想刻のジャスティス ~Hellfire Alchemist~/第四章 三話

Last-modified: 2022-05-29 (日) 06:45:26

 さて、ここは取鳥。鳥取の裏に広がる世界である。
砂漠の王、イマームは、自身の屋敷で静かにニンジンの皮をむいていた。
その手に握られているのは、夜災七つ道具の一つ、ピーラーである。


「人参の皮は水洗いでとれるんだよ」


 イマームの背後から現れたのは……そう、雨恵菜だ。


「フフ…こうやってピーラー(我が武器)の手入れをするのも、砂漠の王の大事な仕事なのだよ。」


 イマームはおごそかなおももちでニンジンの皮をむき続けていた。


「貴様でこのピーラーの切れ味(チカラ)を量るのも悪くない……!!」


 イマームがニンジンを投げつける!!それを雨恵菜はギリギリでかわす。
しかし、その間にイマームは彼女の背後をとる。


「ニンジンに気がいったようだな…死ね!!」


 イマームのピーラーがおそいかかる!!
しかし、それは見事に止められていた。


「貴様…まさか…それは!!」


 雨恵菜の手にあったもの…それは!!同じく夜災七つ道具の一つ。
オタマだった……!!


「初代妖水鏡頭領、御右衛門がつくったとされる魔剣、汚魂魔(オタマ)を元に、卑称呼がつくらせたとされる、伝説の一振り!!
 まさか…貴様が持っていたとはな…」
「そう、これが一夜で恵古那を滅ぼし、販売停止にまで追いこんだ、伝説の魔槍、オタマ!!」
「さすがは妖水鏡といったところか……たしかに我がピーラーごときでは手も足も出ぬ……だがな、」


 そう言うとイマームは懐からもう一つのピーラーを取り出した。


「二つならば…どうかな?」
「二つ……?!どうして……?!」
「その昔、大天使悲滅羅阿(ピイラア)が世に秩序をあたえるため創り出したとされる、ピーラー……。
 それによって人々は救われ、世に平和がおとずれた。
 しかし、人とは貪欲な生き物。一つのピーラーが二つに増えれば、どれだけ幸福になれるか…試してみたくなったのだ。
 しかし、その野望は消えることとなる……、神の力に近付こうとする行為は、神の怒りをかったのだ!!
 しかし…野望はついえたが、二つのピーラーは残り続けた。
 そして我が手中にその二つはある……!!」
「二つのピーラー……けど、オタマにはかなわないよ!!」


 雨恵菜はオタマを持って飛びかかった!!
キィン!!イマームは二つのピーラーで華麗にオタマを受け止めた!!
と同時、イマームは雨恵菜の真上へと飛んだ。


「!!」
「喰らえ!!二つのピーラーが織り成す狂気!!
 夢幻創造・悲滅羅阿五百七十八の舞!!」


 二つのピーラーによって目にも止まらぬ速度で切りかかるイマーム!!
その様は戦いの神華輪無危生(カワムキキ)を彷㣢とさせた。
だが、雨恵菜の姿はすでになかった。


「空間跳躍!!」


 と、その時、イマームの真横から、オタマを持った雨恵菜が突進してくる。


「ぬう!!ピーラーの双壁(ピーラーガード)!!」


 ピーラーによって、オタマをブロックする。そしてすぐさま反撃!!


「フハハ!!ピーラー切り(ジェノサイドカッター)!!」


 それを雨恵菜はかわす。


(むむ…ピーラーの手数の多さに押されているね…)


 問題なのはイマームの手数。ピーラーが二つになったことで攻撃回数が増え、また、攻撃と防御を同時に行うこともできる。
イマームの戦術は二つのピーラーをたくみに扱い、あまたの国を滅ぼしたことで有名な無敵の戦術。
通称"PPP"、ピーラー・ピーラー・ファントム(PPP)!!
二つのピーラーは互いに力を増し合い、そこから出される技はまるで幻想のようであることから名付けられた、悪魔のような戦術!!


「クク…四千八百年の歴史を持つ、この"PPP"にスキなどあらぬ…」


 イマームは二つのピーラーを構えながら言う。
二つのピーラーの圧倒的な威圧感……