Blog/A更新が行われた近鉄1620系VG23

Last-modified: 2023-07-25 (火) 19:50:35

2023年7月25日から近鉄1620系VG23が高安検修センターでの車両リニューアル工事1回目(以下、以前の呼称である"A更新"を使用)を終えて営業運転を開始しました。
早速見に行って来ましたので内外装の気になった変更点を中心に紹介します。(写真は特記以外2023年7月25日撮影)

なお、VG23が「― お客さまの安全・安心に向けて ― 車内防犯カメラを全車に設置します(PDF)」で発表された車内防犯カメラ新設、非常通話装置増設、先頭転落防止ほろ新設の最初の施工編成となりました。

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A更新前のVG23(2022年7月23日撮影)

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A更新後のVG23

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同系VG25(左)との比較

アルミ製車体の車両としては9200系サ9310形のA更新(現在サ9314は未施工)以来、編成単位では3200系のA更新以来の本格的な更新工事施工となりました。

VG23は1995年製の三菱GTO-VVVFインバータ制御車ですが、今回制御装置の換装は行われず走行音も従前と変わらないものとなっています。

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外装の変更点としては前照灯と標識灯が上下で位置入れ替えされたほか、モ1623、ク1723に新設された先頭転落防止ほろが目立っています。
2024年秋デビュー予定の新型車両(PDF)のイメージ画像でも前照灯が正面窓下に配置されており、新型車両と灯具類の位置を合わせたものと思われます。

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前照灯は従来3灯式の標識灯があった位置にLED式とみられるものが設置され、ロービーム時は前面貫通扉寄りのみが点灯するようです。
標識灯だった位置を前照灯に改造した事例は過去にもあり、2020年の20000系PL01のA更新が該当します。

また、小型の看板掛けは先頭転落防止ほろ新設に伴う補強部材に設置位置が変更されました。

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標識灯は従来前照灯があった位置に黄色と後部標識灯として使用する赤色を切り替えられるLED式とみられるタイプが設置されました。
一見すると2018年に1031系VL34で初採用され、その後界磁チョッパ制御車の一部に波及したLED式前照灯にも似ていますが、点灯している時や間近で見た時は異なるものであることがわかるかと思います。

なお前面、側面の行先表示器は2020年に1253系VC60で初採用され、その後同系VC53、VC57にも採用されたタイプのフルカラーLED式に交換されました。

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先頭転落防止ほろにも近鉄マルーンレッドの塗装が見られ、車体カラーリング自体も従来と変更はありません。

塗装については、昨年から今年にかけて五位堂検修車庫で既存VVVF車を使用した新型車両のイメージ画像とほぼ同じカラーリングの試験塗装(ラッピング?)が何度か目撃されており、新型車両のデビュー前後で既存VVVF車もイメージを合わせるための塗装変更を行う可能性も考えられるため外装も記録価値がありそうです。

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車椅子・ベビーカーマークは従来の白地ではなく青地に白抜きと色が反転した形となりました。
これも推測ですが、新型車両はイメージ画像によると側面が白系ベースとなっており、そこに貼り付ける場合の視認性は青地の方が良さそうなので新型車両に合わせた塗装変更を見据えたものである可能性もありそうです。

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客用扉、乗務員室扉上部には近年の更新車で見られる横一直線タイプの水切りが新設されたほか、乗務員室扉の窓にはこれまで採用されていた文字のみではなく、ピクトグラムと文字を併記した新タイプのステッカーが貼り付けられており、字体も変更されているようです。

ここからは内装に移ります。

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内装は主に木目調の化粧板に張り替えられており、印象はL/Cカーか否かを除けば新型車両のイメージ画像とよく似ています。

木目調の化粧板については、初めてサンドウェーブ柄の化粧板が採用された1983年の1200系(現1201系)RC07の新造時より前に新造された一般車両にも採用されていたようで、色味などは違うにしても2000年代初頭にこれらの車両の更新により北勢線(現三岐鉄道北勢線)車両を除いて消滅して以来久々に近鉄の一般車両で見られることになりました。

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妻面化粧板は木目調ではなく、このような柄に張り替えられています。
また、ク1723の乗務員室との仕切り右上には謎の張り出しが設けられました。

