story Chapter 2 輝く日の出の地を目指して
Main Story Chapter 0 こだまする荒野の音
Dream goes on
- 出発の前に、フィシカとリツモは研究室でノタリウム調律装置の最終シミュレーションを行なっていた。
- そして二人の旅立ちに連れ、運命の歯車は静かに回り始めたーー
- 尽きることの無い星空
旅路についた二人の、真摯な思いを乗せて。
Only the place where truth has engraved
- フィシカとリツモは荷物の詰まったかばんをを背負い、たった一つ残された地図を頼りに、モノクロの荒野に身を投じた。
「ここだわ」「これが、カオティックノタリウム?」
- リツモの調律が終わると同時に、荒地に不思議な変化が起こり始めた。
「やったぁ!!」フィシカは思わず声を上げた。
「このまま一気にゴールまで突っ走るわよ!」
- 荒れ果てた大地は再び芽を吹き
本来の姿を取り戻しつつあった。
Chronosis song
※初回のみ強制Purifyモード
- 地図に記された東南の方角へ進み続けた二人は長い間封鎖されていた洞窟に辿り着いた。
洞窟内には凄まじいエネルギーが渦巻いていた。
収穫なしでは帰れないフィシカはやむを得ずまだ試作段階である浄化(Purify)機能を起動した。
演出ありBGM:Chronosis songインスト
- 調律が終わった途端たった今紡いだ旋律が洞窟内でこだまし始めた。
目の前に広がる美しい景色に、二人は言葉を呑み込んだ。
- 「これがーー」
「世界のあるべき姿ーー」
- 洞窟内のエネルギーが安定した後、町の機能を維持するためにノタリウム管理局はノタリウムの採取に着手し始めた。
以後ネタバレ注意
Colors of the world are on your fingertips.
Main Story Chapter 1 大自然の万有音律
イントロダクション
- 東南の洞窟の調律が終わり、世界各地のノタリウムが「共鳴」を起こし、エネルギーが次第に強まっていく。
フィシカの努力によって改良された調律装置は、近くにあるノタリウムの位置を特定できるようになった。
ふたりの地図には新たな道しるべが示された。
vivid color
- フィシカとリツモは北へと新たに歩み始める。
山の入り口には大きな樹がそびえたっていた。
樹の洞の中でノタリウムが輝いていた。リツモは胸を踊らせ、調律を始めた。
- ふたりは樹に赤い果実が実っていることに気付いた。フィシカは何かを考え込んだ様子で果実を見つめていた。
「小さい頃に、お父さんがあれを買って私に食べさせてくれたことがある。あれは……りんごだ!」
口の中で甘酸っぱい香りが溢れ記憶とともに消えていった。
彼女はそのりんごを一つ取ると、すぐさまかぶりついた。
「アル・ニエンテのせいか、ここへの道も封鎖になって、りんごも私たちの生活から消えたわ」
- アル・ニエンテの呪縛から解き放たれ、万物は再び甦り、自由を謳歌し始めた。
それはまるで盛大な祭りのようで、楽しげな音が森の中に鳴り響いていた。
Ne m'oubliez pas
- リツモは大自然の生命の鼓動を感じながら、軽くステップを踏み、鼻歌まじりで意気揚々と進んでいく。
対照に、フィシカは周りのモノクロの景色を眺めつつ、静かにリツモのうしろを歩く。
突然、色を失くした花畑が二人の目に映り込んできた。
- リツモの巧みな調律が終わると、小さな雨が降り出した。
彼は子供のように雨を避けようと走り出した。
フィシカは、その目に映る鮮やかな蒼い花畑に見惚れ、思わず花の名前を口にした。
『ワスレナグサ……』
- 雨は降り続いているが、止まない雨はない。
ciel nocturne
- 花畑の真ん中を通る小さな道を歩いて行くと、目の前には広い草原が見えてきた。
そこには見たこともない巨大な鳥の巣があった。
- フィシカはその大きな鳥の巣から独特な色合いのタマゴを抱き上げ、じっくりと観察した。
少し考えると、フィシカはそのタマゴを慎重にカバンに入れた。
リツモは少し戸惑いながらも、ただ見守っていた。
好奇心旺盛なフィシカを止めることは誰にもできない。リツモはそのことを誰よりも知っていたから。
- 静寂の夜に、生まれてこようとしている小さな命が、自分の存在を証明しようとしていた。
Night Yacht
- 道なりに進んだふたりはまた新たなノタリウムの場所に辿り着いた。
そこはとても大きな湖だった。
漆黒の湖は、まるで深淵へと誘う巨大な入り口のようで思わず身震いをする。
- 静寂の中、月明かりが紺色の湖を照らしていた。
リツモは夜色に酔い、思わず琴を弾き鳴らしてセレナーデを歌い始めた。
フィシカは大人しく隣でそれを聴き、一日の疲れを歌とともに流していった。
- 朝日が雲の切れ間から覗き、生力を取り戻した湖は煌めいていた。
鳥たちは翼を広げ空を切り、金色の光を輝かせた。
DARSANA
進めるにはノタリウム20個必要 (※条件は撤廃されたと思われる)
- 湖から伸びた川に沿って下流に向かって行くと、ふたりは狭い渓谷にたどり着いた。
まだ薄暗い、いくつかの岩山に囲まれたその場所はまるで息ができなくなるような圧迫感を感じさせる。
ここには膨大なノタリウムが散らばっていた。
調律するには装置による、より多くのエネルギーが必要だろう。
- 苦労の末、リツモはついに渓谷の調律を終わらせた。
虹色に輝くノタリウムの光が大自然の景色に溶け込まず、強烈な違和感を放っていた。
まるで、山に大きな傷跡を刻んだように。
- 大自然の生命力により、この辺りの植物はゆっくりと、しかし着実に芽を生やし始めれていた。
だが一体、どれだけの時間をかければこの巨大な傷跡を覆うことが出来るのだろうか?
Prism
- 渓谷を後にすると、人々が暮らしていた痕跡が徐々に増えてきた。
ふたりは荒れ果てた廃工場にたどり着いた。
床には工具、そして謎の黒い円盤が至る所に散らばっていた。
「この円盤は何に使うんだろう?」フィシカは疑問を口にする。
- 調律が終わったにも関わらず、長く使われていなかったせいか工場は依然として沈黙に包まれたままだった。
いくつかの電球がちかちかと瞬くのでやっとだった。
ジャケットの中に収められていた一つの黒い円盤が辺りを見回していたリツモの目を引いた。
- (レコードには『Memory』と刻まれている)
「巡り巡るわが想い やがては大樹のよう 年輪を幾重にも刻む それはさながら蜘蛛の糸 繊細な線は音を紡ぎ 音色になり その音色が大空に響き渡り 時を越え 導かれ 届き あなたを呼び醒ませる 思いは願いに」
円盤のジャケットの文字が何を意味しているのかはよく分からないがーー
リツモはそこから強い鼓動を感じ取り、それをカバンの中へしまった。
- 山頂から下を見下ろすと一つ、モノクロの街がここからそう遠くないところにあることが分かった。
調律装置もその街が次のノタリウムの在り処だと指し示している。
抑えきれない興奮とともに、フィシカとリツモは足取りを早め、先へ進んだ。
- 廃止された工場が再び動き始めることはない。
だが、それが懸命に作動している姿は人々の心に深く刻まれている。
Trauma
- 徐々に広がっていく道に沿って歩き続けると、街の中心部に辿り着いた。
道沿いの建物は見たこともない目新しいデザインだった。
いくつかのノタリウムが街の中央にある噴水の上に浮かんでいる。
- 静止していた街が調律と共に変化をし、風が流れ始めた。
- 制止していた街が調律と共に変化をし、風が流れ始めた。
噴水にあるノタリウムの調律は無事終了したが、装置がここのエネルギーは依然、乱れたままだということを示していた。
「『浄化』機能を使ってみましょう。もしかしたらうまくいけるかもしれない。」とフィシカが提案した。
- ノタリウムの美しい光と共に水は踊り、盛大な楽章を奏でていた。
かつて、どれだけの人がここで足を止め、魅了されたのだろう
Frey's Philosophy
※初回のみ強制Purifyモード
- ふたりが安堵した途端、街全体が天と地がひっくり返ったかのように揺れだした。
この揺れに呼応するように、後ろにある鐘塔の鐘が荒々しく鳴り響き、調律装置もまた、警笛を響かせた。
「凄まじいエネルギー!」 「鐘塔からだ!」
- (扉には『KEEP OUT STAFF ONLY』の文字)
「ここはーー!?」
- 鐘塔内のノタリウムを安定させると、辺りは静けさを取り戻した。
どうやら危機は去ったようだ。
残されたのは重い歯車が回る音だけだった。
リツモは床に座り込み、先ほどの張り詰めた心を落ち着かせていた。
隣のテーブルの上にあった分厚い書物がフィシカの好奇心を掻き立てた。
- その書物は見たこともない文字で書かれていたが、最後のページには馴染み深い刻印が押されていた。
それを見たフィシカは眉間にシワを寄せながら、荷物に加えた。
- 鐘塔から出ると周りの景色は元の色を取り戻していた。
どうやら街全体の調律は終わったようだ。
「装置の探索結果だと、次のノタリウムはここからかなり離れてるみたい」
「どっか休める所を探そっか」フィシカはそう提案した。
- 夜の街を進むと、街の施設全体が正常に作動していること、そして人影が全く見当たらないことに気付いた。
フィシカとリツモはそれを不思議に感じ、困惑したが険しい旅のせいか、疲労が溜まっているふたりはひとまず空き家を探し、休憩を取ることにした。
- 窓の外の星空を眺めながら、書類について思いを巡らしていたフィシカは、いつの間にか夢の中に落ちていた。
リツモの睡魔はまだ襲いかかって来ないようで、大事にしているリュートを整備していた。
世界修復の旅がこれからも順調に進むようにと夜空に願いながら、彼は軽快なメロディを静かに口ずさむ。
- ーーその一方ーー
「どうやらーー」
「Lanota計画を再び始める時が来たようだーー」
- 一体いつ、誰が片付けたのだろうか?まだここに出入りする人間がいるのだろうか?
