想刻のジャスティス ~Hellfire Alchemist~/第三章 五話

Last-modified: 2020-04-04 (土) 02:10:34

――新宿駅、改札口前
そこで、堕神が待ち構えていた。


「来たな…邪素血巣」
「ああ…来てやったさ」


 だが、邪素血巣は一人ではなかった。


「お…お前は、舞花!」
「うまー!」
「お前は河流羅!」
「や」
「愚王!」
「ヘロー!」
「卑鬼!」
「オッス!」


 まだまだ続く!


「大魔導!」
「地獄からよみーがえった!」
「美来鳥」
「私もよーみがえった!」
「怒王」
「私は生きている」
「そして…森霊!」
「はぁーい!」


 皆が揃った。


「堕神、お前は一つ大きなミスを犯した」
「何…!?」
「お前は一人で来いとは言わなかった。
 だから俺は、多勢でお前をぶちのめす!
 俺がさそったら、皆来てくれた。じゃあ、行くぜ!!」
「フッフッフ……終結している……力・知恵・結城のトライフォースが一つにもどろうとしている……!!」


 その時、邪素血巣、堕神、大魔導のうでに三角形の光が輝いた。


「こ…これは!!」


 大魔導が口を開いた。


(いにしえ)の時、まだ世界が混沌としていた時、力・知恵・勇気の女神が舞い降りたと言う。
 そして三人の女神が天界へと帰る時、地上に伝説の正三角トライフォースを残した。
 それは触れた者の望みを何でもかなえるとされるが、力・知恵・勇気の三つを持たない者が触れた時、
 それは三つに分かれると言う…」
「クク…その通り。そして三つのトライフォースが今、ここにそろった!!」
「まさか!!俺が仲間をつれてくることを初めから読んでいただと!!」
「その通り。トライフォースは私がいただく。
 貴様等には過ぎたオモチャだ。返してもらうぞ!!」


 堕神の黒い波動によって、トライフォースを持たない仲間たちは吹き飛ばされ、
また、大魔導はトライフォースを持っているにもかかわらず、波動によって海のもくずと化した。


「大魔導先生!!どうして……まさかここにきて寿命なのか?!」
「邪素血巣…私は……闇の波動によって奴に近寄ることもできぬ…
 あとは……ま…か…せ……」
「先生!!!」


 邪素血巣の剣に力が宿る!!


「ホウ。少しは時の勇者らしくなってきたようだな!!」


 堕神は手に魔力を集中し、それを球状にして邪素血巣へと飛ばす。


「この感じ……覚えがある。
 …俺はこの光景を一度見ている…?!たしかこれはゲームで……」


 その時、光の玉が邪素血巣をおそう!!


「ぐわぁぁぁ!!」


 魔法弾の攻撃力はハート3つ。邪素血巣は即死した。


…………


セーブしますか はい いいえ
       ↓
ゲームを続けますか はい いいえ
       ↓


…………俺は復活した。そして俺は誓った。
こんなチートはもうしない、と。


「さすがは時の勇者。命中したように見せかけて私の攻撃をやり過ごしたか。
 だが次はどうかな?」


 堕神が再び魔法弾を飛ばす。
時の勇者邪素血巣は剣でそれを打ち返す。
堕神もその魔法弾を打ち返した。魔法弾のラリーが続く。
ここは朝の新宿駅。通勤、通学、選挙の演説で人がごったがえす中、緊張感がはりつめたラリーの中、邪素血巣は勝負をかける。
彼は渾身の力をこめて魔法弾を打ち返した。


「うおおおお!!!」


 魔法弾の速度を変えられ、堕神は完全にタイミングを失った。


(いける…!!)


 そう邪素血巣が思ったその瞬間!!
偶然堕神の前を通りかかったサラリーマンに魔法弾がヒットし、攻撃は防せがれてしまった。


「く…!!俺の渾身の一撃が…!!」
「フ……サラリーマンの動きも読めぬとは…時の勇者が聞いて飽れる…」


 再び放たれた魔法弾はサラリーマンたちの流れに乗り、速度を上げて向かってくる。


「速い!!」


 邪素血巣はそれをかろうじて避けたが、周りのサラリーマンたちで身動きが取りづらい。
さらにサラリーマンの流れは邪素血巣の体力をじわじわと削ってゆく。
次の魔法弾を打ち返すことはできるだろうか…
その時、邪素血巣はひらめいた。
彼はマスターソードによって電車の送電線を切断した。


「とうとうヤキがまわったようだな、時の勇者。終わりだ!!」


 邪素血巣にむけて魔法弾が放たれる。
もはやこれまでかと思われた…その時!!
突如としてサラリーマンの流れが止まった。


「なに…!!この朝の忙しい時間帯の中、サラリーマンの流れが止まるなど…
 な…なぜだ?!」
「残念だったな堕神。
 ここ、新宿にやってくるサラリーマンたちは皆、電車に乗ってやって来ていることを忘れたか?」
「電車…そうか!!
 電車の流れを止めることで、サラリーマンの動きをも操作したというのか…!!」
「電車の流れとサラリーマンの流れ、それらは宇宙が誕生した150億年もの昔から、
 神が創りたまいしビッグバンの光とともに定義された、宇宙の基本法則!!」
「バ…バカなぁぁぁぁ!!」


 邪素血巣が打ち返した魔法弾が堕神に命中!!
堕神に一瞬のスキが生まれた。


美来鳥(ビクトリー)父さん……
 あの時父さんが遺してくれたこの道具を、使う時がきたようだ!!」


 そう、それはあのじめじめとした暑い日のこと……