貫通扉の取手も上下方向に長いものに交換されており、従来の「ガチャン」と閉まる扉ではなくなりました。

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天井の化粧板も白系のものに張り替えられました。

また、従来の逆三角形の蛍光灯カバーは廃止され、LED式と思われる吊り下げ式の間接照明に交換されています。

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荷棚は従来からの金網構成のままですが、各車に1カ所荷棚のスペースを大きく占領する形で謎の機器が新設されていました。

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座席はモケット交換が行われました。
一般座席は(L/Cシートか否かは別として)新型車両のイメージ画像とほぼ同じ花柄ですが、実際に見てみると思ったより赤っぽい感じでした。

また、床敷物の柄も新型車両のイメージ画像とほぼ同じです。

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優先座席は最近のトレンドとなっているオレンジ系を引き継ぎつつ、こちらも花柄が入れられました。
床面の優先座席表示ステッカーも従来とは異なるものになりました。

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袖仕切りも従来の肘掛けを兼ねた形状のものから新型車両のイメージ画像とほぼ同じ半円形のガラス張りのものに一新され、スタンションポールも一体となっています。

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客用扉横の手すりは上下が曲げ加工された滑りにくい新タイプに交換されています。

また、全ての客用扉の左右に非常用設備のごあんないが貼られました。

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客用扉の戸当たりゴムはいわゆる黒内装に更新された車両で採用された黒いゴムに交換されています。
「引き込まれにご注意」と書かれたテープも近年の更新車と同じものが貼られました。

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こちらも引き込まれ対策として窓に貼られるステッカーですが、従来の矢印と「ゆびにごちゅうい」の文字が入ったプリントタイプでも近年の更新車で採用されていた戸袋の方向を指差した絵と文字が入ったステッカータイプでもなく、手が引き込まれた状態が描かれた新しいステッカータイプとなりました。
これは見るからに痛そうですね(汗)

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戸閉装置のカバーは全ての場所で大型化され、将来的に液晶表示装置の画面になりそうな横長のくぼみがあるものが千鳥配置として設置されています。
これとは画面のサイズなどが異なるものの、近鉄の一般車両では改造により2018年頃から液晶表示装置が稼働している編成もおり、VG23ではこのような準備工事に留められた理由は不明です。

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液晶表示装置の準備工事がされていない場所では広告スペースと新設の車内防犯カメラがあります。

ちなみに先述の改造により液晶表示装置が取り付けられた編成では全ての客用扉で開扉中に盲導鈴が鳴動し、扉開閉予告ランプが点灯しますがVG23ではどちらも機能していませんでした。

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戸閉めの様子を動画で撮影しました。
ドアチャイムも現時点では鳴動しませんでした。

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側窓のブラインドは従来の青系の格子模様から白系に変更されました。
窓ガラス自体が緑がかったUVカット仕様(ガラスにUVカットを示す小さなシールあり)に交換されているもののブラインドは廃止されませんでした。
車内側に優先座席表示シール(プリント?)が貼られているのは最近までの更新車と同じですが、手で触れる頻度が高い下部の材質が変えられたものにならなかった点は異なります。

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つり革は丸形ではありますが、下部の内側が直線になった新タイプのものに交換され、シリーズ21の車両のように位置も3段階に分けられました。
近年の更新車と同じく出入口付近では枕木方向にも新設されています。

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優先座席部分のつり革はオレンジ色で低めの位置で統一されています。
近年この部分のみオレンジ色の三角形タイプに交換されていましたが、今回のA更新で他の部分と同じ丸形となりました。

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車椅子・ベビーカースペースと消火器は1両あたり1カ所設置となり、両先頭車の車椅子・ベビーカースペースは乗務員室直後に、消火器は乗務員室内に従来通り設置されていますが、中間車のモ1673とサ1773にも新設されており、位置はいずれも2位寄り非公式側となっています。
下部のヒーターは従来車より小型化されています。

消火器は近年の更新車とは異なり当該部分の妻面窓は埋めずに妻面窓の下部に張り出しを設けて新設されました。

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乗務員室内の化粧板もグレー系に張り替えられましたが、運転台は従来と変わらずブラウン系でまとめられています。

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長くなってしまいましたが今回はここまでです。
今回のVG23が未だA更新を受けていない1980年代製の2両編成の初期VVVF車より先にA更新が行われた理由は不明ですが、ここ最近続々と2両編成のVVVF車が高安に入場しているというTwitter情報もあり初期VVVF車にもA更新は施工されるものと思われます。
今後も居住性が向上した一般車両が増えるのが楽しみですね。