Main Story Chapter 2 農場内の不協和音
イントロダクション
- リツモとフィシカは街に数日間留まり、休みがてら街を念入りに調査したが、アル・ニエンテに関する新たな資料は見つからなかった。
- その間、調律装置は北にあるカオティックノタリウムのエネルギーが増加していることを示していた。
「手掛かりが無いなら、ここにいても無駄ね」とフィシカが言った。
「そうとわかれば早く支度をして、カオティックノタリウム探しの旅を再開しよう」
リツモは頷き、荷物の準備を済ませ、二人は新たな旅に出ることにした。
- 北の山脈への道のりはとても険しく、普段の生活で十分に鍛えているリツモなら耐えられるものだったが、その反面フィシカは人生最大の難関に挑んでいるのではないかと思うほどに過酷であった。
激しい体力消耗のせいか、やがて二人の足並みはだんだんと鈍くなってきていた。
- 幾つもの山々を越え、日付は何回変わっただろうか、ようやく目前に広がる平坦な道を見たリツモとフィシカは、ほっと胸を撫で下ろした。
山を下ると、そこは農場らしき場所であった。
Bokura no michi
- まず目に付いたのは止まった大風車で、中心に嵌められていた巨大なカオティックノタリウムが、やけに目立っていた。
早速リツモは装置を取り出し、調律を始めた。
- 風車は動き出し、そよ風を受けた木製の軸はギシギシと軋む音を響かせ、農場らしい長閑な雰囲気を漂わせた。
「ここ、私達の街にそっくりね」
「僕んちの隣のおばさん、元気かな? いつも通り、毎朝花畑の手入れをしてるかな?」
- 夕日に照らされて、人気のない農場はより一層寂しく見えた。
Eternal Love
- リツモは故郷の歌を口ずさみながらまっすぐ続く道を進み、フィシカは興味津々で周りの景色を眺め、やがて彼らは大きな温室に辿り着いた。
温室内に入ると、カオティックノタリウムが散らばって落ちていた。
- 温室に生えていた植物は、リツモの優美な調律の音で次々に艶やかな花を咲かせた。
その中には独特な形の花が一輪咲いていて、リツモの視線を惹きつけた。
近づいて見てみると「これ、アジサイだ!」
リツモは薄紅色の小さな花を二本摘み、一本をフィシカに差し出すと「どうしたの?」とフィシカは戸惑い、リツモを見つめた。
- 「ねえ聞いて。アジサイの花言葉って、どこかの地域では『希望』なんだって。他の地域だと『友情』という意味もある。それから薄紅色の花は特に元気な女性を指すんだ。どれも君にぴったりだね!」
「その色は単に土壌の酸性度による科学現象なの。ちなみにアジサイは『高慢』という花言葉もあるわ」
「ちぇっ、無粋なやつだなぁ。素直に人の好意を受け止めたら?」
「どこかの吟遊詩人さんみたいに無神経じゃないの、私」
そう言いながらフィシカは本を取り出し、そっと花のページに挟んだ。
- 花期になると、ここで鮮やかに咲いた花達は人々を魅入らせ、立ち止まらせる。
Matane
- 憎まれ口を叩きながら進むと、そこには広い川が一本うねうねと彼方まで続いていた。
川辺には高い水車が聳えている。
- 川の流れで起動している水車が、カタコトと音を鳴らす。「奇妙な農場ね」フィシカは眉をひそめた。
「風車があっても作物はない。整った温室に生えていた植物は温室じゃなくても育つ有り触れたもので、水車はあるけど田畑のために使うものではないみたい。それに道が妙に真っ直ぐで、田舎にしては随分と整備されている。なんだか違和感を覚えるわ。何故かしら」
- 水車は静かに動き続けている。川のせせらぎと共に渡ってきたのは、一群の鷺。
魚をとったり、川辺に佇んだりして、生き生きとしている。
Reclaim
- フィシカは道中ずっと戸惑っていたが、気が付くと二人はある迷路園の入口の前に立っていた。
思い切って入ってみると迷路は非常に複雑な構造で、試行錯誤の末やっとの思いで迷路の中心に辿り着いた。
- 迷路園を元の姿に戻し、クタクタになりながら歩き続けた二人は、なんとか迷路の出口を見つけ出したが、辺りはすっかり夜になっていた。
「危うく迷路に喰われるところだったよ!」リツモは荷物を下ろしながら言った。
「一旦ここで野宿しよう。上り坂ばかりだし、後どれ位こんな道が続くのかな⋯」
- その晩、二人はテントの中でスヤスヤと眠ったが、出発の時になっても疲れは完全に癒えていなかった。
それほど思いもよらない厳しい旅であった。
なんとか高台に登ってみるとそこには巨大な彫像が一体、閑散とした広場に立っている。
重々しい顔つきをして、手には輝かしいノタリウムを持っていた。
「これ、教科書に載っていたノタリウムの母『エナ』よね?こんな所に彼女の像があるなんて」
フィシカは目を輝かせて像へと走り出した。
一方リツモは側で調律の準備を始めたが、調律は実行不可能だった。
- 像全体を調べてみるとフィシカは像の後ろにある奇妙なカラクリを発見したが、聡明な彼女がその仕組みを理解するまでそれほど時間はかからなかった。
すると地下からドドド⋯と震動の波が次々に伝わり、遠くからは地鳴りが聞こえてきた。
やがて震動が収まると、二人が立ち寄った四つの地に不思議な石柱が地面から現れていた。
- この複雑な迷路園にも、沢山の楽しい思い出がつまっているのだろうか?
Journey
- その時、像の土台に一節の文が浮かんできた。
『Ena』
「四つの神聖なる光が此処で交わりし時、真理への道顕れるべし」
- 石柱が光っていないと⋯
「さっき通った場所をもう一度調べてみましょう」フィシカはそう言いながら引き返した。
- リツモの調律が成功するや否や、像の手の中の巨大なノタリウムが眩しく輝いた。
その途端、調律装置が警笛を響かせ始めた。
- 石柱の輝きが消え、彫像が聳える広場の地面に地下へと続く穴が現れた。
調律装置は膨大なエネルギーの存在が、その地下にあると示している。
リツモとフィシカは顔を見合わせると軽く頷き、神経を尖らせながら暗い穴に入っていった。
- 「『浄化』機能を使ってみましょう。もしかしたらうまくいけるかもしれない。」とフィシカが提案した。
- 「エナ」は歴史上初めてエネルギーを鉱物に封じ込め、動力源として使用可能にした発明者で「ノタリウムの母」と謳われた。
cyanine
※初回のみ強制Purifyモード
- 巧妙な調律により、ついにノタリウムは次々と静まっていき、彼らは目前にある巨大な装置の調査に取り掛かった。
用途は分からず終いだったが、装置から不穏な空気を感じた二人は、何故か背筋が凍り付いてしまった。
その時聞き覚えのない声が二人の背後から響いてきた。
- 「謎が解かれている⋯」「本当だ、驚いたよ⋯」
- ノタリウムエネルギーを更に安定化させた後、装置に一行の文が浮かんできた。
『APOCALYPSE』
Main Story Chapter 3 国立ノタリウム研究所のトンネル
イントロダクション
- 「謎が解かれている⋯」 「本当だ、驚いたよ⋯」
- 突然現れた見知らぬ二人に、フィシカ達は思わず目を丸くしながら
「自分たちの街以外は全て、アル・ニエンテに侵食されたのでは⋯」
同時にそう思った。
だが、この二人は確かにそこにいる。
「色々疑問はあると思うが、悪いんだけどさぁ」赤い髪をひとつにまとめた女性が言った。
「とりあえずそこから離れてもらえるかねぇ? ソレはすっごく危ないモノなんだわ」
そう言われたフィシカ達は、慌てて高台から降りた。
すると、見知らぬ二人は装置の様子を見始めた。
どうやら装置の安定性を確認していたようだ。「⋯⋯ついてきて」と白い服を着た、黒い長髪の男性が言った。
フィシカとリツモは言われるがまま、深いトンネルを進む二人の後を追った。
- 「ここは⋯⋯」ふとフィシカは疑問に思った。
「へぇ、知らないのかよ?」赤い髪の女性が言った。「ここはな、国立ノタリウム研究所の通路」
「国立ノタリウム研究所⋯」フィシカとリツモは同時に呟いた。
耐えられなくなったリツモは二人に声をかけた。「君達は一体誰?」「別にアタシ達のことはどうでもいいだろ」
「彼女はロッサだ」ピリピリした空気が漂う中で長髪の男性が答えると
「おい、余計なことすんなよ、ネロ!」とロッサは返した。
「ロッサとネロ、ね⋯⋯」続けてフィシカが呟くと、ロッサは不機嫌そうに「フン!」と鼻を鳴らした。
- 一行は気まずい雰囲気の中、無言で深い闇の中へと進んでいく。
フィシカとリツモは疑問を抱き続けていたが、ただ黙ってついて行くことしか出来なかった。
何を聞いても彼らは答えてくれないだろう、そう思ったからだ。
暗闇の中でどれ程歩いただろうか、やっとロッサが立ち止まった。
「着いたぞ」ロッサは続けて言った。「お前達の腕を見せてもらおうか」
Apocalypse
- 目の前には、カオティックノタリウムが嵌め込まれた重厚な石門が立っていた。
しかし、このノタリウムは今まで見てきたものと何かが違う。
- 調律されたノタリウムが不気味な赤い光を放つと、石門はゆっくりと開き始めた。
「ふーん、それで『アポカリプス』の封印が解けたわけねぇ」
ロッサはそう言いながら、石門の中へ入っていく。
「『封印』が解けた?『アポカリプス』?」フィシカは考え始めた。
「『アポカリプス』はさっきの装置のこと、でも『調律』で『封印』が解けたって一体⋯⋯」
するとネロは、早くついて来いと急かすかのように黙ったままフィシカとリツモを見つめた。
フィシカは首を傾げていたが、ネロの視線から察するに周囲を調べることは諦めるしかないと考え、リツモと共に再び暗闇の中へと歩き出した。
- 石門の上に、ぼんやりと微かに光る文字が浮かび上がった。
「この門に立ち入る者は、全ての旋律を取り戻すべし」
Song for Sprites
- ロッサは出口のない円形の部屋へとフィシカとリツモを導くと「ここだ」とネロが口を開いた。そこにはカオティックノタリウムがあった。
「トンネルの果てまで辿り着くには、全ての関門を突破しなければならない」
「石門は第一関門、ここは二番目ってワケ」とロッサが言うと「なるほど、要は全部片付けちゃえばいいんだね!」
単純思考なリツモは自分の実力を見せつけたくなった。
フィシカは思うところがあったが、小さく頷いた。
- 調律が済むと重々しい笛の音が響き始め、新たな道が開かれた。
リツモは部屋の変化を好奇心に満ちた顔で見て回りこれはチャンスとフィシカも周囲を探り始めた。
「そろそろ行くぞ。まだいくつか関門があるからな」とロッサが呼びかけると
「……」一方でネロは、無言でリツモの調律装置を興味深げに見ていた。
- 部屋中の笛の音が柔らかくなり、ぼんやりと微かに光る文字が浮かび上がった。
「旋律とは調和であり、秩序であり」
「無窮の光であり、生命の泉源である」
Phoebus
- 一行は通路に沿って歩いていく。
リツモは「関門」、「挑戦」という言葉に興奮していたがフィシカは未だに明らかにされていない数々の謎に警戒心を抱いていた。
程なくして、一行は次の部屋に辿り着いた。
「よーし見てろよー!」ロッサとネロから催促されるまでもなくリツモは調律装置を手にして、室内にあるカオティックノタリウムへ向かっていく。
「リー」フィシカはそれを止めようとしたが意気込んでいるリツモを見て、仕方なく任せることにした。
- 調律の後、高らかな音が鳴り響いた。しかし室内に新たな変化は起こらない。
「やっぱり新しい通路は現れないか⋯」ロッサは壁を触って調べ始めた。
依然としてホーンは鳴り続けていたがその時、フィシカは足元から震動が伝わってくるのを感じた。
揺れは徐々に激しさを増し、突然ーー「危ない!」フィシカは叫びながら、ロッサに飛び掛った。
