「いくぞ堕神!!」
邪素血巣は堕神に光の矢を放つ。
美しい、正弦曲線を描いて光の矢は堕神へと向かう!!
命中!!
堕神は光に包まれ、空中から地面へと落下してくる。
邪素血巣は周りのサラリーマンたちをなぎはらい、堕神の元へと向かう。
そして!!光の矢によって身動きがとれない堕神に向けて、マスターソードを振り下ろした。
「終わりだ堕神。うおおおお!!」
一閃。二人の長い戦いに終止符がうたれた。
「今こそ、我ら六賢者が目覚めし時!!」
いきなり見知らぬおっさんが高らかにそうさけぶ。
「我は光の賢者、大魔導!!」
「僕は森の賢者、森霊!!」
「私は炎の賢者、炎帝!!」
「私は水の賢者、河流羅」
「meは闇と魂の賢者、鈴木正夫!!」
「そして六賢者の長、山本金十郎」
「そして六賢者のトリ、田中良晴」
「今こそ我らの宿敵ガノンドロフを封印する時!!」
六賢者たちが光に包まれ、そして……堕神は消滅した。
…………
「終わったんだ……全てが、堕神は永久的に封印された。」
その時、堕神を封印したばかりの大賢者たちが、邪素血巣の周りに集まった。
「邪素血巣…」
大魔導が最初に口を開く。
「邪素血巣…今度こそ本当に、私はもうだめなようだ……強くなったな……
これで安心して…死ね…る…」
こうして大魔導は亡くなった。
「みんな…ありがとう。知らない人も三人+一匹いるけど…
でも…ありがとう」
その時、邪素血巣の元に見知った人影が!!
「キミは…神仏!!」
「邪素血巣!!とってもカッコよかたの❤ワタシ、ムネがキューンとしちゃった☆」
「…………」
「邪素血巣、ワタシ、わかっていたの。邪素血巣は結局私のモノにはならないんだって……
だって邪素血巣は時の勇者。悪と戦う正義のミカタ。私一人のものではないものね……」
「神仏……」
「昔、聞いたの……愛とは相手を考えることだって…
だからワタシはいつまでも心の中だけでアナタを愛し続けるわ…」
「…ありがとう」
衆人環視の中、愛を語り合う邪素血巣と神仏に、サラリーマン達から滝のような拍手が送られる。
「邪素血巣…一つだけワガママを言ってもいい?
アナタが戦いを終えて帰って来たら、ウチら、結婚しよ?ね?」
「…ああ、わかったぜ。……へへっ何だか照れるな」
突然のプロポーズに沸き立つサラリーマン達。
その時、ハゲサラリーマンが驚愕しながらも、上空の方を指さした。
「な、なんなの~!?」
空を蓋う漆黒の闇。そう、それは…!
邪竜甲殻獣 ルシフェル
ルシフェルの目から、超凝縮高温火炎弾が発射され、先刻の戦いの傷で動けない邪素血巣めがけて、飛んでいく!
「危ない、邪素血巣!!」
神仏が走り出し、邪素血巣をかばう。
超高温の弾丸が、神仏の体をえぐり溶かす。
神仏は、思い出していた。オカマバーのマスターとの日々。田中良晴との情事。十年ぶりの、両親との再会、和解。そして、邪素血巣との愛の日々。
そこまで思い出した所で、神仏は力尽き、完全に消滅した。
「神仏ーっ!!」
邪素血巣の絶叫が新宿にこだまする。
それに対し、ルシフェルは大いに洪笑した。
「フフフフフフフフ フフハハフハハハハハハハ ハーハッハッハ!イヒイヒッ!
