―第三章 因縁―
かつて!
あの暑かった日のこと!
そう、それは、10年前の出来事であった…!!
「おいコラァ、怒王!おんどりゃあ、まったくとろいやつじゃのう!」
「パシリに3分もかけてんじゃねえ!このアホんだらがぁ!」
今ッ!
このいたいけな少年、怒王は!この不良どもにいじめられているのだ!
何という悲哀!この卑劣漢どもは!よってたかって怒王を苦しめているのだぁ!
組長、大谷猋!通称オジキ!齢13!
中学一年生にして、すでに生えそろっている無精ひげこそ、オジキの証だぁー!
若頭、正木牡牛!通称マサ!齢10!
通販で買った手斧が、今宵も血を求めて鳴いてるぜ、破ー破っ破破破!
今ならもう一本ついてきて三千九百八十円だ!
姐御、大谷魔性女!通称あねさん!齢6!
生まれ持った女の色香で、幼稚園児とペド野郎どもを惑わす!
戦頭、噛瀬犬羊男!通称かませ犬!齢10!
高い戦闘力で、戦闘員妖怪小学生をとりまとめるクズだぁ!!
猋率いる汚想路死胃組は、怒王の住む団地でブイブイいわせているのだ!
「オジキ、こいつ、ペプシ買ってきやがりましたぜ!
しかも、きゅうり味ですぜ!」
「アァン!?オレガジュースカッテコイッツッタラ、ウメソーダニキマッテンジャロウガ!
コノドサンピンガ!コラタイタン、モウイッペンイッテコイヤボケナスゥ!」
「じゃ→ぁたしの分も買ってきて→」
怒王はいつもこのヤクザチックな幼稚園児たちにいじめられていた。
今日も怒王はオジキにイチャモンをつけられていた。
「アァン?!ウメソーダなんて誰が言ったんじゃボケェ!!
オマエ、いいかげんにしておかねぇとコンクリで固めて大阪湾にしずめちまうぞクラァ!!」
オジキはそう言うとハジキを取り出す。
「や…やめろ!!」
怒王は必死でさけんだ。
「んだぁ?!ハジキが嫌かぁ?!
なら薬漬けにして海外に売り飛ばしてもエエんかい!!」
オジキ・マサ・あねさん・かませ犬が怒王に近づいてくる。
「お前たち、そんなか弱い人間をいたぶってそんなに楽しいか?」
4人のヤクザたちの背後には一人の少年、袋小路愚王が立っていた。
「なんじゃきさんはぁ?!わしらの組にたてつこうっちゅうんか?」
「ウチのシマに手ぇ出すとか→このパンピー良い度胸してるっていうか→
マジカタギの者とは思えないし☆」
「おうマサァ!!このくそったれを始末しとけ!」
「わかりやした…おいてめぇ羊男!グズグズしとらんと、さっさとやらんかぁ!」
こんなドサンピン、下っ端連中で十分じゃけんのぉ!」
「サー、イエッサ!」
ヤッパやハジキを持って、妖怪小学生が襲いかかる。
「極道モンの汚想路死差、思い知らせたらぁ!」
「こんのクソガキ、死にさらせぇ!」
「あの世でオツトメ果たしてこいやボケェ!」
対して、愚王は、腕をすっと上げて、ふり下ろした。
一迅の、風。
そして、刹那。
妖怪小学生軍団は一人残らず倒れた。
「!?…何さらしたんじゃコラァ!」
「何今の→?」
組の者は、誰もが目を丸くし、動揺した。
「あっしに任せてくだせぇ…オジキ!」
「羊男!」
静かに愚王へと歩み寄る羊男。
「この羊男様の角は、天下一品、無敵最強の代物だ!
貴様を捕えたが最後、貴様の土手っ腹に風穴があくぜぇ!
そして羊男様の最強の技、角角旋風を食らえば、肉塊すら、跡形もなく消えるだろう!
よし、行くぜぇ!」
「強風打」
「ぎぃぃぃぃやぁぁぁっっ!?」
羊男は地に伏した。
「よし、しょうがねぇ、三人がかりで行くぞ、マサ、魔性女!」「オジキ!」「りょおかい→」
「強風斬」
「ぐわぁぁぁっ!」
「ぎぇぇっっ!」
「きゃぁぁぁっ☆」
――汚想路死胃組、壊滅!
「君、大丈夫かい?」
「…ありがとう!」
これこそ!
これこそが彼らの!
そう、全てのはじまりだったのだ!
この日から!
彼らは行動をともにするようになった!
意気投合した二人!かけがえのない親友!
それはまるで!
離れた磁石同士がひかれあうかのように!
二人は幸せな時間を過ごしたのだったぁ!
だが!
そんな幸せは!
ある時、唐突に消え去った!
それは、あの!
あの暑かった日のことだった!!
「あれ、怒王?そんな暗い路地裏でどうしたんだい」
「ああ、愚王か…ククク!」
「…!何だ、この感覚は?」
「何でもないさ。ただ、あの素晴らしいお方から、グラヴィティーエレメントを頂いてねぇ…ククク!」
「た…怒王?!どうしてこんなことに…!!」
「わからぬか、我が友よ。これは我が復讐の力よ!」
「復讐だと…?!」
「その通り。今まで我を虐げてきた人間どもに、裁きを下すのである!!」
「俺がそれを許すとでも思っているのか!!」
当時すでに封神のメンバーであった愚王は悪の道へと進もうとする友を止めるため、全力で戦ったが、ついに彼を止めることはできなかった。
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そしてそれから十年。ついに彼らとの戦いに終止符がうたれた。
愚王の十年の想いが怒王にヒットした。
「ぐああああ!!」
恐るべき断末魔。そして怒王は散った。
「やりましたね先輩!!」
「ああ。だが悪いのは怒王だけではない。
怒王を力に固執させた世界もだ。
だから我が友、怒王だけを責めないでほしい。」
愚王はそう言った。
「では、魔法学校へ帰ろうか!」
三人は怒王の無敵の装甲、"まな板"を回収すると、魔法学校へと帰っていった。