- ドーン!!ついさっきまでロッサがいた場所に、巨大な岩の塊が転がり落ちた。
「フィシカ!」リツモは大慌てで駆け寄る。「二人とも大丈夫!?」
「うぅ⋯⋯」「危なかった⋯⋯」
「⋯⋯」ネロも駆け寄って、倒れている二人を引っ張り起こしリツモは足元がおぼつかないフィシカを支えた。
すると、ロッサが顔を真っ赤にしながら「た、助けた⋯⋯?アタシを⋯⋯?」「えと⋯⋯あ、アタシ⋯⋯」あたふたと恥ずかしそうに言った。
ネロは沈黙しながらも、心配そうにその様子を見守っていた。
ロッサはネロが見た後、よろめいているフィシカに目を向けた。
「その⋯⋯ありがと」 「ううん⋯⋯」
四人はお互いを見た後、予想外の出来事から落ち着きを取り戻すまで少しの時間を費やした。
彼らはいつの間にか、お互いを仲間のように思い始めていた。
- 「あ!上を見て!」リツモは突然頭上を指差した。
落ちた岩があった場所にはぽっかりと穴が開き、縄はしごが垂れ下がっている。
「上だったのかよ!」「つまり⋯今までは開かなかったことになるのか?」驚くロッサに、ネロは言葉を返した。
「それは何の話かしら?」フィシカは二人に訪ねると「いや、気にするな。行こう」ロッサは立ち上がり、体についた埃を払った。
四人は気を引き締めて、縄はしごを登っていく。
先頭はリツモ、次にフィシカ、ロッサ、最後はネロ。
フィシカは登りながら、後に続く二人が小声で何かを話していることに気付いた。
二人に対する好感を持ち始めていたが、フィシカは彼らに対する疑念を完全に取り払うことは出来なかった。
そんな中で、唯一はっきりと聞き取れたのは「だから今まで見つけられなかったのか」というネロの言葉だった。
- 部屋中の高らかな響きが、はつらつとしたメロディに変化した。
ぼんやりと微かに光る文字が浮かび上がった。
「音はこの世の万物の交錯、生気を与え」
「光を七色に彩り、泉源を轟々と奔流させる」
Duelo
- 四人は縄はしごを登り切ると、円形の足場に辿り着いた。
リツモは調律装置を取り出し、誰が止めても無駄だと思う程にいつもの調子で意気盛んに歩み出た。
その一方でフィシカは、縄はしごでの出来事と聞き取れたネロの言葉が頭から離れなかった。
リツモの調律が済んだら、二人にはっきり聞いてみよう。彼女はそう決意した。
- 調律が終わると、騒々しい擦弦楽器の音が響いた。「よしっ、次行こう!」リツモは愉しげに言うと
「待って。ロッサとネロに質問があるの。さっきの『だから今まで見つけられなかった』ってどういう意味かしら?」
「あなた達は何故ここにいるの?それから、このトンネルの果てに一体何があるの?」
「⋯⋯」 「⋯⋯」
「わかったよ」しばらくの沈黙の後、ようやくロッサの口が開いた。「んじゃ、教えてやるよ」
「アタシ達は、」ロッサは少し言い淀んだが、続けて言った。「お前達を止めに来た」
- 「つまり、お前達が『アポカリプス』の一つ目の封印を解いたことで警報が鳴った。それでアタシ達は駆けつけてきたんだ」
「僕達は沈黙辺境守備隊の一員」ネロは服からバッジを取り外して見せた。
「沈黙辺境⋯⋯」「守備隊?」フィシカとリツモは同時に言葉を発した。
「まぁ、そう言われてもすぐには理解できないだろう。特に『外の世界』に関することは」
「だが、説明してる暇はないんだ」とロッサが言った。
「とりあえずこの守備隊手帳を渡しておく。中にトンネルの地図が載ってるから」
- 国立ノタリウム研究所のトンネルは沢山のルートがあって色々な場所に繋がっている」
「お前達と歩いてきた通路は、沈黙辺境守備隊第二支部への近道だ」
「そこへお前達を連れ帰る。そして調査を受けてもらう」
「『アポカリプス』の封印を解いたのは、非常に深刻なことだ」
「だけども」ロッサはフィシカを見つめた。「お前達から悪意は感じられない。アタシの命も救ってくれた」
「言伝えでは、この研究所のトンネルの果てには、重大な秘密が隠されているらしい」
「沈黙辺境守備隊には、大事な二つの任務がある。
『アポカリプス』の封印を守ることと、トンネルの果てに辿り着く方法を探すことだ」
- 「お前は特別だ」ロッサはリツモを見つめながら言った。
「ここまで進んで来られたのは恐らく、カラクリに特殊な共鳴を与える、お前の力の影響があると思う」
「詳しい話はトンネルの果てに着いた時にでも話すか。それと、初めて会った時嫌な態度だったよな。すまなかった」
「助けてくれてありがとう」とロッサは言った。
続けてネロが話し始める。「ここからのカラクリは連続しているらしい。つまり途中で休む時間はないということ」
「⋯⋯進むなら十分準備を整えてからがいいだろう」
- 騒々しい音は徐々に穏やかになり、高温と低音が滑らかに纏まった。
ぼんやりと微かに光る文字が浮かび上がった。
「自今の旅路は険崚となる。用心せよ」
「祝福されし者に、羽ばたきがあらんことを」
Androgynos -1st Phase-
- 「準備完了!行こう!」リツモはやる気満々で答えた。
四人は通路の向こう側の部屋へと進んでいく。
- 周囲から激しい打音が響いてくる。それはまるで警告をしているかのように聞こえた。
「あまり長居できそうにない。一旦離れよう」とネロが言った。
- 通常の調律では、このカラクリを共鳴させることは出来ないのかもしれない」とネロが言った。
- 慌しい打音は緩やかになり、リズムは落ち着きを取り戻す。危険な気配も消え去ったようだ。
ぼんやりと微かに光る文字が浮かび上がった。しかし、一部が欠けているように見える。
「旋律は聖なる恩寵であり、沈黙は聖なる啓示である」
「汝、沈黙を聴け⋯」
Androgynos -2nd Phase-
※初回のみ強制Purifyモード
- 慌しい足音と打音が入り混じる中でさっきまでいた部屋によく似た、もうひとつの部屋に入った。
「ねぇロッサ、終わったら絶対『外の世界』のこと教えてよ!」
「もちろんさ。じゃ、始めてくれ!」
- トンネルの中に轟音が鳴り響く。
「何が起こったの!?」とリツモが聞くと
「トンネルの果てへの道が開いたかもしれない。急いで行こう!」ネロが答えた。
- 落ち着いたリズムに変化が起こる。
その時、全ての部屋の音楽が聞こえるようになった。
ぼんやりと微かに光る文字が浮かび上がったが、一部分は読み取ることが出来ない。
「⋯⋯手にすることが出来ないものは、手にするな。背反してはいけないことは、背反するな。⋯⋯妄想⋯⋯ノタリウム⋯⋯」
You are the Miserable
※初回のみ強制Purifyモード
- 調律を終えると、とてつもなく大きく重い音が部屋中に轟いた。反射的に四人は耳を塞ぐ。
「な⋯⋯なんて恐ろしい音!」響き続ける音と共に、石壁も震動し始めた。
だんだんと揺れは強くなり、石壁には亀裂が走って崩れた石がポロポロと落ちてくる。
「危ないっ!」
崩れた石は夕立のように降り注ぎ、オルガンのようなカラクリは一部分が壊れてしまった。
四人は狼狽しながら安全な場所を見つけると、両手で頭を守りながら身を隠した。
ドゴーン!
更に大きな石壁が崩れ、勢いよく地面に落ちて、砂煙が巻き上がる。
- あまりにも強い震動と砂煙で四人は気を失ってしまった。
ーーしばらくして、周囲は静けさを取り戻した。
どれ程の時間が経っただろうか。瓦礫の中でリツモはようやく目を開いた。
「こ⋯これは⋯⋯」
- パイプオルガンは、もう音を出すことが出来ないようだ。
念入りにパイプオルガンを調べてみると、角に刻まれた小さな文字を調べた。
「待ってて、エナ」
Main Story Chapter 4 果てしない大空へ
イントロダクション
- 「こ⋯⋯これは⋯⋯」「なんだこれは?」
リツモが興奮して叫びながら、瓦礫の中から這い上がり、遠くにある巨大な機械へ向かって走り出した。
- 「マジでここにあったかよ⋯⋯」ロッサが言った。
守備隊手帳を持っている手に力を入れながら、フィシカは静かに立ち上がった。
「飛行器『シエル』?」手帳に書かれている唯一読める単語を、フィシカが口にする。
ロッサは驚きながらフィシカの方に視線を向く。「なぜそれを?」ロッサの言葉を聞いたネロはフィシカが持っている手帳を指す。
「もう教えてもらってもいいかしら?」フィシカが続けて言った。「『外の世界』について」
- 「はあ⋯⋯」息をついたロッサが続けて言う。「どこから話そうか」
「おーい」遠くから伝わってきたリツモの呼び声がロッサの言葉を遮った。「早くついて来てよ!」
「⋯⋯子どもみたい」ネロが呟く。
「歩きながら話しましょう、ロッサ」フィシカが歩き出す。「ああ」ロッサは応えた。
- 「この迷宮はアル・ニエンテが起きる前に出来てる。元は避難所ってさ」
「避難?」疑問に思うフィシカ「ああ。 ノタリウムの研究って非常に危険だからな」
「そんな、危険なはずが⋯⋯」フィシカが考え始めた。
「エネルギーの狂いによってロスが生じ、それによって発生したのがアル・ニエンテ」
「ノタリウムを調律することによって、アル・ニエンテを逆作用させることができた」
「調律を通じて秩序をもたらし、エネルギーを安定し共鳴させる」
呟きながら何かを気づくフィシカ。「もし、もしかして⋯⋯」
フィシカを見るロッサ。「やっと気付いたか?」
Raise (Radio Edit)
- 「アタシたちはアル・ニエンテ、狂った世界に中に生きている」
ロッサが続けていった「狂った世界の秩序は、ノタリウムを調律することによって整える」
ロッサの話を続くようにネロが口を開く「では、アル・ニエンテが起こる前はどうでしょう?
その時、前からリツモの叫び声が伝わってきた。
「うわ!なんなんだこの光は?」
「凄いエネルギーだ!これは調律しないと前に進めないな!」
- 「秩序はエネルギーをもたらす」ネロが言った。
「しかし秩序が乱れていない世界では、過剰なエネルギーを生み続けると最終的にエネルギーは飽和し、そして負荷を超え、深刻な事態になります。
「⋯⋯『アポカリプス』⋯⋯」フィシカが呟く。
「そうさ」その声に応じるロッサが続けて言った。「もともとノタリウムは、兵器として作られた」
ネロがロッサの話を続ける。「そのうち威力が最も強大なのは『アポカリプス』である」
- 「ノタリウムは諸刃の剣」ネロが言った。
「いや」ロッサが続けて言った。
「ノタリウムは危険でしかない、こんな物は最初から存在すべきじゃなかった」
話を聞いたフィシカの脳裏に、なぜかふと両親の顔が浮かんだ。
心の奥底に悲しい感情が湧き上がってきながら。
Geranium
- 「昔、アタシたちも調律装置を作るのを試したのさ」ロッサが言った。
遠い所を眺めながら、ネロと二人は静かに歩く。
フィシカは抑えきれず。「それで?」
遠くにいるリツモの背中を見つめながら、ロッサは緩やかに口を開いた。
- 「結局⋯⋯」ロッサが続けて言った。「アタシたちにはリツモみたいな才能はなかったよ」
「リツモの才能?」フィシカが尋く。
「失敗したよ」
「チッ⋯⋯」ネロの言葉に反応して、都合が悪そうな表情になるロッサ。
「僕達は」
- 「それで」話を変えるように、ロッサは素早く言葉を切り出した。
「アタシたちは村から離れて、沈黙辺境守備隊に入ったのさ」
「償いたい」「いや」ネロを否定するロッサ。
「贖いたい」「違う!」強く否定するロッサ。
「罪悪感から」「そうじゃねえ!」たかぶった声で。
そして黙り込むフィシカ。
「ノタリウム管理局のどの資料にも、世界中がアル・ニエンテに呑み込まれたと記載されている」
「私たちの村以外全部⋯⋯」
静かに考えながら、フィシカは何かが引っかかるように感じた。
- 「あのさ」会話に参加するようリツモが振り返ってきた。