素晴らしい!素晴らしいぞ!力が湧いてくるようだ!」
六賢者に衝撃が走る。
「どうして?なぜ私達の封印を破れたの?」
「あ、あれは!?」
「どうした、山本?」
「ヤツの右手を見てみろ。まさか…そんなハズは…!」
ルシフェルの右手の中には、「ミキサー」があった。
夜災七ツ道具「ミキサー」。それは、本来は、古代都市、恵古那にて用いられていた拷問器具だった。
犯罪者の手足、頭部を、回転の力で、えぐり切る、その恐怖の道具は、腐土浮浪切殺という異名を持つ。
しかし、後年、ホモナンデス=ソォデスという科学者により、ミキサーの真の使用法が発見される。
だが、その用法の実験中、ミキサーが暴走し、恵古那は滅び、用法が書き記されていたノートは、粉失したと思われていた。
「否!ノートはオレが持っている。我が遠き祖先、五十嵐滅光が、恵古那滅亡の際に、秘かにノートとミキサーを持ち去っていたのだ。
そしてそいつは代々受け継がれ、今!我が手中にある。」
「そんな…伝説とまで言われたミキサーが実在するなんて…」
邪素血巣は恐れを抱いた。こんな強大な相手に、神仏の仇を討つことができるのか?
「そこの六賢者!何故って顔してるんで教えといてやろう。
オレは、隠し持っていた野菜と果物を、このミキサーの回転の力で合成したのだ。
無数のコロイド粒子から発せられる無限のパワー!!貴様等程度では手も足も出まい…!!」
「なにを言うか!!私達六賢者の力は無敵!!皆の者、今一度封印の儀式を!!」
六賢者たちはルシフェルの周りをとり囲む。
「世を創りたまいし三人の女神よ、我の言葉にこたえたまえ!!
すなわち力の女神ディン!!その清き炎をもって悪を……ぐわぁぁ!!」
ルシフェルの腕が勢いよく振り下ろされ、鈴木、山本、田中はペシャンコにつぶされてしまった。
「山本ォォォ!!!」
邪素血巣は山本へと走り出していた。
「邪…素…血…巣………」
「山本!!もういいんだ!!これ以上しゃべるな…」
「邪素血巣……オレは…もうだめだ…
一つだけ…お前に謝らなくてはならないことが…ある…」
「なんだ、山本?!」
「オレは…お前の本当の兄なんだ…今までかくしていて…すまない…」
「本当の兄?!それってどういう…」
そう言いかけた時、山本はすでに亡くなっていた。
「う…うわぁぁぁぁ!!!」
「ククク…笑止!!六賢者といってもこの程度か!!」
「俺は、お前に殺された仲間たちを決して忘れない!!
大魔導先生、神仏、山本、田中……みんな俺の大切な仲間だったんだ!!」
「甘いな邪素血巣……友への思いなどただの無駄なものにすぎぬわ!!」
「違う!!人は皆支え合っているんだ!!だから友への思いほど大切な物は無いんだよ!!」
邪素血巣はマスターソードをかまえ、ルシフェルと対峙する。
「消え去れ、邪素血巣!!」
ルシフェルがミキサーを振り回す。
邪素血巣はそれをマスターソードで防ごうとしたが、ルシフェルのミキサーは邪素血巣のマスターソードをいとも簡巣に弾き飛ばしてしまった。
「しまった!!マスターソードが!!」
マスターソードは弧を描いて飛んでいき、駅のホームへと消えていった。
「しまった!!マスターソードが!!」
「フフフフフ、オレのミキサーに、手も足も剣も出ないってところか」
マスターソードを取りに行こうとする邪素血巣。
しかし、巨大なルシフェルの前では無力だった。
ルシフェルは近くにあった駅ビルをむんずとつかみ、引き抜くと、改札口へと投げ落とし、封鎖した。
「決して逃さん、邪素血巣」
「う、ううう…うああああ…!」
どうしようもない絶望感が邪素血巣を襲う。
「美来鳥父さん、大魔導先生、山本兄さん、田中さん、マイラバー神仏、森霊、サラリーマンの皆さん。
たくさんの人が死んでいった。
もう、誰かが死ぬのを見たくないんだ…俺は、よくやった……」
邪素血巣が戦意を喪失し、瞳を閉じかけた時、正面から、灰塵吹きすさぶ中、人影×10が近づいて来た。
「それは甘えだ、邪素血巣!」
「お、お前らは……誰だ!?」
「人は皆孤独の中で生きている。だから人は光を求め影を嫌う。
光とはすなわち太陽。
夜の闇を太陽が照らし出し、朝の時をもって世界は再び動き出す!!」
「待たせたな、神炎院、我らの前では闇は存在しえない!!」
「「「「「「「「「「我等、最強十傑集!!」」」」」」」」」」