「八百屋」
語源は八百万からくるとされる。
神の力をさずかった特別な人間にしかゆるされない職業。
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夕方になって、河流羅はとある八百屋にいた。
「めずらしいな。お前がここに来るなんてな」
彼女の前には八百屋の主雷が立っていた。
「野菜が欲しくなってね。」
「お前もようやく野菜の良さがわかったようだな。野菜とはすなわち魔術師の武器。
魔法力とともに術者の力を決める重用な要素の一つだ。」
「今回の戦いでわかったんだよ。野菜が大切だってこと。
私もこれからは野菜を積極的に使っていくことにする。」
「ふふ…で、何の野菜が欲しい?」
雷は野菜を受け入れた妹に優しくほほえんで言った。
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邪素血巣はあせっていた。力の無い自分にだ。
「俺は結局みんなの足でまといなのかよ…!」
だが俺は勉強してもだめだし、野菜も上手く使いこなせない。
昔の俺はもっと強かったはず。いつからこうなってしまったのだ…!
何か見つけないとヤバイ…。
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愚王は教室の中深く考えこんでいた。
今日はヤバかった…あんなのがまたきてしまえば、それこそおわりだ…
そしてポケットに入れたタマネギを手に取る。
俺のじいちゃんがくれたこのタマネギは多分北海道産のものだ。
じいちゃんは十傑集の一人だからこれぐらいもっていてもおかしくない。
タマネギは武器タイプではなくじゅんすいなエネルギータイプだ。
一回使ってしまえばバケモノばりの力が手に入るが、使い切り…
なるべくとっておきたい…
こんなものにたよらないでも俺は勝てるようになんなきゃいけない、先輩として!
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邪素血巣は魔法学校敷地内『迷いの大密林"』の最深部『悟りの湖』に来ていた。
この湖は強い感情に呼応し、自分を見つめなおし、悟りの境地へ近づく機会を与える不思議な場所である。
「オレは――――強くなりたい。」
そう言って邪素血巣は湖へ身を投げ、水という名の光へ消えた。
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邪素血巣が消えてから一週間がたった。
邪素血巣はおき手紙を残していたので皆は特に心配することはなかったが、彼らには新たなる脅威がせまっていた。
その名は壊滅寺怒王。愚王は河流羅と舞花の二人を残し、一人で戦いに出ていってしまった。
「こまったよー。どこにいっちゃったんだろう…」
二人とも愚王を追いたいのはやまやまだが、魔法学校の警備をしなくてはならない。
二人はただ愚王を信じるしかなかった。
そもそも怒王が行動を起こしたのは邪素血巣がいなくなってから2日後のことだった。
奴は関東にある都市で破壊行動を始めた。
それをみかねた封神は闇の特殊部隊「十傑集」を送りこみ、3日3晩の激闘の末、怒王を追いつめるが、
隠し持っていた魔術兵器"タマネギ"を使われ状況は一転。怒王にも逃げ出されてしまった。
そして2日後、タマネギの効力が切れるのをみはからって愚王は怒王と戦うため一人で出ていってしまった。
「一人で行くなんてムチャすぎるよ…」
舞花は突然のできごとにとまどいを隠せない。
「愚王にもそれなりの理由があるんだよ、きっと。今は待つしかないよ」
河流羅もどうして愚王が一人で行ってしまったのか、わからなかった。