「さっき話してた守備隊って一体なんだろう?」
「組織だ」ロッサが続けて言った。「アル・ニエンテを維持する為の」
「『アポカリプス』の封印を保ちながら、隠されている道を見つけ出し」
「そして旧世界の遺物を調査する」ネロがロッサの言葉に付け加えた。
「ついこの間、南のアル・ニエンテのエネルギーに異変が観測された」ロッサが続けて言った。
「それでアタシたちは状況を確認するためにここに送り込まれたのさ。地図を辿っていたらこの迷宮の近くに着くと」
「そこで君達に出会った」ネロが言った。
「ふん⋯⋯ちょうど兵器の封印を解こうとしているお前たちによ!」ロッサが声のトーンを上げた。
「うわ、こわっ!」ロッサの真剣な口調に驚くリツモ。
- 「はあ」嘆くロッサ。「ノタリウムの調律失敗は本当に恐ろしかった」
「僕達は運が良かった」ネロが言った。
「でも」空を見上げるロッサ。「みんなアタシたちみたいに、幸運に巡り会えるとは限らないってさ」
恐ろしい光景がフィシカの脳裏によぎったが、すぐそれを考えるのをやめた。
edge of the world
- 「待って」フィシカがふと気づく。「あなたたち、さっきアル・ニエンテを『維持』するって?」
ネロが頷いて、ロッサもそれに合わせるように。「そうよ」
「ええ!」リツモは目を丸くする。
「でも、でもさ、それじゃあ世界はモノクロのままになっちゃうよね?」
「沈黙辺境守備隊なら、かなりの技術力を持っているじゃないかしら」
落ち着いた声で続けるフィシカ。「どうしてその技術で世界を戻そうとしなかったの?」
鼻であしらうロッサ。「お前たちはどこまで甘いんだ」
- 「いくら目覚ましい才能を持っていてもさ」ロッサが続けて言った。
「お前たち二人だけでこの世界を元に戻せるって思っているのか?」
「君達はそれを見て見ぬふりしてきたよね?」苛立ちと憤りを感じるリツモ。
「沈黙辺境守備隊は一体どういう組織なの?どうしてアル・ニエンテを維持するか」
「教えてもらってもいいかしら?」フィシカが訊ねる。
しかしフィシカにはさらに知りたい事がある。
一体外の世界にはまだ何があるか。
- 四人が対峙し続ける。
ようやく、ロッサがため息をした。
「はあ⋯⋯アル・ニエンテが発生した瞬間を目にしないと、その恐ろしさが分かるはずもないさ⋯⋯」
言い淀むロッサ。
隣に立っているネロは、そんなロッサを見て珍しく口を開けた。
「沈黙辺境守備隊は、僕達みたいな生存者によって構成されている」
「みんな悲惨な災厄から生き残れてきた人間だ」ネロが続けて言った。
「僕達はノタリウムの危険性をよく知っている」
「やむを得ない状況じゃない限り、調律は厳禁だ」
「世界を戻すなど、もってのほか」
ネロがさらに続ける。
「旧世界の装置などを調査する時にだけ、最低限の調律行為が許される」
「旧世界に残されたテクノロジーや情報を調べるのも、それをいつか再び兵器として使われるのを防ぐためだ」
「人々がノタリウムを使うのを抑制しなければ、また新たなアル・ニエンテが発生するかもしれない」
「そうなると、今度は生き残れる場所があるかどうか」ロッサはネロの話を続ける。
「もともとお前達を守備隊の第二分局に送ってから、そこに戻って全てのカラクリを『逆調律』するつもりだったが」
ロッサが崩れた迷宮の出口に振り向く。
「これじゃしばらく戻れそうにないな」
「今はひとまずこの飛行器を持って変えるのが重要だ」ネロが言った。
「戻ってから別の小隊にこのあたりの封印を確保してもらう」
- どうしても、対立は避けられないのか。
一瞬だけ、そんな考えが四人の頭によぎる。
NIENTE
- 「いや!」リツモが声を上げる。「よく分からない!」
「どうして調律しちゃだめなのか?世界の色を取り戻すってのはいいことじゃないか?」
「ならお前、調律を失敗した結果を背負えるとでも思っているのか?」冷たい眼差しでリツモを睨むロッサ。
「お前が運良く生き残れても、大事な人を失くしてしまうかもしれないぞ」
- ひたむきな表情でロッサに向かうリツモ。「僕の調律は、絶対失敗しない」
- お互い譲る気がなく対峙している。
「今そんな争いをしても意味がないわ」フィシカが言った。
「ネロ、沈黙辺境守備隊なら、さらにこの世界に関する資料を保存しているよね?」
ネロが頷く。
「あなた達に付いて行く代わりに、それを見せてもらっていいかしら?」フィシカが訊ねる。
「わかった」「ダメ!」同時に応えるネロとロッサ。
「アイツらに肩入れんなよ!」怒りながら言うロッサ。
「苛立っているね」ネロが続けて言った。「彼たちは君を救ってあげたじゃないか」
「それと飛行器を持ち帰るためには、確かに彼たちの協力が必要だ」
「くっ⋯⋯」言葉が続かないロッサ。「⋯⋯わかったよ」
- 「ふん、まあ、自信過剰ってだけじゃないけどさ」ロッサがそう考えた。
「絶対、絶対守ってみせるからな⋯⋯」リツモは強く思う。
沈黙しているネロの表情から何も読み取れない。
フィシカの中に色んな思いが浮かんで消えていく。
ようやく、彼女の考えがまとまった。
Protoflicker
- そんなに調律が好きなら、この飛行器を再起させてみたらどうだ」煽るような口調で言うロッサ。
「どうすればいいの?」フィシカが訊ねる。
「迷宮の中の物と原理は同じだ」ネロが言った。「特殊な共鳴を持っている」
「そうさ」ロッサが言った。
「最後のロックを外した時、エンジン部には巨大な共鳴がかかる」
「つまり調律が成功できれば空に飛べるさ」
「空に!」リツモが声を上げる。「任せろ!」
- 「この共鳴装置は本当に珍しいね」フィシカが思った。
「早く動作の原理を知りたいね」
「おーい!フィシカ!早く来てよ!」遠くにいるリツモが呼んでいる。
地面も共鳴に連れて揺れ始めている。
「今行くから」応えたフィシカは三人の方に向かって走り出す。
- 「うっ⋯⋯」複雑な表情をするリツモ。
「ふん、調子に乗るなよ、この装置を再起させるのはそんな簡単なことじゃないから!」ロッサが言った。
隣でリツモを励ますフィシカ「もう一度試してみよう、頑張って」
- 装置の下に表示されている赤い文字を、フィシカが見落としていた。
注意:目的地が既に設定されています。変更はできません
Stasis
※初回のみ強制Purifyモード
- 「ひこーき!ひこーき!そーらへーとぶ!」
リツモはご機嫌に叫びながら、子供のように甲板に駆け上がる。
他の三人もリツモの後につきながら、巨大な震動も徐々に緩やかになった。
それでもフィシカの中に何かが引っかかっていた。
ロッサとネロの立場における対立じゃなく。
初めて空に飛び立つ不安でもない。
やはり何かはっきりしていないことが残っている。フィシカはそう思った。
- 「操縦は大丈夫そう?」コクピットの中にいるロッサがネロに訊く。
「資料に書かれているのと同じだ。大丈夫」ネロが応えた。
「ああ、じゃあ後は任せたぞ。とりあえず守備隊の本部に戻ろうか」
ロッサがフィシカのほうに向かう。
「まあ何かあったらお前の技術でなんとかしてくれよ、へへ」ロッサが意地悪そうに言った。
ダッシュボードにある色んな計器を見て、フィシカはなぜか前から知っているような気がした。
「じゃあ、離陸するぞ!」ロッサが指令する。
コクピットの外からリツモの興奮した声が伝わってくる。
- ほこりまみれな飛行器だが、スムーズな作動音を響かせた。
まるで果てしない大空を期待して。
Main Story Chapter 5 神秘との邂逅
イントロダクション
- フィシカは飛行器のデッキから遠くを眺めている。
ロッサが操縦室から出てくる。
「何か考え事か?」ロッサが尋ると「⋯⋯なんでもないわ」とフィシカが返した。
「⋯⋯」
「お前ら、やっぱり考えは変わりなしか?」「世界を救うこと?」フィシカが尋ねる。
「ああ」「ええ」フィシカが答える。
- 「へへっアタシもさ」とロッサが返す。
「でもなんでだ?なんでそんなに平気な顔していられるんだ?ノタリウムってヤバいんだろ?気をつけないとー」
「この世界が好きだから」フィシカが答える。「この世界が好き」
「朝の太陽、白い雲、吹き抜ける風。それにー生い茂る草木に見たことのない花、大地の香り、水の煌き」
「子供の頃は、私が育った村がこの美しい世界の全てだと思っていた」
「でも、リツモが初めて調律を成功させたとに気づいたの」
「それが想像よりもずっとずっと広くて大きかったことを」
「私、思ったんだ。この世界の本当の姿を見てみたいって」
「⋯⋯」ロッサは何も言わずフィシカを見つめ、フィシカはロッサをじっと見つめる。
「そっか、分かったよ」
「それで、この世界が、お前が覚悟する程のお前が犠牲になる程の価値があるというのか?」
「⋯⋯実は、よくわからないの」とフィシカは言う。
「でも、怖いからって何もしないのは、あきらめたのと一緒よ。」
「私はこの世界が好き。だから、私はリツモを信じる」
「やっぱりそっか。」
「アタシのお前と出会ってから実はそんな予感がしてたのさ。そうだったんじゃないかってな」
- そのとき、操縦室からあわててネロが飛び出してきた。「大変だ!」
三人でデッキから操縦室に駆け込むと「ナビゲーションが利かなくなったんだ」とネロは告げた。
「目的地が既に設定されています。変更はできません」ディスプレイいっぱいに大きく赤い文字が浮かんでいる。
「どうなってるんだ?飛行器は何処へ向かっているんだ?」
「⋯⋯わからない」
操縦室であちこちを探り操作を試みるも手がかりがない。
飛行器はまだ操縦できない。
刻一刻と時間が過ぎる。黒い雲に覆われた空の下、何処を目的地に行くのか依然としてわからぬまま⋯⋯
- 一行が途方に暮れていたその時、外から轟音が響き激しく揺れ出した。
「何だ!?落っこちてしまうの!?」ロッサが大声で叫ぶ。
フィシカは操縦室から出て外を見る。「な……何よコレ!?」
異様に変化する目の前の景色に、フィシカはどうしようもなく怯えるしかなかった。
墜落こそしていないものの、雲から伸びた二本の鎖は飛行器に絡まり、地上に叩きつけようとしている。
操縦室から飛び出した三人は、その光景に皆驚きを隠せない。
「これはいったい⋯⋯」と口にしかけるも、リツモは状況を理解できなかった。
また激しく揺れる。飛行器は鎖によってたちまち高度を下げていく。
誰かが言葉を継ぐまえに、足元に激しい衝撃が伝わり、四人はなすすべもなく叩きつけられた。
「フィシカ、⋯⋯あっ」
リツモは地面に倒れるフィシカに手を伸ばそうとする。しかしわけもわからず何かにぶつかり、その痛みで意識を失ってしまった。
- 目の前は真っ暗だ。
- リツモが目を開けたとき、どれくらい時間がすぎただろうか。
意識を取り戻すまで、しばらくの時間が経っていた。
彼の後ろには鎖で縛りつけられた飛行器があった。
「フィシカ!」リツモがフィシカに駆け寄り、声を大にして呼ぶ。
「うぅ⋯⋯」フィシカはリツモを見てから、辺りを見回す。「ロッサとネロは?」
「わからない⋯⋯僕が目を覚ましたときにはもうこの有様だったんだ⋯⋯どこに行ってしまったんだろう?
リツモとフィシカは周辺をくまなく探してみたが、ロッサとネロの気配さえ見つけられなかった。
彼らは奇妙な場所へ堕とされてしまった。
後ろは底なしの渓谷で、対岸すら見えない。
目に前には暗い森が広がっている。
飛行器にからみついている鉄の鎖は、それぞれ砲台のような装置が発射されたようだ。
それら以外にあるのは、重苦しい沈黙だけであった。
Yukianesa
- しばらく探索していると、リツモは森のわきに小道を見つけた。
その道を進んでいくと、前方にノタリウムがはめ込まれている見覚えのある石柱が立っていた。
しかしその石柱は更に巨大で、その上には雪の結晶の様に複雑なオブジェが見える。どうやらこれは凍てつく冷気も放っているようだ。
「こ、ここ、寒いよ⋯⋯!」リツモが声を上げた。
「⋯⋯このノタリウムを調律するしかないわね」フィシカがそう言う。
「そうだな、よし!」リツモが気合を入れて臨戦態勢に入る。
「うん⋯⋯」今はこの方法しかないだろう。しかし、フィシカは一抹の不安を拭い去ることができなかった。
- 石柱は青白い光を放ち、前方に静寂に包まれた場所を照らす。
すると、一本の狭い通路が出現した。
「行こう!」とリツモ。
「待って。ここ⋯⋯何か変だわ。もう少し調べてみたいの」
「あ⋯⋯、ちょっと待った。見てよ、何か書いてあるぞ!」
「私が調べるわ」とフィシカは書かれていた文字を見る。
- 「上には何て書いてあったの?」とリツモが尋ねる。「⋯⋯浄化⋯⋯支配⋯⋯力⋯⋯」とフィシカがつぶやく。
「どういうこと?」
「多分『浄化 (purify) 』機能を使えなければ、ここを起動することは出来ないって意味だと思うの⋯⋯」
「でも起動って、何を?」
「もしかしてまたアポカリプスのような⋯⋯」とフィシカは口元に手を添えた
「だけどもし起動しなかったら、ロッサとネロも見つけられないのかな?」とリツモが尋ねた。
「ええ⋯⋯おそらく。今は『浄化』機能で試してみるしかないわね」
- 調律後、石柱に文字が光り沈黙の歴史を語り始める。
「⋯⋯異常気象、毎年の大雪、飢饉」
「人類は生き残るために、自然の力を操る研究を開始した」
「そして、遂に大雪を操るようになったのだ⋯⋯」
Lightning
- 狭い道を歩いていると、次の石柱を見つけた。
黄色のノタリウムが光り、パチパチという音がする。
「あ、痛っ!イタタタタ、何だコレ?」とリツモが痛がる。
「これは静電気よ。気を付けて」とフィシカが注意を促した。
- ノタリウムが光だし前方の静まり返った場所を照らす。その光は、また新たな小道を指している。
「調べてみる?」リツモが尋ねた。
「いえ⋯⋯。これが何か大体わかったから⋯⋯」とフィシカが答えた。
「えぇー!早く教えてよ!」とリツモが不服そうに言った。
「本当に『起動』した後に教えるわ。まだわからないところがあるの」フィシカが冷静に答える。
- 石柱の文字が静かに光を放っている。
「⋯⋯大雪の次、人類は雷を⋯⋯」
「その響きを制御し⋯⋯人類は万物には響きが内在し、響きこそが存在の証明だということに気が付いたのだ⋯⋯」
Rainmaker
- リツモとフィシカが小道をさらに進むと、三本目の石柱を発見する。
銀色のノタリウムが光り、雨が降っているような音がした。
「わっ。ここなんか湿っぽくて気持ち悪い」リツモが不快そうに言った。
「おそらく石柱の共鳴エネルギーは気象と関係しているんだわ⋯⋯つまり、支配するのは自然の力、ということかしら⋯⋯」フィシカがぶつぶつと呟いている。
- 「よし、これでばっちりだ!」とリツモは自信満々に言う。
「ええ。始めましょう。そろそろ『起動』する頃だわ」とフィシカがこれに答えた。
「つまり『起動』前に何かが起きるってこと?」
「違うの。私は『起動』後に何か起きるかが心配なの」とフィシカが答えた。
「もしかすると私たち、アポカリプスのときみたいに、手を出すべきではないモノに⋯⋯」
フィシカがそう言うと、リツモは行方がわからないロッサとネロのことを思い出し、不意に辛く苦しい表情を浮かべる。
「本当はこの石柱のことがわかるまで、しばらく調律はしないほうがいいと思うけど、この限られた状況じゃ、やってみないと解決策は見つからないし⋯⋯仕方ないわね」
「そうだな」リツモがフィシカをじっと見ている。
二人は次の石柱に向かって歩みを進める。
- 「⋯⋯旋律は響きの秩序であり、秩序はエネルギーの源となる⋯⋯」
「こうして最初のノタリウムは生まれた」
石柱の文字は明滅を続ける。
「⋯⋯だが人類は神にはなれない。嵐が襲えば、じきに全てが呑み込まれる⋯⋯」
TεμπεΣT
- 遠くに見えるノタリウムは薄い緑の光を放ち、辺りには強い風が逆巻く
「うわぁああっ風に吹き飛ばされそうだよ!!!ここの風、本当にヤバい!!!」
「こんなに強い風なんて初めてよ。リツモ、気を付けて!!!」とフィシカが風の中で話す。
- 「⋯⋯竜⋯⋯⋯⋯巻⋯⋯」フィシカが石柱に刻まれている文字を口にした。
「どういうこと?」リツモが尋ねた。フィシカは「こういう強風の名前よ」
「上に『竜巻』は大災害を引き起こすって書かれているの」
「私達の故郷くらいの大きさの村なら、一瞬で吹き飛ばされるわよ」と答えた。
「恐ろしいな!」
「もし、ノタリウムを使ってこの力を取り込んでしまったら、どうやって太刀打ちするんだよ⋯⋯」
「わからないわ⋯⋯」とフィシカが答えた。彼女はロッサとネロが口にしたことを思い出した。
「だからノタリウムは兵器なのね⋯⋯」
- 四本の石柱を『起動』すると、小道に立ち込めていた霧が晴れ、五本目の石柱が中から浮かび上がる。
抗えない誘惑を放つこの石柱
今まで感じた事が無いほど強く共鳴した
リツモとフィシカは反応出来ずに石柱が発する力に呑まれ、徐々に考えることが出来なくなってゆく。
それから、二人は誘われる様に、一歩ずつ一歩ずつ石柱に向かって歩く⋯⋯
- 条件を満たしていないと⋯
また新しい小道を見つけたが、二人は最初の石柱に戻ることにした。
「え?なんでまた戻るの?それにまだロッサとネロも見つかってないんだよ?」とリツモが怪訝そうに言った。
「それぞれのノタリウムに『浄化』モードで調律してみたいの。
もしかしたら何かわかるかもしれないわ」とフィシカが答えた。
- 「嵐の次は竜巻、異常気象はまるで神様の罰だ」
「多くの人は死へ、多くの村を滅ぼした⋯⋯」
フィシカとリツモの後影が徐々に遠ざかっていく。
「⋯⋯だが、人類はこれに臆することなく、ノタリウムの改良を続けた⋯⋯」
SolarOrbit -Connected with the Espabrother-
※解放にはこのチャプターの4曲をPurifyモードでクリアしなけらばならない
- 調律完了後、強大な力が治まり、リツモとフィシカは我に返ると石柱が発する重苦しい壮厳な雰囲気に圧倒された。
「ぼ⋯⋯僕達は一体何を?」とリツモが尋ねた。
「これが本当の『起動』だったのね。でも、これは一体⋯⋯?」とフィシカはなすすべのない様子だ。
- いやぁ~、素晴らしい、実に素晴らしいですよ!」
フィシカとリツモがまだ落ち着きを取り戻さないうちに、二人の背後から声が聞こえてくる。
「やっと『起動』しましたか⋯⋯待っていました。全て計画通りですよ」
ロッサでもネロのでもない、聞いたことのない声。
二人が振り向くと、そこにはマントを纏った三人の見知らぬ人物が立っていた。
- 「やあ。待っていましたよ」
「ここはノタリウム管理局本部、ノタリウムを生み出す場所」真ん中に立つ人物が笑みを浮かべながら言った。
- 「それぞれの石柱のノタリウムに『浄化(purify)』モードで調律してみたいの。もしかしたら何かわかるかもしれないわ」とフィシカが答えた。
- 「⋯⋯やがて、人類はノタリウムを利用して、『天』の力を支配した⋯⋯」
「人類は神の力を手にしたのだ⋯⋯」
石碑の文字の下に、一行だけ小さな文字が浮かんでいる。
「だが⋯⋯神は唯一の存在⋯⋯」
Main Story Chapter 6 生命の音
イントロダクション
- 君達は知っていますか?歴史を動かす者は何か⋯⋯
「発明」では無く、「発見」です。
鍵となるものは、常にそこに存在している。
人類が火を発見したのもそうです。力を発見し、自然の法則を発見した。
人類にはそれらを発明する力などありません。
そして、彼らはついに「音」を発見した⋯⋯万物には全て、内在する「音」がある。
何かに接触される必要も、あえて作りだす必要もなく、ただそこに、内在する音。
それこそが、ノタリウムの根源⋯⋯
- 遥か昔、私達はある技術を発見しました。
そう、「私」ではなく「私達」が。
それは、「音」を支配する技術のはずだった⋯⋯
観測し、設定し、精錬し、抽出し⋯⋯
そうすれば、我々は万物の「音」を支配できる⋯⋯
「音を支配することは、物そのものを支配することと同じ。
石一つの「音」。雨一滴の「音」。
薪が燃えている「音」。花一輪の「音」。
そう、我々は小動物の「音」ですら支配できる。
- やがて、「音」を特殊な共鳴技術で凝縮し、融合することで、より強大なエネルギーを産むことが分かりました。
エネルギー。
エネルギーがあれば、技術を発展させ、生の欲求を満たし、武器を作ることができる⋯⋯
物事の本質を支配し、エネルギーを支配し、そして全てを支配することができる。
monolith
- そして、まさにそれが原因で、我々は一度目の危機を迎えました⋯⋯
人々はまだエネルギーを安定させることができなかった。
それゆえ、制御不可能なエネルギーが漏れ出し、破壊が始まった。
そうなってやっと⋯⋯科学者達はようやく対策を考え始めました⋯⋯
- だが災害は意外にも進歩を生んだのです。
エネルギーを支配する試みのなかで、我々は「調律」という名の技術を発見しました。
共鳴によって万物に内在する秩序を維持し、「音」のエネルギーを安定させる技術です。
我々はついに、それらの技術を掛け合わせ、万物からエネルギーを取り出し、そのエネルギーを固定することに成功したーー
このようにして、世界で一つ目の「ノタリウム」ができたのです。
- 「ノタリウム。私達の技術の結晶。エナ⋯⋯」謎の男が言った。
「エナって、ノタリウムの母の、エナのこと?」フィシカは尋ねた。
「その通り。そしてエナは⋯⋯私の妻だった。」
男の背後にある二体の機械人形が空中にエナのホログラムを宙に映し出した。
「ノタリウムは、エナと私が発明した。」
「じゃ⋯⋯じゃあ、あなたはもしかして⋯⋯」
「その通り。私はハルパス、ノタリウムの管理局長です。
「まさか!それは数百年前のできごとのはずよ!」フィシカは叫んだ。
「ひゃ、数百年前⋯⋯!?」
ノタリウムの歴史をよく知らないリツモも、フィシカの言葉に驚いた。
「ハハハ、信じられないようですね。だが私は君たちの面前に立っている。」
「君たち、いや、名を呼ぼう。フィシカ。」ハルパスは後方を振り返り、言った。
「そして、リツモ。君たち二人の名は、歴史に刻まれるでしょう。ハハハハハ。」
「どう言う意味?」フィシカが尋ねた。
だがハルパスは手を振り、その問いを制した。
「じゃあこれからは?一体、何が起こるというんだ?」リツモが尋ねた。
「フン。」ハルパスは冷たく笑った。「人類とは欲張りな生き物ですね。」
- ノタリウムのエネルギーのおかげで、人々はすぐにも都市を再建することができたのです。
全ては、ノタリウムの力。
Tithonus
- この技術が世に広まるにつれ、あらゆる国がこれを競って採用し、開発、改良、競争しはじめ、そして度重なる事故が起こった。
やがて各国はノタリウムの技術を求めて争い、多くの戦争が起こった。
- 「それがノタリウム戦争?」リツモが尋ねた。
「違うとも、そうとも言える。」ハルパスは言った。
「それはきっかけに過ぎなかったが、一度始まったものは収拾がつかない。」
「ああ⋯⋯あの時の人類は愚かすぎて知らなかったのです。」
「神の加護を受けたものだけが、このエネルギーを掌握できると言うことを⋯⋯私と、エナだけが⋯⋯」
フィシカは、何かとてもおかしいと感じた。
エナはとっくに死んだって、どの本にも書いてあった。
まさか、エナはまだ生きているの?それに、ハルパスが生きているのはなぜ⋯⋯?
「だがエナは⋯⋯」
「制御不能なノタリウムのエネルギーに過剰に接触して体が蝕まれ、ついに倒れた⋯⋯」
ハルパスは下を向いた。
「エナは倒れる前に言いました。全く新しいノタリウムを発明し、自分の残り少ない生命をそこに封印したのだと。」
「なんと言う偉大さでしょう⋯⋯」ハルパスは言った。
- 「そんなこと、ありえない!」フィシカは怒った。
「ノタリウムを生物に利用することは、規則で禁止されているわ!万一事故が発生したら⋯⋯」
「愚かなことを⋯⋯」ハルパスは言った。
「君たちは、神の領域に踏み入ることができるのですよ。なぜ己を束縛する必要がある?」
「そんな問題じゃないわ!」フィシカは言った。
いつも冷静なフィシカがこんなに怒ったところを、リツモは初めて見た。
「どういうこと?フィシカ。」リツモが尋ねた。
「もし⋯⋯ノタリウムを生物利用したら⋯⋯」
フィシカは説明しつつも自分もどう説明すればいいか分からなかった。
ただ理論上は、ノタリウムを生物に利用すれば、魂ごと完全に消失してしまう可能性があると言われている。
アル・ニエンテ。
「リツモ。ノタリウムは⋯本当はとっても危険なものなの。」フィシカは言い方を変えた。
「ロッサとネロが言ったことを覚えている?恐ろしい経験をしたと⋯⋯」
「それはあなたの友人が、凡人だということですよ。科学者として、神聖な真理を探求せずにいられるでしょうか?」
ハルパスは言った。「だが残念なことに、神の加護を受けたものにしか、その資格は無いのです。」
「ちょっと待て。お前、ロッサとネロの居場所を知っているのか?」リツモは尋ねた。
- 「安心しなさい。あの子たちは安全です⋯⋯ハハハハ。」ハルパスは言った。
機械人形がロッサとネロの姿を宙に映し出した。
二人は床に倒れ、部屋に閉じ込められている。
「二人を閉じ込めたのか!」リツモは怒った。
「そう怒らずとも、彼らは安全だと言ったはずです。」ハルパスはもう一度言った。
「君たちが大人しく言うことを聞きさえすれば、君たちも彼らも、すぐにここを離れることができますよ。」
「私たちに、何をしろと言うの?」フィシカが尋ねた。
「なに、簡単なことです。ある装置を起動してくれさえすればいいのですよ。」ハルパスは言った。「一緒に来なさい。」
- 戦争は一旦始まれば、終わることはない。人類がすべて消失するまで⋯⋯
ああ、愚かで、偽善に満ちた人類よ。神聖なるノタリウムを穢すとは⋯⋯
Weg
- どこまで話したかな?ああ、思い出した。全く新しいノタリウムでしたね。
凡庸で、貪欲で、偽善に満ちた人類。
世界各国がノタリウムの生物研究を阻止しようとしている。
だがその陰では金持ちや権力者たちが、ノタリウムによって不老不死を得ようと技術発展を進めている。
ノタリウム管理局も秘密裏に関連技術を研究している。
だがエナがいなければ、全ては災難に終わる⋯⋯
- 「私は数百年もの間、君たちのような人類が現れるのを待っていたのです。」ハルパスは言った。
「ノタリウムの技術を理解し、調律の才能を持つものをね。ふふ、まるでエナを二人に分けたようだ⋯⋯」
リツモとフィシカは、ハルパスの後ろに回った。
ハルパスが話に気を取られているうちに、フィシカがリツモに耳うちした。
「今はあいつの言うことに合わせるふりをしましょう。」
「でもまだ調律しちゃダメよ⋯⋯その時がきたら方法を考えるから。」
「うん、分かった。ぼく、彼はまだ何かを隠しているような気がするんだ。」リツモは言った。
- 彼らは長い道のりを歩いた。
「着きました、これです。さあ、これを呼び覚ましなさい、リツモ。」ハルパスが言った。
そこには、石の壁にはめこまれた巨大なノタリウムはあり、異様な雰囲気を漂わせていた。
このノタリウムは巨大な木の種で、周りには黒いツタが巻きついていた。
ノタリウムの結晶のてっぺんには、人影のような濁った影が見えた。
「ちょっと待って、これは何なの?」とフィシカが尋ねた。
「これはエナが遺した生命のノタリウムだ。」
「もう数百年も眠っているが、これを呼び覚ませば、世界に生命を溢れさせることができる⋯⋯美しいでしょう?」
「まず検査させてくれないかしら。危険でもあったら困るわ」とフィシカが言った。
ハルパスは一瞬迷ったが、目を閉じて言った。「いいでしょう。ではあなたが検査しなさい。」
フィシカはノタリウムの傍にあるコントロールパネルを詳しく検査しはじめた。
横に立っているリツモは、緊迫した空気を感じ、手に汗が滲んだ。
しばらくしてフィシカがようやく立ち上がり、リツモに目配せした。「いいわ。多分、危険はないでしょう⋯⋯」
「フフ、安心しましたか?では、始めなさい。」ハルパスは言った。「君の友人のためにもね⋯⋯
「リツモ、あなたにかかってるわよ!」フィシカは心の中で祈った。
- エナ⋯⋯彼女はまだ生きている。ノタリウムが存在する限り、彼女はその中に⋯⋯
私のエナ⋯⋯
Destiny
- 生命のノタリウムの影響範囲に近づくと、リツモは今までとは違うエネルギーを感じた。
まるで身体の中で音楽が湧き上がるようだ。
リツモは深呼吸すると、ハルパスとフィシカが見守る中、調律を開始した。
多分、今までとは全く違う調律になる。そんな予感がした。
- 調律を始めたリツモは、まるで身体が消え、自分が一つの旋律になって空中に漂っているような感覚に襲われた。
調律が終わる瞬間も、リツモはまだ動くことができず、フィシカの叫び声だけが聞こえた。
「行くわよ、早く!」
- その瞬間、轟音と共に、生命のノタリウム周辺のコントロールパネルが爆発した。
茫然と立っているリツモを、フィシカが引っ張って逃げた。
「早く!さっき検査する時、エネルギーの回路をこっそり変えたのよ。」とフィシカが言った。
「あの生命のノタリウムはとても危険なものだわ。」
「エネルギーの強さは見当もつかないけれど、あの共鳴の幅は今までの見たものの比じゃない。」
「もし本当に呼び覚ましてしまったら、恐ろしい結果を招くわ!」
「あれ⋯⋯ぼくはさっき、どうしちゃったんだろ⋯⋯?」リツモが我に帰った。
まるで身体を離れていた魂がもとに戻ったかのようだ。背後には爆発音が続き、地面が揺れていた。
「今、説明している時間はないわ。」
「私がエネルギー回路を変更したから、」
「少なくとも生命のノタリウムの機能が壊れることはないけど⋯⋯」
フィシカはそう言ったが、振り返って見た光景が気になった。
あれほどの爆発で、周囲は黒煙に包まれているのに、生命のノタリウムはなんともない。
それに、あの黒いツタが紫色がかって、邪悪に輝きはじめている。
- 「お前の魂胆に気付かぬと思ったか?小娘。」空中にハルパスの声が響いた。
「まさか、生命のノタリウムがそんなに簡単に壊れると思ったか?甘い!」
「怖いっっ!」リツモが走りながら叫んだ。
「しまった!どうすれば⋯⋯とにかく走って!」フィシカは慌てていた。
こんなフィシカを見るのは初めてだ。
「逃げられはしない!」ハルパスの声がまた響いた。
「あいつらを捕まえろ!」
ハルパスの彼の傍にいた機械人形がリツモとフィシカを囲んだ。
「シューーシューーシューー」「シューーシューーシューー」
二体の機械人形が笑うと、機体の中心から黒紫色に輝く異様なノタリウムが出現した。
「ハハハ、ここはノタリウム管理局。逃げられると思うなよ!」
ハルパスの声がこだました。
「フィシカ、気を付けて!」
いつになく弱気なフィシカを見て、リツモは勇気を出し、前に飛び出し守ろうとした。
- 調律のとき、リツモは人生の走馬灯を見ているようだった。
自分が生まれ、遊び、初めてフィシカを見た。
自分の心臓の音と呼吸が聞こえた。
リツモはふいに、故郷の村が懐かしくなった。
こんな旅に出るなんて、それにこんな長旅になるなど予想外で、まだ終わりも見えない。
Horizon Blue
※初回のみ強制Purifyモード
- 機械人形の一体に異変が起き、マントの下から生命のノタリウムで見たのと同じ黒紫色のツタを出し、触手のごとくリツモとフィシカに襲いかかった。
「逃ーーサーーナイーー!」
「くらえ!」リツモは叫んだ。
- 「キィィーーーーー!」機械人形は耳を裂くような音を発して止まった。
ツタは、空中に止まったままだ。
「気をつけて!まだいるわ!」フィシカが言った。
- 「ヤツラヲ⋯⋯逃⋯⋯スナ⋯⋯」機械人形は最後の一声を発して、停止した。
Bloody Marquis
※初回のみ強制Purifyモード
- もう一体の機械がマントを開き、鉄の網を噴射したが、リツモとフィシカは後方に逃げた。
「お前も止まれ!」
- 調律完了に間に合わせたリツモがそう言いながら、もう一体の機械人形も止まった。
「行こう!話は後よ!」フィシカが言った。
「うん!」
- 本当にそれで逃げられたと思っているのか!」ハルパスの声が響いた。
「甘い!甘いぞ!ノタリウム管理局全体が、私の支配下にあるのだ!」
「リツモ、調律装置を早く私に渡して。共鳴幅の限界を解除するわ!」
「わかった!」
「お前達よ、生命のノタリウムを呼び覚まさなかったことを後悔するがいい!」
「だが構わぬ。お前達を捉え、肉体を操ることなど造作もないこと!」
「ノタリウムの牢獄に囚われるがいい!ハハハハハ!」
- 「必ズ⋯⋯捕マエロ⋯⋯」機械人形は最後の一声を発して、停止した。
Wolves Standing Towards Enemies
※初回のみ強制Purifyモード
- ドン!
巨大なエネルギーが共鳴して空中で爆発し、ノタリウム管理局の建物に穴が空き、オレンジライトと動いていた機械も止まった。
「うああああーー」ハルパスの怒声が空に響いた。「このままで済むと思うな!いつか必ずーー」
- リツモとフィシカは、暗闇を走った。
調律装置のわずかな光を頼りに。
「どこへ向かえばいいの?」とフィシカが言った。
「ネロとロッサを探そう!」とリツモが言った。
「⋯⋯そうね。彼らなら何か知っているかもしれない⋯⋯」
フィシカの直感がそう告げた。ネロとロッサ、そしてハルパス。彼らはまだ何かを隠している。
- 巨大な牢屋に奇妙な音が響いた。痛み、悲しみ、喪失を訴えるような⋯⋯
まるで牢屋のよう⋯⋯。こんなに悲しいノタリウムのエネルギーは初めてだ。
Main Story Chapter 7 逃亡と破壊
イントロダクション
- うああああーーこのままで済むと思うな!いつか必ずーー」
ハルパスの声がノタリウム管理局本部の隅々まで響き渡ったーー
- 暗闇の中、ロッサが目を覚ました。
「うん⋯⋯ここは⋯⋯」
ロッサは目を擦ろうとしたが、なんと手が鎖に繋がれている。
ロッサは驚いた。
- 「ネロ!ネロ!どこにいる?」ロッサは慌てて叫んだ。
「静かに。見つかるぞ」ネロがいつものように冷静に言った。
「ふう、やっと解除できた。動くな、今手伝ってやる」
暗闇の中、ロッサは小さな声を耳にした。
目が暗闇に慣れると、部屋の隅からもれる薄明かりで今いる場所がはっきりと見え、昏睡前の状況も思い出してきた。
「飛行器が不時着して⋯⋯二体の奇妙な機械人形が現れ、」
「たぶんノタリウムの力でアタシたちを眠らせた⋯⋯」
それからここに連れて来られて⋯⋯ここは⋯⋯ここは⋯⋯ここはまさかノタリウム管理局本部か!?」
ロッサは気づいて驚いた。
「ああ、そのとおりだ」とネロが言った。「もう少し我慢しろ⋯⋯よし、少し体を動かしてみろ」
「やっと解放された!」ロッサは腕を振り回した。
- 「持ち物は全部没収された」ネロが言った。
「そのようだな」とロッサは言い、靴を脱いだ。足首に小さな装置が結び付けられている。
「小型のノタリウム調律装置を開発しておいてよかった。何度もテストを重ねたが、やっと使うときが来たな。」
「沈黙辺境守備隊を甘く見るなよ」
「彼らは⋯⋯いや彼は、リツモを利用しようと焦って、生命のノタリウムを起動したのだろう」
ネロは持ち物を整理しながた言った。
「たぶんな。だからアタシたちを追わなかったんだ」ロッサは言った。「まずは灯りをつけよう」
二人は警戒態勢をとりながら、暗闇の中を捜索した。
「ここのエネルギーはかなり混乱している。」
「それにこの静けさは、おそらくノタリウムのせいだろう⋯⋯」
「⋯⋯あ、見つけた。たぶんここだ。」ロッサは言った。
Inorganyx Prayer
- ロッサは壁面の溝をそっと持ち上げた。
壁面の下に、増幅器に連結されたパネルがあり、遠方の混乱したノタリウムのエネルギーをこの密室に伝えているようだ。
ロッサは素早く回線を変えて、パネルの動作を停止させた。
「よし、早く調律を!ここに残っている混乱したエネルギーを鎮静化しよう!」
- 「ふん、アタシたちを甘く見るなと言ったはずだ」ロッサが言った。
「守備隊という名だが、僕たちは厳しい訓練を受けている」とネロが言った。
「そう。アタシたちの目標は、ここノタリウム管理局本部。」
「こんなに急に来るとは予想外だったが⋯⋯」とロッサが言った。
- 「沈黙辺境守備隊。」
「『守備』という名だが、実のところ、隠れてテクノロジーを磨きながら⋯⋯」
「ノタリウム管理局本部を徹底的に破壊するチャンスを狙っている」とネロが言った。
二人は部屋を脱出する方法を探しながら、自分たちの使命を思い出した。
「アタシたちはノタリウムテクノロジーの使用に反対している。」
「だが、ただ口先で反対を唱えるだけでは、」
「ノタリウムテクノロジーに対抗することなどできない。」
「ノタリウムテクノロジーを破壊するために、」
「テクノロジーを開発する。」
「ノタリウムテクノロジーを持つ人々が耳を貸そうとしないとき、」
「アタシたちに力がなければ、」
「彼らの陰謀を黙って見ているしかないからだ」とロッサは言った。
「ハルパスの陰謀。Lanota計画を」
- 生命のノタリウムは⋯⋯生命を宿しているように見える偽物にすぎない。」
「実験することなく重病でこの世を去った。」
「だがハルパスはエナの死を受け入れることができず、」
「ノタリウムで彼女を生き返らせることができると頑なに信じた」とネロは言った。
「その結果、全世界の生命を危険にさらした」
「そう。エナの意思を本当に受け継いでいるのは⋯⋯アタシたち」ロッサが言った。
「そう、僕たちだ」とネロは言った。
「沈黙辺境守備隊の規則、その最後の一条はーーノタリウムを必ず破壊すること」
「ノタリウムを必ず破壊すること。それがエナの遺言だ」とロッサが言った。
- 監獄の柵以外に、逃げ道は見つからなかった。
最後に、ネロは機転を利かせ再びパネルの回線を調整してエネルギーの衝撃を作り出し、部屋の設備の動作をしばらく止めた。
すると監獄の柵も開いた。
ノタリウム管理局に、追跡の大きな足音が鳴り響いている。
「リツモとフィシカは無事だよな?」
「行こう」とネロが言った。ロッサは頷いた。
- パネル上で異なる色のランプが点滅し、隅にある小さなモニターに、理解不能な古代文字が一行浮かび上がった。
フィシカが今までに解読した文字とも違うようだ。
文字の内容は:「生命のノタリウムエネルギーの供給が混乱、混乱⋯⋯」
Living Will
- 彼らは監禁部屋を脱出し、通路の壁に、他にも増幅器パネルを見つけた。
彼らは同じ方法で、ノタリウム管理局本部を一つ一つ破壊することにした。
「こうして破壊していけば、成功のチャンスが生まれるはずだ!」とロッサは言った。
- (右上のモニターには『NORMAL』と表示されている)
「あああああああーー」遠方から、ハルパスの鋭い叫びが聞こえた。
「どうやらまだ虫けらどもが数匹、悪さをしているようだな⋯⋯逃さないぞ!」
「ふん、どうやら少しは効き目があったようだな」
「皮肉だな。エネルギーを鎮静化するための調律が、」
「今はノタリウム管理局を混乱させているとは」とネロが言った。
「ノタリウム管理局は混乱のエネルギーで運営されているからだよ」とロッサは言った。
「だからこそ、絶対に破壊しなくちゃならないんだ」
- ロッサとネロは、通路を進みながら破壊と捜索をつづけた。
彼らの目標は「生命のノタリウム」だ。
それこそは、二百数十年前にアル・ニエンテを作り出した元凶。
「リツモとフィシカはどこだ?」ロッサは探しながら言った。
「彼らの助けがあれば、きっとすぐに見つかる」
「本当にそう思うか?」とネロは言った。「彼らは『あちら側』の陣営だ。」
「彼ら自身が知らないとしても。だが君は、彼らがこちら側の話を信じると思うか?」
「ああ⋯⋯あんたが言いたいのは、彼らがあの時の私たちにそっくりだということか?」ロッサは言った。
「あの失敗とアル・ニエンテを経験しなければ、」
「アタシたちも今の立場に変わることはなかった。そう言いたいのか?」
ネロはそれには答えなかった。
「今は生命のノタリウムを探すことが先決だ」
彼らはノタリウム管理局の通路を走り続けた。
- 「沈黙辺境守備隊に入ってから、私たちは本当の歴史を知った。」
「ノタリウムテクノロジーを開発したエナは、最後はとても後悔していた」ロッサは嘆いた。
「しかたがない。彼女はノタリウムエネルギーの影響を受けていて、」
完成間際にようやく目を覚ましたんだ」ネロは言った。
「人類が生物をノタリウムのテクノロジーに巻き込み始めると、」
「ノタリウムは徐々に自意識を持つようになった。だが人類はそのことに気づかなかった」
「自意識を持つノタリウムが力を発揮し、研究者に催眠をかけ始めた。」
「テクノロジーを完成させ、自らの目的を達成するために」ロッサは言った。
「ノタリウムの意思は、世界の全てのエネルギーを自分に吸収すること。」
「それが物質であろうと、生命であろうと」
「それがアル・ニエンテの真相だ。」
「催眠をかけられた研究者は、最後の重要な瞬間、間違った推論と設計を書いた。
「人々はそれがエネルギーを安定させる方法だと誤解した」ネロは言った。
「実際には、彼らはノタリウムの意思を完成させるために操られていたんだ」
「ノタリウムは全てのエネルギーを吸収しようとした。その結果が、アル・ニエンテだ」とロッサは言った。
- ノタリウムテクノロジーの開発の行きつく先には、災難しかない」とネロは言った。
「生命のノタリウムは強大な意思を持っている。」
「それがかつてエナに催眠をかけ、今はハルパスを操っているものだ」ロッサは言った。
「エナは重病のせいで、少しずつ目を覚ました。」
「だが彼女が生命のノタリウムの設計を見直し、重大な欠陥を見つけたときには、」
「もう間に合わなかった」
ネロが続けて言った。「だから彼女は数人の信頼できる科学者たちに頼むしかなかった。」
関連資料のコピーを遠くへ運び、秘密の研究組織を作るようにとーー
「それが後の沈黙辺境守備隊だ」
「ノタリウムを必ず破壊すること」ロッサは力強く言った。
「ノタリウムを必ず破壊すること」ネロが応えた。
- モニターの表示は:
監獄:破壊 通路:破壊
制御室A:データ喪失 制御室B:データ喪失
実験室A:データ喪失 実験室B:データ喪失 実験室C:データ喪失 実験室D:データ喪失
総エネルギー:充電中 身替り:回復中
生命のノタリウム:エネルギー混乱、回復中
Nobo -outflowing heart-
- 二人は走りながら周囲を捜索し、ついに制御室を見つけた。
ここはノタリウム管理局のシステムの一部を管理している。
ロッサとネロは、コントロールパネルを少し触ってみて、すぐに操作方法を理解した。
「エナの遺言を実現させるんだ!」ロッサは準備ができたようだ。
「うん!」ネロは頷いた。
- 彼らは小型調律装置の出力を全開にし、ノタリウム管理局のシステムを支える混乱のエネルギーを、一気に調律しようとした。
ポン!ケーブルが巨大な音を立てた。
全ての設備が停止したわけではないが、オレンジライトが不規則に点滅しはじめ、周囲のケーブルが不快な音を立てた。
遠方から耳をつんざくようなハルパスの叫び声が聞こえるーー
「ああああああーーおまえたちーー許さない!!」
- 「ピーー」小型調律装置が鳴り響いた。
「あっ⋯⋯エネルギー切れか?」ロッサが言った。「そのようだな」ネロが言った。
「クソッ⋯⋯どうすれば⋯⋯」
ロッサが心配したそのとき、誰かがこちらへ走ってくる足音が聞こえた。
「おーい」リツモが叫んだ。「君たちはここにいたの⋯⋯やっと⋯⋯やっと見つけた!」
「あなたたち⋯⋯無事だったのね⋯⋯無事で⋯⋯よかった」フィシカがゼイゼイと言った。
「君たちは、自分で逃げ出したのか?」リツモが聞いた。
「もちろんさ。沈黙辺境守備隊の実力を甘く見るなよ!」ロッサが言った。
「おい」ネロが注意した。「まだ安心するには早いぞ」
- ランプが点滅する通路の奥から、突然奇妙な笑い声が聞こえた。
「へへへへへへへーー」「へへへへへへへーー」
倒したはずの二人の機械人形が、なんともう復活し、追いかけてきたのだ。
- コントロールパネルのランプが全て消えても、モニターには文字が浮かんでは消える。
まるで命を宿しているかのように:
「生命のノタリウムの混乱、回復中。」
「緊急修復プログラムを起動。防御装置を起動。」
「緊急プログラムを起動。起動⋯⋯起動⋯⋯起動⋯⋯」
The Daybreak Will Never Come Again
※初回のみ強制Purifyモード
- 少し姿を変えた機械人形が二体、彼らのほうへ突進してきた。
四人は疲れていたが、すぐに応戦の陣形を整えた。
「リツモ、あんただけが頼りだ!」ロッサは言った。
「うん!」リツモは頷いた。
- 「ふう⋯⋯ふう⋯⋯ふう⋯⋯疲れた⋯⋯疲れたよ!」
リツモは疲れて叫んだ。
「ほぼ片付いたわ⋯⋯あれ?何だか様子がおかしい⋯⋯」
そのとき、フィシカが異常に気付いた。
- 二体の機械人形はしばらく停止していたが、やがてまたはげしく曲がりくねり始め、恐ろしい叫び声をあげた。
「許サナイーー」「許サナイーー」
二体の機械人形は奇妙な光を放ちながら、ゆっくりと一つに融合した。
「許サナイーー!!!」
- 二体の機械人形はセミのように機械の殻を脱いだ。
注意深く聞いてみると、低い男性の声と一人の女性の声が混じっているのがわかる。
Astaroth
※初回のみ強制Purifyモード
- 「あああーーやめろーー⋯⋯」
それは目の前の機械人形ではなく、遠方のハルパスの叫び声だった。
- 「ふう⋯⋯ふう⋯⋯ふう⋯⋯」
逃亡に続く調律で、リツモは息を切らせていたが、疲れのあまりついに地面に倒れた。
「リツモ!」フィシカが叫んだ。
「リツモ、大丈夫?早く立って。もし追いつかれたら⋯⋯」
「大丈夫。しばらくは何も起こらないはずだ」ネロが言った。
- 「この二人は⋯⋯生命のノタリウムの『身替り』だろうな」ロッサが言った。
「生命のノタリウムは、」
「自分の意思を遂行するためにハルパスを操り、二体の『身替り』を作り出した。」
「これらはハルパスを助けているように見えて、実はハルパスの行動を操っているんだ。」
ネロは静止した機械人形を触った。
「もう完全に停止してる。エネルギーが切れたようだ」
「あんたたちが生命のノタリウムに細工をしたのか。」
「賢いな」ロッサが言った。
「何⋯⋯?君たちの言っていること、全然わからないよ⋯⋯」地面に倒れているリツモが静かに言った。
「僕⋯⋯疲れた。眠ってしまいそうだ⋯⋯」
「あなたたち⋯⋯他には何を知っているの?」フィシカが聞いた。「全部教えてくれる?」
「もちろんだ」ロッサが言った。「だがまずは外に出る方法を考えよう。」
「『身替り』が停止したとはいえ、」
「ノタリウム管理局の建物の中にいる限り、こんどはまた何が飛び出してくることか。」
「ハルパスも追いついてくるかもしれない」
- 「でも⋯⋯」フィシカは躊躇した。
「大丈夫だ。行こう」ネロが言うと、リツモを背中におぶった。
「まだ力は残ってるか?」ロッサが聞く。
「うん⋯⋯」フィシカは立った。「大丈夫」
「よし。まずは外に出る方法を考えるぞ」
- ノタリウム管理局の通路ランプが暗くなり、重たい低音が鳴り響いていた。
まるで遠方にいるハルパスの呟きが混じっているかのように、不気味な音だった。
「外に出て、安全な場所を見つけたら、全てを教えてやるよ」
ロッサは小声で言いながら壁を捜索し、近くの通風孔を見つけた。
配管の向こうから、わずかに光が漏れている。
「ここを進めば⋯⋯建物から出られるはずだ」
「まずは進んでみよう」ネロが言った。
彼らは外へと歩きだした。
ロッサは生命のノタリウムの真相と沈黙辺境守備隊の成り立ちを、フィシカに詳しく語りはじめた⋯⋯
- 合体した機械人形は動力を失い、足を地につけたまま、眼だけが異様な赤い微光を放っていた。
侵略者のような恐ろしさを感じる。
この二体の機械人形は一体何なのだろう⋯⋯?
Main Story Chapter 8 生命のノタリウムの心
※本チャプターのストーリーは、ストーリー/チャプター8に掲載しています。そちらをご確認下さい。
Side Story Chapter 1 天才少女とスターライトシューターの楽章
イントロダクション
- フィシカは頭を掻きながらこういった。「文献通りなら、次はこうすれば⋯⋯」
自信に満ちた彼女は拳を握りしめた。
「さぁ、早くテストを始めよう!」
Just a Fairy Tale
- フィシカは研究室の中で、初めて装置の試運転を始めた。
- 「動作には問題は無いけど、ノタリウムの収集効率テストの結果が悪いのよね⋯⋯あ~もうこんなに時間を掛けて研究したのに!」
フィシカは長いため息をついて、部屋の扉を開けた。
「疲れたぁ、ちょっと散歩してこよう⋯⋯」
- どこから来たのかわからないのら猫がよくここに入り込む。
フィシカはその猫がいたずらしても愛嬌に負けて怒ることができない。
おまけに、『エーテル』とおかしな名前を付けた。
こうしてフィシカとエーテルは屋根の上で読書をしながら、まったりとした時間を過ごした。
The Lonely Wolf
- 研究室から出て、広がる景色を眺めるフィシカは、今日の景色が昨日より少し暗くなっているように感じた。
「アル・ニエンテの進行が更に深刻になっちゃったのね⋯⋯こうしちゃいられないわ、もう一度試してみよう!」
- 「まだ実践では使えないわね」フィシカは眉をひそめた。
「やっぱりうまく扱えない⋯⋯もしかして私、これを操作するセンス、無い⋯⋯?」
苦悩におちいったフィシカは、設計の問題点をひたすら模索している。
どうして試運転の結果はいつも思い通りにならないんだろう?
「まぁいっか、夕食の食材を買いに行こっと。」
悩みを一旦置いたフィシカは、市場へと向かった。
- 「玉ねぎ~♪トマト~♪ニンジン~♪今夜はラタトゥイユで~す♪」
フィシカは歌いながら帰路につく。
公園をぬけたアーチ状の橋の上に、見慣れた人影が。
- フィシカは仕事場の重い空気から解放されたいと思う時には、湖の畔で静けさに包まれながら、読書やうたたねをする。
Memoria
- 「おやおや、これはこれは。ワガママ天才少女さんじゃないですか。」
- 「あらあら、これはこれは。ポンコツ吟遊詩人くんじゃないの。」
「何が詩人だ、僕は『スターライトシューター』リツモだ!」
彼は自分の力を魅せつけようと、即興で一曲弾き始めたが、フィシカは興味を持った素振りを全く見せなかった。
- 満天の星空の下、涼しい風が吹いている。リツモが橋の上でリュートを弾く。
通りかかったフィシカが足を止め、リツモの即興演奏に耳を傾ける。
Vortex
- リツモはメロディから我に返ったと同時に、フィシカが背負っている茶色い箱に気づいた。
「君が背負っているそれは、なに?」「うーんまぁ気づかれたし、教えてあげましょう。」
- 「さっぱり分からないな、一体どんな機械なんだこれ。」「歩きながら話しましょう。」
フィシカが装置を片付けている傍らで、リツモはリュートを背負って橋の手すりから降りた。
一緒に歩き始めるとリツモは、「ノタリウム調律装置?」とフィシカに問いかけた。
「そう、研究所から頼まれて作ったもの。
文献通りなら、こういう装置で『調律』を行い、
町の外の『カオティックノタリウム』を『ハーモナイズドノタリウム』にし、利用できる状態にする事ができる。」
「一人で作ったのか?さすが『知識の女王フィシカ』だ!これならアル・ニエンテの問題を解決することが出来るんじゃないかな?」
奇妙な肩書きにフィシカは困惑した。
「研究の方向は間違えてないはず。なのに、何度繰り返してみても、なかなか上手く行かないんだよな⋯⋯」
- ふたりは、小さい頃この場所でよく遊んでいた、楽しい時間のことを思い出した。
Ryusa No Toba -Casino de Quicksand-
- 操作が気になって仕方ないリツモは、操作してみたいとフィシカに頼み込んだ。
「頼む!僕にやらせてみてくれ!」
もしかしたら一つの突破口としてありなんじゃないかとフィシカは思った。
「わかった。もう使えるように設定しておいたから、このまま始めていいわよ」
- リツモはじっくり装置の観察のをした後、まるで昔弾いたことがあるかのように巧みに音を奏でた。
フィシカは「信じられない⋯⋯」と、困惑した表情を浮かべた。
「操作はとても簡単だし、音色も本当に素敵、最高だよ!」リツモは嬉しそうに話した。
「あ、ありえない!データを見せて!」フィシカは間髪いれずに装置を奪い取った。
「すごい結果⋯⋯彼なら⋯⋯」
彼女は、未だに自分のメロディに酔っているリツモの手を掴み、「付いてきなさい!さぁ早く!」と急かした。
- 「先にご飯を作ってきて。袋の中にラタトゥイユの材料があるから」
家に着くなりフィシカはリツモにそう言うと、矢継ぎ早に試作機の調整をはじめた。
机にかじりつくフィシカの背中を見たリツモは、黙って頷くことしかできなかった。
どれくらい経っただろうか、リツモはとっくにお腹いっぱいになってうとうとしていたが目を覚ましてーー
「ラタトゥイユはもうとっくに冷めたぞ、いつまでやるんだ?」とあくびをしながらフィシカに問いかけた。
「よし完成!!!」
- 大声を出して喜ぶフィシカは、リツモを小屋の外に引っ張りだした。
「いてて、ちょっと待てよ!」
- スターライトシューターリツモは、『真夜中の秘密ミッション』を始めたーー
誰もいない学校で、ご機嫌な星空リサイタルを!
Promised Heaven
- 興奮を抑えきれないフィシカは試作機をリツモの懐に押し付けた。
「さっきの演奏結果に合わせてシステムを調整してみたの、もう一度試してみて」
- フィシカは再び試作機を奪い取った。
「完璧!ここまでの収集効率を出せるなら、もしかしたら本当にカオティックノタリウムを調律できるかも」
リツモは景色の変化に気づき、「あ、もしかしてあっちも⋯⋯」「そうね、今日はもう遅いし、そろそろ帰れば?」
- 「『真実』への旅路にまた一歩近づいたね。」
フィシカは強い想いを抱きながら呟く。父と母の背を追いながら⋯⋯
- ラタトゥイユを食べながらフィシカは、調律装置の製作方法について思案していた。
実現できるかもしれない夢への興奮はいつまでも抑えきらないまま⋯⋯
Side Story Chapter 2 輝く日の出の地を目指して
イントロダクション
- ある日の朝、鳥のさえずりと重なるように掛け声が響いていた。
燦々と降り注ぐ朝日を受けて汗が輝く。
「48⋯49⋯50!腹筋50回達成!次は腕立て50回!ふう⋯⋯」「48⋯49⋯50!よし、今度は発声練習だ!」
The Journey to Eden
- 今日もリツモは日課の基礎トレーニングを行っていた。
歌うことが大好きな彼にとって、毎日の体づくりと発声練習は欠かせないことだった。
- 「今日はいい天気だしジョギング日和だ!よーし、秘密基地まで走ろう!」
リツモは自分自身に気合を入れると、ここからそう遠くない山の頂上を目指して足を踏み出した。
- 自由で能天気に見える彼だって、進んで机に向かう時がある。
それは、溢れる感動を楽譜に表したくなった時。
Colorful Note
- ようやく見慣れた野原に着いたリツモは、汗を拭いながら麓を眺めた。
谷から吹いてくる風と共に言い表せない感情がこみ上げ、思わず出来たばかりの曲を口ずさんだ。
- 自分の歌声に酔いしれるリツモだったが、近くの木陰では古ぼけた本を読む、見知った人影があった。
「コホン!」「わ!なんだフィシカいたんだ!ねぇどう?今日の僕の歌声!いい感じでしょ?」
「はぁ⋯そうね。能天気ですごくいい感じ」
「ほんと君の口は褒め言葉が出てこないなぁ。それより今日はどうしたの?朝早くからここにいたんでしょ」
「調べたいことがあって探してた本をやっと見つけたの。図書館に通いつめた甲斐があったわ。村の外の地域について記された本なんだけど⋯それをここでじっくり読みたかったのよね、邪魔されずに」
- 「へぇ、見せて!」そう言われたフィシカはリツモに本を手渡した。
「"Journey to the East"?」
「気になるタイトルよね!300年前にこの村の地理学者が調査したという、東の地の見聞録ですって」
「え?東の地は広い森があって、その先は誰も越えたことが無い渓谷しかないって、授業で言ってたよ」
「そうね。でもこの前調律装置が示した、東にあるカオティックノタリウムの事を覚えてる?いつかそこへ行くべきだと思うの」
「うーん。その森を抜けるにはかなり体力が必要かもよ。君は平気なの?」
「荷物係さんがいればね」
「あ!そうだ、今日から一緒にトレーニングをしよう!その方が絶対いい!」
「えぇっ?勘弁して欲しいわ⋯」
- この秘密基地を見つけたのはリツモだった。
幼い頃からフィシカとここで、誰にも邪魔されずに自由に過ごすことが好きだった。
Umioto
- リツモはフィシカの専属トレーナーになったかのように、毎日彼女の家を訪れてはトレーニングを促すようになっていた。
この日にの二人は海岸線でのジョギングを終え、次は発声練習をしようとやる気満々のリツモであったが、一方フィシカは隣で息を切らして隣に座り込んでしまった。
- 「うん!今日も喉の調子は絶好調!」得意げな顔で言うリツモに、フィシカは苛立ちを覚えた。
「私は死にそうなんだけど⋯こんな事いつまで続ける気?」
「これぐらい我慢しなきゃ。旅に出たらもっと辛いと思うよ?世界を元に戻すためだもん。仕方ないでしょ?」
「それはわかってるわよ⋯。そうだ、例の"Journey to the East"だけど、著者は森を抜けた後にいくつかの村と、別の国を見つけたらしいわ」
「それ本当?その森を抜けた人は存在しないって、教科書に書いてあったけど」
「私もそう思って図書館で他の資料を色々調べてみたの。でも私達が学んだ教科書以外、村の周辺環境や地図について記された本が一冊も無かったの。不思議よね」
「まさかわざと隠したとか?」
「どうかしらね?それはともかくーー」
- フィシカはふいに立ち上がり、遠くを見つめた。「見てみたいわね⋯あの森の先を」
「じゃあまずはその森を無事に抜けないとね。そろそろ休憩終わりにして、次行こう次!よーし今度は街まで走るぞー!」元気よくリツモが言うと
「え!?もう少し休ませてよ!」と、ぐったりしながら答えたフィシカだった。
- 幾度かのトレーニングを経て旅支度を済ませた二人は、ノタリウム管理局の許可を得て、東の森の冒険に出かけた。
- 東の森に着くとフィシカは大きく息を吸い、地図を見ながら率先して森の中へ進んでいった。
「あの本によると、この辺りに沼地があるはず⋯きゃっ!」
そう呟いた直後、フィシカは膝の下まで泥に飲み込まれていた。
驚いたリツモはすかさずフィシカを引き出し、二人は近くの池までよろよろと歩いて、うろたえながら泥を洗い流した。
- この海岸はリツモのとっておきの散歩スポット。
波と夕焼けが交わる景色は、いつも彼の心を落ち着かせてくれるのだ。
LSDJACK
- 準備を整え、次は油断しないようにと周囲を警戒しながら、二人は森の奥へと進む。
どれだけ歩いただろうか。
目の前は沼地に囲まれ、吸い込まれそうな深い闇に包まれたカオティックノタリウムが現れた。
- 調律を終えると、沼地の元の姿が現れた。
それは今まで見たことがない、ぞっとするほど異様な景色だった。
「これが沼地なのね!」
「フィシカは好奇心を抑えきれず驚嘆していたが、リツモには耐え難いものがあった。
「蒸し暑くて気持ち悪いよ⋯早く先に進もう!」
- 静寂な夏の夜でも時々、意外な来訪者がやってくる。
Little Painter
- 沼地を避けながらしばらく進むと、二人は広い草原に辿り着いた。
草原の真ん中には朽ちた巨大な木が聳え、木の上にはカオティックノタリウムが埋まっていた。
- リツモが調律を終えると、どこからともなくカラスの群れが現れて、次々と朽ちた木の青白い枝にとまった。
「この木、一人ぼっちみたいで寂しそう」フィシカの呟きに思いを巡らせたリツモは
「元気な頃は今よりもっと立派だったんだよ、きっと。だから他の木が近付き難かったのかもしれないね」
巨大な幹を見つめ、そう呟いた。
- 人の目に触れられず仲間もなく、たとえ孤独でも懸命に枝葉を伸ばし、この地で眩しく生き続けるのだろう。
Nagi
- ひたすら歩き続けると先人達が切り開いた道が現れ、今までより随分と歩き易くなった。
更に進むと大きな墓地に辿り着いた。
整然とした墓碑達は、アル・ニエンテの影響が及ぶ前ならば入念な手入れがされていたのだろう。
墓地の中央には、カオティックノタリウムと巨大な記念碑がひっそりと佇んでいた。
- ようやく調律を済ませると、微かな虫の鳴き声が夜空に響き渡り、墓地は更に寂しげに見えた。
フィシカは記念碑まで歩き、刻まれた文字を眺めた。
「碑文に『勇敢な戦士達、ここに安らかに眠る』とあるわ。
刻まれた日から見て恐らく、第一次ノタリウム戦争時代のものね」
「⋯⋯」「リツモ?どうかした?」「え?そ、そっか⋯」カタカタと震えて答えるリツモに、フィシカは続けて言った。
「何よ?さ、暗くなってきたし今日のところはここまでね。そこの管理人小屋で朝まで休みましょう」
「え、ここで?さ、先に進まないの?」
- 「リツモ、もしや怖いんじゃーー」
「じ、じゃ、僕、先に行くね!」リツモは荷物を持ち、逃げるように小屋へ向かった。
「もう、だらしないわね!」フィシカは呆れたように頭を振った。
「ふう⋯明日からの道のりは険しくなりそうだぢ、今夜はよく眠れるといいわね。本番はこれからだわ」
ゆっくりと小屋へ向かいながら、フィシカは今日起こった予想外の出来事を思い出し、これからの旅路が少し心配になった。
- ーーその一方ーー
「東の地のあれは、知られてもいいのか?」
「構わん。我らが今すべきことは、ノタリウムを可能な限り回収することだ」
- 平和の果実を手にした人々は、戦争の傷跡などすっかり忘れてしまったのかもしれない。
だが、忘れてはいけない。愚かで悲しみに満ちた、あの出来事を。
